45、弥生3月 その1 雪どけ花咲く
季節は冬から春へと移り変わり、だんだんと暖かくなってきている。なってきているはずなのだけど、クラスの中はまるで真冬のように冷え切っていた。それもこれも、ある二人のせいなのだが…。
始まりは突然だった。いつもだったら一緒に登校してくる二人が別々に登校してきた。それだけならまだしも、教室にいてもしゃべろうとしない。それどころか険悪ムード真っ只中。そんな二人の異変にクラス中が落ち着きをなくしていた。
「ねえねえ、松崎姉妹どうしたのよ…」
恋が耐え切れなくなったのか、声を潜めて耳打ちをする。里羅も困ったような顔で首をかしげる。
「いつもの空気じゃないよねぇ。喧嘩してもすぐに仲直りしたあの二人が」
「だよなぁ、温度が違う温度が」
と都も。夜宵に至っては二人に触発されてなのかずーっと小さな声で帰りたい帰りたいとつぶやいている。
「聞こうにも聞けん雰囲気やしなぁ」
とちらりと二人を見ながら柚樹。そして小さくため息をつく。みっさんに至ってはもうあきらめたような達観したような表情。
そんな気まずい空気の中、教室の扉が開いた。クラス全員扉に注目すると先生が入ってきた。そして教室中を眺めると、何事もなかったかのように教卓へと向かっていった。
「ほらほら、みんなホームルーム始めるから座れー」
そして、何事もなかったかのようにホームルームを始めようとする先生。そしてさすがに空気の重さに気付いたのか、松崎姉妹のほうを向いて言う。
「お前ら、さんざん個別に進路相談に来ておきながら、結局そうなったか」
「「だってー」」
「いや、だってもくそもないだろ。双子と言えど行きたいところは違うんだから」
どうも進路のことで喧嘩をしていたらしい。それでこんなに険悪な雰囲気になるのかと思うのだけど、二人はたぶん人と違うということで私の中で落ち着いた。
「とにかく、あと1年ちょっとで卒業なんだから、相方から離れることも覚えとけ。あと、お前らも二人を見習ってそろそろ進路考えろよー」
そう言って先生は淡々と出席を取り始めた。
その後二人のもとに行くと、二人で話し合っていた。聞いていると真澄は留学希望で、夏希は体育大学進学希望らしい。
「うーん、まあ二人からしたら妥当なんだけどねぇ」
「あまりにも近くにいたから離れることは考えられなかったのかしらねー」
里羅と恋が二人の会話を聞きながらのんびりという。柚樹が二人の肩を叩いて、諌める。
「まあまあ、なんとなく解決方法はわかったようやし、な」
その言葉にはっと私たちのほうを見る松崎姉妹。そして、見事に同時に頭を下げられた。
「「ごめん、みんな」」
その言葉にあっけにとられる私たち。そして誰からともなく笑い出す。
「いいんじゃねえのそれくらい」
「まあ空気凍ってたのはちょっと辛かったけどね」
「夜宵とかずーっと帰りたいって言ってなかったか?」
「それはもういい」
そうやって笑い合っていると、先生が教室に入ってきて紙を配りだした。
「思い出したから持ってきたんだが、進路希望調査早めに書いて出せよ」
その言葉にはっと我に返ってあわてだす人がちらほら。私たちの中でもこの時期がきたのかと言わんばかりの顔つきをしている人がいる。
急激な冬の冷え込みは、すぐに春の陽気に変わった。




