第十六話 烏羽玉先生と謎の女の閑話休題
芽々たちが社長室から出て行く姿を確認している、上半身だけのホログラムがあった。
「ふう、芽々さんたちはうまく行ったようですね……!」
現実の世界で心療内科医をしている烏羽玉である。
烏羽玉は、異世界の創造主でもあり、芽々を異世界に送り込んだ張本人でもあるのだ。
ホッと安堵しながら、烏羽玉は異世界との通信を切ろうとした。
「やっぱり烏羽玉先生ですか」
しかし、烏羽玉の目の前にホログラムの女が現れた。映りが悪くて、人相がはっきりしない。
「貴方ですか! 芽々さんを厄介ごとに巻き込んだのは!」
自分の妻を名乗っていた人物ではないのか。烏羽玉は警戒した。
女はフフンと嗤った。とても反省しているようには見えない。
「そうよ。芽々さんを、貴方が作った異世界で消滅させてやろうと思っていたのだけど……」
「そんなこと、私がさせません!」
烏羽玉はカッとなって怒鳴った。
「……烏羽玉先生。私を覚えているかしら?」
「貴方のような、ふざけた人は私の知り合いにはいませんが」
烏羽玉は自分を棚に上げて、スッパリと言い切った。女はクスクスと笑う。
「そう? 残念ね。私の事を思い出してくれるまで、私は芽々さんを狙い続けるわ」
烏羽玉は、歯噛みした。この女は一体何者なのか。どうして芽々を狙うのか。
「じゃあね、烏羽玉先生」
問いただす前に、女は通信を切ってしまった。