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天才調合師の魔法薬には事情がある!  作者: 幻想桃瑠
★・・・・・・・★*☆*★【第二章】★*☆*★・・・・・・・★
25/102

第十四話 ノーア社長の正体

 ノーア社長との約束の期日までまだ日があるが、運送屋の『荷馬車屋』の本社まで芽々とエルヴィンは訪れていた。


「行くぞ!」

「おう!」


 ドアを開けて、芽々は受付に片肘を付いた。


「エルヴィンラボラトリーの芽々ですっ! ノーア社長にお取次ぎ願おうかっ!」


 乗り込んできた感丸出しの芽々に動じることもなく、受付嬢は笑顔で席を立った。暫くすると、強面の縦じまのスーツを着たお兄さんを受付嬢が連れてきた。


「こちらへどうぞ」


 お兄さんは笑顔で、芽々たちを案内する。芽々とエルヴィンは一緒にお兄さんにくっついて行った。


 レトロな社長室という感じを受けた。縦じまのスーツを着た二人のお兄さんが、扉の前に応援団長のように突っ立っている。

 芽々の額から冷や汗が滴った。


「ノーア社長、失礼します。エルヴィンラボラトリーの芽々さんがいらっしゃいました」

「こちらにどうぞ」


 ノーア社長は、高そうな黒い皮のソファに座るように愛想よく勧めてきた。

 一見いい人に見えるノーア社長だが、油断ならない人物だ。

 芽々は警戒しながら、エルヴィンたちと一緒にソファに着席した。


「おや、こちらは?」

「芽々の師匠のエルヴィンです」


 芽々の隣で、エルヴィンがお辞儀した。


「お噂のお師匠様ですか! これは面白い。さて今日は、違約金を支払いにおいでたのかな?」

「いえ、魔法薬の納品に参りましたが、何か問題がございますか?」


 エルヴィンがそう言うと、ノーア社長は大喜びした。


「問題など全くない! さあ、早く魔法薬をこちらへ!」


 ノーア社長は手を差し出したが、魔法薬が入った袋をエルヴィンはサッと避けた。


「ノーア社長は言い値で買い取ると仰いましたよね?」

「ああ! 男に二言はない!」


 ノーア社長は、もどかしそうに答えた。


 芽々は、頷いて請求書を出した。


「それでは、こちらをお支払いください」


 ノーア社長は、請求書に書かれていた丸を数えてから声を上げた。


「一億ティア!?」

「魔法薬を作るのに苦労したんですから、びた一文まけませんからね!」


 キッパリと言い切った芽々を前に、ノーア社長はため息を吐いてソファにもたれた。


「それはそれは……」

「それから、はっきりさせておきたいことがあります!」

「なにかね?」


 芽々は、頷いた。


「この魔法薬は『特殊な毒』の『解毒剤』だと気付きましたけど、違いますか?」

「……それが何か?」


 ノーア社長がしらっと答えた。

 やっぱり、思った通りだ!


 ノーア社長が、魔法薬のレシピは分かるけれど、病名が分からないというのは、その千人が毒にやられていたことを隠していたからだ。何故、隠すのか。


「変ですよね? どうして、『千人分』の『高価な解毒剤』が必要になったのか? 毒を浴びるなんて、早々ない事です。大それたことでもしなければ――」


 ノーア社長が面白そうに、クッと笑った。


「それは、つまり……?」

「つまり、貴方『たち』が、ヤバい事を仕出かしたからです!」


 静まり返った社長室の中で、芽々はおどけて見せた。


「……なーんちゃって!」

「ご名答!」

「いやいや! ご名答って嘘でしょ? ノリツッコミが上手いんだからぁ!」

「いや本当だ! 大正解!」

「ハァ!? あ、当たってたの~!? その千人って『守護者ガーディアン』が任務でそうなったんじゃないの~!?」

「ああ」


 社長室が再び静まりかえった。

 ギャグのつもりで言ったのに、まさか当たっていたとは。

 芽々の額から冷や汗がしたたり落ちる。


「芽々……!」


 エルヴィンが、やらかした芽々を目で咎めている。


「ご、ゴメン!」

「まあ、良いでしょう。バレたのは仕方ありません」


 ノーア社長の慈悲深い言葉に芽々はホッと脱力した。


「でも、貴方たちの命はないかな?」

「っ!?」


 ノーア社長の言葉に、芽々は戦慄する。


「さあ、君たちは用済みだ。死んでもらおうか?」


 ノーア社長は笑顔で言った。


 気がつくと、扉の前に居た縦じまスーツの二人は、芽々とエルヴィンに銃口を突き付けていた。思わず、芽々たちは両手を上げる。


 ど、どうするんだ!? もしかして、これって、バッドエンドなの!?

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