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天才調合師の魔法薬には事情がある!  作者: 幻想桃瑠
★・・・・・・・★*☆*★【第二章】★*☆*★・・・・・・・★
13/102

第二話 王都ファンティアへのお引越し2

 わ~んっ! もう何なのっ!?

 お前、ふざけてんのか! と、怒鳴りたい!

 でも、何故か立場が逆転している!

 これじゃあ、浮気現場を見つかった恋人じゃないか……!


 しかし、エルヴィンはそれさながらの台詞を吐いた。


「お前、何か隠しているな……?」

「え~っ? べ、別に~……」


 面白いほどに、目が泳ぐ泳ぐ。

 芽々が嘘をついているのがもろバレだった。

 嘆息してエルヴィンは続けた。


「俺の完治した『瘴気中毒症候群』は難病なんだ。だから、芽々が治療薬を手に入れたことは普通じゃない。しかも、宮殿の門外不出の調合レシピまで。お前は何か俺の為に危険を冒しただろ?」


 おおっ、見事な推理だ。反論もできやしない。


「……バレてたの?」

「ああ。烏羽玉とか言う野郎に訊いた」


 チッ! 烏羽玉先生か!


 文句を言いたかったが、肝心な時に烏羽玉先生は姿を現さない。

 きっと今頃、この状況をどこかで眺めてにんまりしているかもしれない。芽々は、烏羽玉が得意になっている顔を想像してうっかりムカついた。


 あのイケメン心療内科医め。余計なことをし腐って!


 でも、ムカついてばかりもいられない。黒いオーラを出して睨んでいるエルヴィンを何とかしなくちゃいけない。


 あ~、烏羽玉先生が教えたのなら、毒薬の事も告白しなくちゃならないかもな~。

 きっと、しこたま怒られるに決まっているよなぁ~。


「じっ、実はですね……!」


 エルヴィンの怒声を覚悟した芽々は、ぽつりぽつりと白状し始めた。


「烏羽玉先生にですね……ドロップ宮殿に助けを求めろと言われたからですね……!」


 エルヴィンが目を見開いた。


「ドロップ宮殿に……!?」

「う、うん!」


 芽々は苦笑いした。

 とんでもない判断だと芽々も思った。絶対に一人では思いつかない判断だ。


 でも、エルヴィンのこの反応……。

 芽々は目をぱちくりさせた。


 もしかすると、エルヴィンは私がドロップ宮殿に行ったことは知らなかったのか? ということは、エルヴィンは王都行きの事はもちろんの事、毒薬の事も知らない……?


「……」


 芽々は、心の内でニタリと笑った。

 よっしゃあ! 風向きが変わってきたぞ~!


「実はね! 捕まりそうになったけど、クルーエル大臣が思ったよりいい人で、交換条件を呑むのを理由に助けてくれたの。エルヴィンに王都ファンティアでラボラトリーを開いて都民を病気から救ってほしいんだって!」


「えっ? 王都ファンティアで……?」

「うん。だから、勝手に交換条件を呑んじゃった……!」

「……他に条件は?」

「ないよ!」


 芽々の目が泳ぐ泳ぐ。嘘が殆ど顔に出てしまって、無残な有様だ。

 エルヴィンは白けた目をして芽々を睨んでいる。


 もうダメだと芽々は半分諦めていた。

 しかし、エルヴィンは了承したようだ。


「……分かった。じゃあ、今から王都ファンティアに引っ越しするか」


 エルヴィンは、フリフリのピンクのエプロンを脱ぎながら、そう言った。


 芽々は、目をぱちくりさせた。

 アレ? もしかして私は助かったの……?

 いつの間にか身体も動けるようになっていた。

 芽々は、ホッと安堵して身を起こす。


「私も荷造り手伝うよ!」

「ああ、あの箱に薬瓶を詰めてくれ。緩衝材を巻くのを忘れるな?」

「はーい」


 気を取り直した芽々は、意気揚々とプチプチを巻いて木箱の中に魔法薬の瓶を仕舞っていく。

 そんな芽々にエルヴィンが半眼を向けていた。どこか、黙考しているような視線だった。じっくり観察されて身体に穴が開きそうだ。耐えられなくなってついに芽々は振り向いた。


「な、何か用?」

「別に? 芽々が美人だな~と思っただけだ」

「クッ……! 絶対に嘘だろ!」


 勿論、何を考えてエルヴィンが渋い顔をしているのかも、暢気を絵に描いたような芽々には想像も付かないことだ。

 その代りにエルヴィンの褒め言葉をうっかりまともに受け取ってニヤけてしまう芽々なのだった。

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