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9、水無月6月 その1 予告

「いいかー。そこにも書いてあるとおり、来週は定期テストだぞー」

衣替えも終わり、暑さと涼しさが混じった未だ梅雨明けしていない6月の初日。朝のホームルームで先生から告げられた言葉に教室中でざわめきがおきる。テスト、それは高校生が誰しも通る道であり、みんながおそらく1番嫌いなものである。

「いいか、お前らはG組だぞ。先生方も心してかかってくるからなー」

そう言って先生は教室を出て行った。そのあとにはがやがやと騒ぐ教室。私はふと、テスト範囲の書かれているプリントを見た。範囲を見てよしこれならと思ったところで…。

「らいらちゃーん…」

すごく悲しそうな声をしながら、恋が抱きついてきた。今ではこれもおなじみの慣れてきたものになっている。

「テスト範囲広いよー」

そのまま私の後ろで愚痴をこぼす。確かにテスト範囲はどれも4月に配布された問題集の約7割ほどだが、普通にやっていればそろそろ終わりごろだと思われる。

「…もしかして、あの問題集やってないの?」

「うん、やってないよ?」

さもありなんと言わんばかりにさらりと言ってしまう恋。そうしたら広く感じるのも無理はない。

「あーいや、恋の場合は数学だけまったく手ぇつけとらんだけやろ」

隣でそういう柚樹は、日本史の問題集を広げていた。ところどころ赤くチェックされている。

「その様子だと、柚樹は終わりそうなんだねー」

「そう言うらいらだって、その様子だとそろそろ終わっててもおかしくない頃やろ」

そう言って今私の手元にあった、日本史の問題集を覗く。私の問題集はあと数ページで終わり。テスト前にもう1回見直そうと、早めに終わらせようとしてたのだ。

「うーん、もう少しってところかなー」

「さすがやなぁ。日本史でわからんとこは都に聞いたらええで」

その言葉に都が振り向く。そして柚樹に対し嫌そうな顔をした。

「柚樹お前、いつまで俺を頼る気だよ…」

「そん代わり数学教えてやっとるんはどこのどいつや?」

そう言って笑いあう二人。いつものメンバーは本当に仲がいい。

「ねー柚樹―。数学教えてー」

そう言って恋が私にもたれかかってくる。

「お前は専属家庭教師並みのみっさんがいるだろ…」

そう言ってみっさんの方を見る。みっさんは素知らぬ顔で見て見ぬふり。

「やだよー。みっさん頭良すぎてわかんないんだもん」

そう言い合っていると前の方から里羅と夜宵も来る。

「柚樹ー私も数学教えてー」

と里羅は明るく、

「都、日本史ヘルプ」

夜宵は眠たげに。そうしていると結局みんな集まってしまう。松崎姉妹もついでと言わんばかりに来て、ヘルプを頼む。ついに1週間放課後勉強会ということになったのだった。


「で、恋はどこがわからんの?」

柚樹が苛立ったように聞く。ほかのみんなも問題集を開いて確認している。みんなのを覗いてみると進度はまちまちだった。夜宵に至ってはほぼ何にも手をつけていない。

「基礎はわかるのよ。応用ができないのよ、複雑で」

恋も問題集を眺めつつ、答える。ところどころ回答が埋まっておらず、その部分には可愛い付箋がされていた。

「恋、それで社長なんてようやってられんね」

柚樹がため息をつく。

「いや、会計は会計士に任せているしねー」

とか口々に言い合っている。

「はいはい、夜宵とらいらはこっち」

そう言って都はパシパシと問題集で机をたたく。せっかくなので私は都から日本史を教えてもらうことにした。都は後から家で柚樹とお互いに教え合うらしい。

「とりあえずどこがわかんないんだよ」

しるしをつけていた部分は主に江戸から明治にかけて。私は近代史がもっぱら苦手だった。

「…全部」

夜宵は眠そうに答える。

「おー全部かー。よく普通に言えたな夜宵…」

「仕方ないでしょ。そもそもやる時間ないんだから」

そう言って机に突っ伏しそうになる夜宵。未だに仕事のほうで忙しいらしい。

「お前なー、とりあえずテスト前期間くらい仕事入れないようにしろよー。一応学業が本業だろー」

そう呆れながら言いつつ、教科書の近代史を開く都。

「とりあえず、らいらの苦手からつぶすぞ。時間ないから少し早口で解説するから聞き取れなかったら後で聞いて」

そういって柚樹は解説をはじめた。そのわかりやすいことと言ったら。下手な先生よりもわかりやすくて、すごく理解しやすかった。

「で、こんなもんだけど。大丈夫、わかった?」

「先生の話よりは分かりやすかったよ。あとは自分でなんとかできそう」

「で、夜宵は?」

「そのままヘルプおなしゃす」

私はだいたい今日のノルマとしていたものが終わったので、ほかのみんなを見に。みっさんは一人で黙々と問題集をやってるし、恋は相変わらず柚樹と数学。松崎姉妹は、里羅から古典を教えてもらってるらしい。手元に古語辞典がないということで、図書館に行っている。自分の残りの分もやってしまおうかと思って問題集を広げたところでガラリと教室のドアが開いた。入ってきたのは海藤先生だった。

「お前らが学校で勉強とかめずらしいなー」

テスト前いつものことではないらしい。

「で、先生何用?」

夜宵が問題集から顔をあげて聞く。先生はきょろきょろと探すようなそぶりを見せてから聞いた。

「神崎はどこだ?」

「あー里羅なら、松崎姉妹と図書館」

とそこへパタパタという足音とともにひょっこり顔を出した夏希。そしてこう言う。

「だから松崎姉妹って言うなよー」

どうやら図書館から戻ってきたらしい。図書館は教室の隣の位置にあるから、すごく行きやすい。

「先生、どうしたんですか?」

「あー、神崎悪いな。委員長の仕事。悪いなー神崎借りてくぞー」

そう言って里羅と先生は教室を出ていく。相変わらず委員長の方でも忙しいようだ。

「テスト前くらい、ゆっくり勉強させてくれてもいいのにねぇ」

そういう真澄。手元には古文の単語帳と教科書、あと問題集がある。

「里羅も大変だよなぁ」

そういう夏希の手元には古語辞典。あとノートもある。

「二人とも終わったの?」

「ん? ああ、調べつつ原語訳だってさー」

古典は古典でやることがいっぱいなよう。


 テストまであと1週間。私のここでの初めてのテスト。さて、結果はどうなることやら…。


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