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47、弥生3月 その3 未来の話

「そういえばみんなは進路って考えてるの?」

私の言葉にみんなが首をかしげる。そして里羅が困ったような顔をした。

「私たちの場合は特別すぎて決まってるようなものだしねぇ」

「しかし、らいらちゃん。なんでいきなりそんなこと?」

そんな恋の言葉に私が困ったような顔をした。きっかけは先日の松崎姉妹の喧嘩。そして、みんなの様子を見て私は焦っていた。

「みんな進路のことでやけに落ち着いてるなーって思って」

そうして俯くと、恋から頭を撫でられた。

「んもー、心配性なんだから。まあ私たちはだいたい決まってるようなものだけど、参考にできるやつならここにいるわよー」

そう言って恋はみっさんを引っ張る。みっさんはそれに抗わず引っ張られる。

「進路? お前と一緒に行けって言われるか、自分で考えろって言われるかだろ」

みっさんは恋と私の話を聞きながらもはっきりと答えた。その言葉に恋が納得したような顔をした。

「まあ、お兄ちゃんたち次第だけど、大学くらいはって思ってるんだけどねー」

「ふーん、そうか。じゃあ考えておかねえとな」

「まあみっさんだからどこでも行けるでしょ」

そんな様子に、いつも通りだなぁと私は眺めていたのだが、それどころではなかった。

「そういえば、都と柚樹はどうするのよ、進路」

里羅が話を振ると、しゃべっていた2人は同時にこちらを向いた。

「えー、進路? 俺は考古学強いとこ行くよ。探すの大変だけど」

「俺は、理系に行くことになりそうやね。まあ数学が生かせればどっかの企業の研究室って手もアリなんやけどなぁ」

そう言って頭をかく柚樹。そしてじっと夜宵を見る。

「そういえば夜宵はどこ行くん?」

机に突っ伏して寝ていた夜宵は、しっかり話は聞こえていたようで、眠そうな目をしながら顔を上げた。

「私…? うーん…、今オリジナルしか書けないから、もっと既成を生かせるようにしたいとかは考えてる。それだけ」

具体性がなさそうで、すごく具体的な話。

「まあ…私の場合はもういろいろやっちゃってるからね…」

そう言って夜宵はまた机に突っ伏す。ここ最近も徹夜続きらしい。学校に来ても授業は話半分に聞いていて、休み時間はこうして寝てばかり。

「まあ夜宵は、仕事っていう仕事をしてるからな。一応高校生ってことで学業優先にしてもらっているらしいけど」

都が付け足すように言う。そしてチラリと松崎姉妹の方に目を向ける。

「そういえば、お前らは決着ついたのか?」

「「私たち?」」

都の問いかけに、二人の声がそろう。

「私は結局、もう一度留学かな。専攻は指揮にしたいんだけど、そのためにも楽器勉強したいし」

と真澄。決着はついたらしく、横で夏希が頷きながら聞いている。

「私はやっぱり体育大学かなー。動く方じゃなくて整える方をね、やりたいのさ」

と夏希。自分の陸上経験を生かしたいと言っていた。でも私にできるかなぁと不安そうだけども。

「「で、恋は?」」

二人そろって恋にふると、恋は首をかしげた。

「言ってなかったっけ? 会社のほうで福祉産業に進出したいからそのための勉強をしようと思ってね」

「へぇ、じゃあ恋は福祉系の大学なんだ」

「そうなるかなぁ。どこ行くとかはぜーんぜん。そういう里羅はどうするのさ。夜宵ほどじゃないけどそこそこ名前売れてるじゃない」

「私? 私はちょっと自分の専門から離れてみようかなって考えてる。平安文学じゃなくて武家寄りとかもしくは近代文学とか」

「なにそれ面白そう」

「まあ結局、別視点から考えるための布石だったりするんだけどね」

そう言って笑う里羅。そして私のほうを見る。

「参考になったかな?」

その言葉に私は、小さくうなずいた。

「みんなが個性的だということはわかった」

その言葉にみんなが笑いだす。そして里羅に肩を叩かれる。

「まあもう少し時間はあるから、もうちょっと考えてみなよ」


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