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24、長月9月 その4 食欲の秋(スイーツ編)

ある日の普通の朝。

「みんなー、みてみてー」

登校してきた真澄の手には1枚の紙切れがあった。


「へえ…、スイーツショップねぇ」

真澄がもってきたチラシを見ながら、里羅がつぶやく。その言葉に先ほどまで机で突っ伏して寝ていた夜宵がいそいそと顔をのぞかせる。

「やっぱ夜宵も興味あるのか」

夏希の問いかけゆっくりとうなずく夜宵。そのまま真澄の肩に頭を乗せてチラシを覗き込む。

「オープニングセールやってるし、せっかくだからどうかなーと思ったんだけど」

真澄がニコニコしながら聞いてくる。ついでに簡単なメニューももらってきたらしく、それも広げだす。

「へぇ、おいしそうだねぇ」

メニューには、少しばかりイラストが描いてあってそのどれもがおいしそうに見えた。その下の方には季節限定の文字が…。

「まっちゃん、あんたこれが目当てでしょ」

夏希もめざとくそれを見つけて指摘すると、真澄は思い切りうなずく。

「ここね、ネットでもだいぶ有名なの。放課後行ってみようよー」

こうして、スイーツショップに行くという放課後の予定がたったのだった。


 その放課後、里羅の家の運転手さんにお願いをして、スイーツショップまで乗せてもらった。そのお店は遠目からでもわかるくらいファンシーな装飾であふれていた。店に近づくと甘い香りもする。店をのぞくと中には若い女性がたくさんいた。

「やっぱ考えることはみんな一緒なのねぇ」

恋がしみじみとつぶやく。そんなこんなしていると、中から気づかれたようで、店員さんが来て人数を聞いてきた。

「あ、6人です」

こういうときは里羅がだいたい先陣をきってくれる。運よくテーブルが空いていたらしく、私たちはすぐに店内に通された。席に座るとすぐにメニューを開く夏希。

「真澄が持ってきたのよりもっとたくさんあるんだねぇ」

恋もメニューを眺めながら目移りしているようだった。真澄はすでに決めているらしく、メニューを見ずにみんなの顔を眺めている。夜宵もめずらしく目を輝かせている。

「らいらちゃんは決めたの?」

私があんまりメニューを見ないので、真澄が聞いてくる。私は真澄から見せてもらったメニューの中でだいたい決めていた。

「うん、まあ…」

とそこで、夏希と夜宵の二人がそろって目に留めているものに気付いた。よくよく見ると、巨大パフェなる文字が…。

「食べきれないもの頼んじゃ駄目だよなっちゃん」

「食べきれないのに頼んじゃ駄目だよ夜宵」

真澄と里羅の二人の抑制が入る。二人とも予想済みだったらしい。夏希と夜宵はぐっと押し黙ってしまった。

「とりあえず私これねー」

恋が早々に決めて里羅にメニューを渡して指さす。そこにはティーセットの文字が。

「相変わらずブルジョアジーなもの頼むのね」

金額を見て里羅がため息をつく。とりあえずお会計は個々でバラバラにしてもらおうと最初のうちに決めてあった。

「ふふーん、お会計別だからねー。遠慮はなしよー」

そう言って恋は夏希と夜宵のほうを向く。夏希と夜宵は未だにメニューとにらめっこしていた。いざ選ぶとなると迷うらしい。

「…二人で別々のもの頼んで半分ずつにしたら?」

見かねた真澄が口添えをすると、その手があったかとばかりに顔をあげる二人。その様子に、恋や里羅も溜息をつく。

「で、決まったの? 店員さん呼んでいい?」

そうしてテーブルに備え付けのボタンを押す里羅。すぐに店員さんは来て注文を終える。

「楽しみだねぇ」

真澄が頬を緩ませて言う。その笑顔にみんながほんわりする。店内は相変わらず人が多く、店員さんもあわただしそうに動いている。そろそろ終業時間なのか、少し大人っぽい女性の姿もちらほら見えた。そんな姿をぼんやり眺めていると注文したものはすぐにきた。

「思ったよりも早かったねぇ」

そういう真澄の前には季節のフルーツのスイーツプレート。今月は、梨のコンポートとモンブラン、巨峰のタルトである。私も同じものを頼んでいた。恋はティーセットでオレンジのタルトを頼んでいた。里羅は梨のコンポートタルト。夏希と夜宵は、フルーツタルトとチーズケーキでおさまったようだった。

「それじゃいただきまーす」

誰の掛け声とはなしに、思い思いに食べる。甘すぎない甘さに一同で溜息をついたり悶えたりそれぞれの反応を見せる。


 そして甘い時間はしばらく続いたのであった。


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