収集家
私はいつも思う。『眼』は語るのだ。眼というものはただそれだけで、その人のなにもかもを写し出してくれるものなのだと。
そんな眼を私は愛して止まない。人間の最も美しい部位は眼だ。暖かな目、冷めた目、希望を持った目、絶望に打ちひしがれる目、どんな目だって、開いたらそこには表情があるのだ。そして究極とは閉じた瞼の裏にある。それはとてもとても想像を掻き立てる。この薄い肉壁の下ではどんな表情をしているのだろう?彼は、彼女は、一体なにを写しているのだろうか?それを想像するだけでたまらない。その時間こそが究極。至高の妄想。
故に、私は眼を集める。今までもたくさん集めてきた。海外を飛び回って、治安の悪い国の、特に治安の悪い場所で、何人も何人も殺した。初めて声をかけた時の戸惑いの目、仲良くなった時の楽しそうな目、誘ったときのうっとりとした目、人気の無い所へ来た時の困惑と興奮の入り混じった目、そして、これから殺されると分かった時の、あの絶望した目。ああ、なんて素晴らしいんだ。身体なんかに興味はない。私が欲しいのは眼。表情豊かな私の愛しい眼だけだ。行為を終えた後、そこに残るのは鼻から上の無い、ただの汚い肉袋。そんな物は腐って土に帰ればよい。
私のコレクションルームには、ホルマリン漬けにしたいくつもの眼が置いてある。見開いた眼、眠ったままの眼、戸惑いの眼、楽しそうな眼、うっとりとした眼、困惑と興奮の入り混じった眼、絶望した眼。もっともっとたくさんある。どれもこれもみな美しい。私の大切なコレクションだ。