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天才調合師の魔法薬には事情がある!  作者: 幻想桃瑠
★・・・・・・・★*☆*★【第一章】★*☆*★・・・・・・・★
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第二話 森の中にある建物……?

 森の中で突っ立っていても日が暮れると危ない。どこからか涼しい風が吹いてきた。今は冬ではないようだが、夜になると更に気温が下がりそうだ。仕方がないので諦めて適当に歩き始める。


 数分間歩き続けると、運が良いことに、せせらぎが聞こえてきて川岸に出た。上流にあるような細い川だったが、流れる水は透き通っていた。喉が干からびそうだったので、川の水を掬って口に運んだ。甘くておいしい水だったからか、夢中で飲みすぎて少々むせる。

 芽々は、口元をぬぐって立ち上がった。


「くっそー、あの医者め……!」


 苦々しく呟くがどうにもならない。あの医者はどういうつもりで、自分をこんな森の中に放置しやがったんだか。モンスターではなくても、クマやワニが出て来ても危険だ。


「とにかくここから離れないと……」


 芽々はひたすら川沿いを下って行った。丸い石がごろごろと転がっている平坦ではない道だったが、不思議なことに疲れる気配がない。


「今日の私ってスゴイ!」


 ひたすら歩くこと数十分。今度は芽々のお腹が切ない声で鳴いた。待合室で朝から待たされていたから、昼ご飯も食べていない。


 疲労感がないので頑張ると片意地張っても、流石に森の中で食糧調達なんてできそうにない。着の身着のままで、しかも道具も図鑑もない。どうやって野草やキノコを見分けられるというのか。縄文人のように火だっておこせない。いや、自分はなんで縄文人でもないのに、火など原始的におこさないといけないのか。


 ああっ! どうすればいいの!


 ついに芽々は音を上げて、異世界の空を睨んだ。青い空がぼやける。

 異世界なんてクソくらえだ。自分が神様なら、とっくの昔にこのどうしょうもない異世界をブラックホールというゴミ箱に突っ込んで消滅させただろう。


「あれ……?」


 その時、異質なものが見えた。コンクリートのような、森にはふさわしくない建物だ。

 お椀を逆さまにしたような建物だった。一戸建ての家のような大きさだ。

 でも、どうしてこんな辺鄙な所にひっそりと建っているんだろう。もしかして、人が住んでいるのだろうか。


 芽々は、引き寄せられるように、その建物に近付いて行った。

 心臓が警戒音をたてる。けれど、芽々は玄関のドアノブを掴んで回した。

 鍵が開いている……!?


「こ、こんにちは~……」


 どことなく、薬臭い。棚があり、薬のビンが無数に並んでいる。

 カーテンが閉められた薄暗い部屋だ。誰も住んでいないのだろうか。


「なんか寒い……」


 芽々は両腕をさすった。

 その時の芽々は、後ろから近づく足音に気づいていなかった。


 鈍い音がした。


「ッッッ!?」


 あっという間に芽々は、何者かに昏倒させられてしまったのだった。

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