28、神無月10月 その4 その後のちょっとした事件
文化祭が終わって数日たったある日。一区切りついたほわほわした空気をみんながまとっていた。たった一人を除いて。
「で、なんでこんな写真があるんだよ…」
そう言って溜息をつく都。その手には、文化祭のときのメイド服を着た都の写真があった。恋が持ってきたものらしい。
「知らないわよ。女の子たちがこれ持ってきゃっきゃ言ってたからちょっと借りただけよ」
そう言って都の手から写真を取る恋。そのまま廊下に立っていた同級生と思しき女の子たちのもとへと行く。
「どうも写真部と新聞部合同の文化祭写真の販売があったらしいわね」
経緯を聞いてきたらしく、都に言う。都は恋が言い終わらないうちにダッシュで教室を出て行った。柚樹と恋が面白そうに視線を合わせて、みんなで都のあとをのんびりとついていった。そしてついた先は、A組の教室。芸術科の教室に何があるのだろうと思って覗いてみると、都が男子生徒の一人に詰め寄っていた。
「どうしてこんなことになってるんだよ…!」
都の声が廊下にまで聞こえた。さすがに男子生徒も気まずくなったのか、廊下に出るように合図をしていた。
「まあまあ落ち着けって…ってあれ?」
もちろん都についてきた私たちと鉢合わせをした。そしてそのまま手招きされて普通教室棟と特別教室棟をつなぐ廊下にきた。
「で、どういうことだよツバキ」
彼は狭川ツバキというらしい。というのを私は恋から耳打ちで聞かされた。
「だからちょっと落ち着いてって」
困り顔をしながらツバキも溜息をついて言う。恋と柚樹が都をなだめるように肩を叩くと都は一息ついて改めて切り出した。
「なんで、あの写真があるんだよ…」
その言葉尻が小さくなっていくのを聞いてなのか、ツバキが申し訳なさそうな顔をした。
「あー…、俺も散々止めたんだがなー。部長っていいの撮れると聞かないんだよな…」
写真部の部長さんは3年A組で、ファッション雑誌のカメラマンもするほどの腕前らしい。文化祭も新聞部と合同でやっていたらしいが、あまりにもいい被写体だったと部員に漏らしていたらしい。
「あの人なら知ってるわよー。なかなかいい写真撮るんだけどねぇ」
恋が合いの手を入れると、ツバキはそれに答えるように頷いた。
「そうなんですよ! 写真はいいのを撮るんですよ!」
そうしてはっと気づいたようにしょぼんとする。
「とりあえず部長には言っておきますね。謝りには行かせますから」
そう言ってこの話は流れたのだが、まだ何か釈然としない都。
「なあツバキ。お前って風景写真専門だったっけ?」
「ん、そうだけど。何?」
そのまま二人で話し込んでしまう。話し終ったあとの二人の顔はどこか晴れやかになっていた。
「なんか示談が成立したっぽいね」
恋が含み笑いをしつつ都に言うと、都はちょっとはにかんだ。
「んーまあ、せっかくだし資料用に研究先の写真を撮ってもらう約束を取り付けただけだよ」
それに対してツバキも笑っていった。
「示談っていうか、俺もそっちの方撮りに行きたかったし、利害が一致したって感じだな」
どうも二人の間で何か打ち解けたようだった。
後日、写真部部長さんと新聞部部長さんが謝りにきたことは言うまでもなく。
「いやあ、あのときのツバキくんの迫力はすさまじかったわぁ」
ということだそうだ。




