34、師走12月 その2 メリークリスマス 後
「メリークリスマス!」
今日は12月25日。ほんのちょっとだけ遅いクリスマスパーティーを恋の家でしている。みんなでそろって。おじいちゃんはみっさんと恋と二人で来たこともあるのか、すんなり許可してくれた。もちろんお泊りもだ。
「恋も無理言ってなかった?」
あとから里羅に心配されていた。私自身は見ていないのだが、二人と会った後のおじいちゃんはすごく機嫌がよかった。
「で、里羅のほうはどうだったのよ?」
恋が里羅に絡んでくる。まるで酔っているように。お酒はこの場にはないはずなんだけど。
「ああ、こいつ炭酸で酔うぞ」
みっさんがまるで他人事のように言う。みんなの様子からするといつものことらしい。
「いつもより数倍うっとおしくなるだけだから気にしなくていいぞ」
そして、自分も炭酸をあおると一息つく。そして、里羅の方に向いて聞く。
「で、昨日はどうだったんだ」
里羅は困ったような表情をして、それでも逃げられないと思ったのか口を開く。
「いたって普通の食事だったわよ。何度か会食でそういうのは経験してたけど、プライベートでは勘弁だと思ったわ」
そしてジュースを一口飲むと「こっちのほうが気楽」と一言つぶやく。しかし、周りのみんなは目を輝かせる。
「え、なになに? そんないいとこ行ったの?」
「なになに? デート? ディナーデート?」
夏希と真澄が興味津々というように聞いていく。里羅は溜息をついて二人の質問に答え始めた。
「そこそこいいとこだと思うよ。全部あっちにもってもらっちゃったけどちょっと申しわけなかったかなぁって思う程度には」
「それっていいとこだったってことやないか…」
里羅の平然とした答え方を見て柚樹がため息をつく。里羅は首をかしげてそれからつぶやく。
「さっきも言ったけど、こっちの方が気楽でいいんだもん」
その里羅のつぶやきが聞こえたのか聞こえないのか、恋が里羅に飛びついて抱きしめる。もう完全にいつもの恋以上の状態だった。
「も~、うれしいなぁ~」
そう言って恋は里羅の肩で寝てしまった。まるで本当の酔っ払いみたいに。
「みっさん、恋のことお願いしていい?」
里羅はさも同然のようにみっさんに恋を預ける。みっさんも慣れているようで抱きかかえるとすぐに部屋を出ていってまたすぐに戻ってきた。
「恋は絶対、お酒飲んでもすぐつぶれるタイプだよねぇ」
「逆に夜宵はザルっぽそう」
松崎姉妹が向けた視線の先には、黙々と出された料理を食べつくしていく夜宵の姿が。普段から細い体なのだが、どうしてあんなに入るのかというくらい食べている。
「夜宵もほどほどにしとけよー」
都がそう言って夜宵を軽く小突くと、夜宵はしぶしぶといった感じで手に持っていた骨付きチキンを手放した。
「いや、しかしいい食べっぷりやなぁ」
「こいつ食っても太らないからなぁ」
なんとも女子にはうらやましい体質らしい。だからといって食べすぎはよくないけれど。
「特にお前は偏食家なんだから用心しとけよ」
そして都に手渡されたジュースを夜宵は一口飲んで口を開く。
「恋いないし、みんな食べないし、もったいないし」
「いや、食べる食べるって」
そして恋の家の人たちが用意してくれた料理に手をつける私たち。そのどれもがおいしかった。
「プレゼント交換は恋が起きてからにするか」
「というかいないうちにやっちゃったら拗ねるでしょ」
「それもそうだな」
恋が起きてきたのはそれから数時間後。みんなが騒ぎ切った後だった。




