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天才調合師の魔法薬には事情がある!  作者: 幻想桃瑠
★・・・・・・・★*☆*★【第三章】★*☆*★・・・・・・・★
31/102

第三話 クルーエル大臣の魔法薬2

 芽々は、ドロップ宮殿の一番東の別棟に来ていた。飾り気がなく年季の入ったレトロな造りで、静寂の中を窓から入ってきた光が暖かに照らし出している。


 その中を歩いていると、魔法薬の保管庫に入って行く十歳ぐらいの後ろ姿を見つけた。彼は荷台を押しているようだ。ガラガラとローラーの転がる音がここまで届いた。すぐさま、芽々は駆け寄った。


「アリエン!」


 芽々は、保管庫の入り口から声をかけた。

 すると、薄暗い保管庫の中でアリエンが怒った。


「アリエン『さん』だ! 呼び捨てなんて、まじありえん!」


 ああっ、しまった!


「アリエンさん!」


 慌てて芽々は言い直した。


「……なんだよ?」


 保管庫の照明をアリエンが点けた。

 どうやらアリエンは機嫌を直したらしい。何も言わないので、安心して保管庫の中に入った。芽々は、材料の入った紙袋を開いてアリエンに見せた。


「この、魔法薬が何か分かるかな? クルーエル大臣からクリストファー様に献上する調合を頼まれたんだけど……」


 アリエンは、クルーエル大臣の名前を聞いて露骨に顔をしかめた。


「クルーエル大臣に? まじ、ありえん! 超アヤシイな!」


 アリエンは、国王陛下やドロティア王妃、さらにはクリストファー王子を敬愛している。彼らを殺めようとしているクルーエル大臣を敵視することはごく自然な流れだろう。


「これ、調合レシピに書いてある材料なんだけど。ホンモノかな?」


 クリストファー王子の名前を出したので、絶対にアリエンは協力してくれると踏んでいた。思った通り、アリエンは真剣な顔つきになった。紙袋の中からアリエンがビンを取り出した。


「『虹の粉末』と『七色の光蔓』……ふむ……」


 魔法薬の中身のにおいを嗅いだり、ビンを振ったり。更には、舐めて味を確かめていた。


「確かに、『虹の粉末』と『七色の光蔓』だけど?」

「あ、合ってるの……? ちなみに、これってどんな魔法薬になるの?」

「これを調合すると『虹色の長命薬』っていう『滋養強壮』の魔法薬になる。特に問題はないと思うよ」


 アリエンがそう言うなら本当なんだろうけれど……。

 嵐の静けさというか……。何だろう? 胸騒ぎするようなこの感じは……!


「クルーエル大臣は絶対何か企んでいると思うんだけどな!」


 アリエンも、確かに一理あると頷いた。


「……もしかして!」


 アリエンは、戸棚から『クリストファー王子の魔法薬使用リスト』を持ってきた。

 パラパラとめくって、クリストファー王子が現在使用している魔法薬を指で追っている。芽々も横からそれを覗き込んだ。十種類ぐらいの魔法薬をクリストファー王子は服用しているようだ。


 アリエンは、その薬草をついに見つけて指でさし示した。


「やっぱり! クリストファー様は『オオガマの薬草』を煎じたものを常用されているみたいだ!」


 芽々は眉をひそめた。


「『オオガマの薬草』……? それを飲んでいたら、何かまずいの?」

「ああ、『虹の粉末』と『オオガマの薬草』の飲み合わせはまずい! 薬どころか猛毒になってしまう! くそっ、まじありえん!」

「まじで!?」


 確かに、薬の飲み合わせが悪いって良く聞くけど……!

 クルーエル大臣が何か企んでいるとは思っていたけど、猛毒って……!

 絶対に烏羽玉先生の小説の展開ではないと芽々は思った。烏羽玉先生の小説を書きなおしたのは、またあの謎の女の仕業だろうか。


「……クルーエル大臣に絶対にこれを調合して献上するように言われているんだけどな!」

「それをクリストファー様に献上したら大変だ! 終いに芽々は処刑されてしまうんじゃないか!」


 主治医が見つけて、すぐに芽々が処刑になるか。最悪の場合、クリストファー王子が飲んで、芽々が処刑になるか。

 ど、どっちも同じやないか~!


「そ、そんな~!? じゃあ、どうすればいいの!?」


 頭を抱えている芽々に、神妙にアリエンが頷いた。


「一つ、打開策がある!」


 まじで~! アリエンって超スゴイ……! 私より若いのに頼りになる~!


「今、心の中で僕の嫌いなことを思っただろ!」


 うっ、鋭い!


「き、気のせいだって~!」

「じゃあ、説明するからな!」

「うん、お願いします!」


 アリエンは、芽々に打開策を懇切丁寧に教えてくれた。


 別れ際、アリエンにこの事をシッカリ口止めしておいた。特に、エルヴィンの耳には入れないようにと。アリエンは怪訝そうな顔になった。けれども、それ以上何も追及されることはなかった。


 そうして、すっかり安心した芽々は、エルヴィンのラボラトリーに舞い戻ったのだった。

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