第十三話 魔法薬を貰ってきた理由
エルヴィンは、芽々の答えを聞いて満足そうに頷いた。
「そういうことだな。でも、俺が『この魔法薬を貰ってきた理由』が分かってないみたいだが」
うぐっ、良いところまで行ったと思ったんだけどなぁ……。
「お手上げです……!」
「ふふ~ん?」
エルヴィンは勝ち誇ったようにニヤニヤしている。
「クッ……! 教え腐ってください!」
ひとりで分かってるなんてズルいぞ!
「フッ、ここに引っ越ししてきたときに、魔法機を設置したよな?」
やっと、エルヴィンは教える気になったらしい。
これは、回答の話の流れだろう。芽々は頷いた。
「うん、設置するのに三時間もかかったから覚えてるよ」
「実は、この魔法機は俺のお手製なんだ」
「えっ!? お手製……!?」
このエルヴィン師匠、調合師だけあって、機械製作もできるらしい。
芽々は、感心するどころか舌を巻いた。
「これをこうすると……」
エルヴィンは、『猛毒キノコ解毒剤』と『猛毒ペイルアンテッド解毒剤』に『大麻痺毒の中和剤』を、魔法機の中に入れた。そして蓋をして両手を機械の手形に重ねる。
「ま~ほ~じゅつ~うぅ~ハァ!」
エルヴィンは、脱力するような呪文を唱えた。
芽々は知っていた。この脱力する呪文は特に必要ない事を……!
この呪文は、エルヴィンの趣味なのか……! 趣味なのか……!
ともかく伸縮を繰り返していた魔法機は、縦横に伸縮してポンと音を立てた。
「できたぞ~」
エルヴィンは、魔法薬をサラサラと、ビンに移した。そして、違う種類の魔法薬を、また違うビンに移し、それを六種類繰り返した。
全部違う種類の魔法薬……? それも六種類? いや違う!
「これって……! もしかして、『猛毒キノコ解毒剤』と『猛毒ペイルアンテッド解毒剤』と『大麻痺毒の中和剤』を作った『材料』!?」
「ああ、成分を抽出したんだ」
「もしかして、『金ルコンの根』と『虹色の光石』の材料を抽出したっていうこと!?」
「ああ、そうだ」
魔法薬を貰ってきたのは、これが目的だったのか! クルーエル大臣に嫌がらせされても、エルヴィンの頭脳があれば対抗できる!?
「『金ルコンの根』と『虹色の光石』の成分はこれとこれだな」
しかも、エルヴィンは材料を見分ける目も持っている!
す、すごすぎる!
「『金ルコンの根、一〇〇〇グラ』と『虹色の光石、五〇〇〇グラ』か……」
エルヴィンが、量りに材料を乗せている。
「……丁度あるみたいだな。俺のもくろみ通り」
「うん……! ありがとう……!」
エルヴィンがいて良かった! エルヴィンがこんなに頼りになる人だったなんて!
流石、私の師匠だ……!
「後は調合して、ノーア社長に納品して、値段をふっかけるだけだね!」
「慎重にやらないとな。今度は、俺もついて行くからな」
「うん、解ってる!」
今度はエルヴィンが付いているから安心だ。不安材料が消えて、胸が軽くなるような心地だ。
「……でね、エルヴィン」
「ん? なんだ?」
「私……。国王陛下とクリストファー王子の病を治す特効薬の作り方が分かったかもしれない!」
「フッ、芽々もか。実は俺もだ」