20、葉月8月 その4 臨海学校その2
一夜明けて早朝。夏らしい少し涼しい晴天の下で、のんびり私は浜辺を見ていた。というのも、恋が朝一で浜に行きたいと言ったからだ。
「やっぱり静かだねぇ」
「そうだねぇ」
私と恋、二人ともまだ昨日の余韻が残っているのかぽやんとしている。それでも恋は、靴を脱いで波打ち際で遊んでいた。すらりと伸びた足で器用に波を蹴っている。そんな様子をのんびり眺めていると後ろから足音が聞こえてきた。振り向くと里羅が近くまできていた。
「やっぱりここにいたのか。そろそろ朝ごはんの時間だよ」
部屋にいないのを確認してきてくれたらしい。
「恋も時間ー」
「わかった今いくー」
そう言って走ってくる恋。それを待ってから3人で並んでホテルまで歩いていく。朝焼けがまぶしかった。今日も晴れるようだ。
朝食を食べて、ホテルをチェックアウトするとそのまま海の家へ。ここももちろんプライベートなもので貸切だった。ただそこにはもう見慣れた姿があって…。
「やあやあみんな。遅かったじゃないか」
そこにいたのは学院長だった。黒のビキニの上に白いパーカーをはおっている。後ろで葵さんが困ったような顔をしていた。
「学院長…。なんでここに…」
恋と満が後ろに下がった。相変わらず全面的にかかわりたくはないらしい。そんな二人ににお構いなしに学院長は声を張り上げる。
「さあ、若者たちよ! 遊びなさい!!」
そういうと、満足したような顔をして、パーカーを脱ぎだす。そして一人浮き輪を持って海に向かって走っていった。それを呆然と見ている私たち。
「…というわけで、まあ遊んで来い」
海藤先生のその言葉で金縛りが解けたように動き出す私たち。そして、各々更衣室に向かっていった。
「…しかし、学院長も変わり者だね」
夜宵がぼんやりと口にする。その言葉に恋がびくっと反応する。
「そんなに苦手なのー…?」
真澄が恋の顔を覗き込みながら聞くと、恋は目線をそらしてものすごく答えにくそうな顔をした。
「あー、うん、ちょっとね…」
その言葉の濁し方に、夏希が面白がって茶々を入れる。
「なんだなんだなにかあったのか?」
その追及に観念したように、恋は溜息をついて口を開いた。
「まあ昔っからあの人はぶっ飛んでてね。私もみっさんもよく可愛がられたのよ…」
その言葉を聞く限りはいいように思えるが、恋の顔を見るととてもそんな風には思えなかった。
「…まあ1番の被害者はみっさんかな」
そう言ってもう思い出したくないというように頭を横に振る恋。相当いろんな目にあってきたらしい。ため息をついてごそごそと着替えはじめる。それにあわせたようにみんなも水着に着替えだす。着替え終わって更衣室を出ると、すでに男子たちは着替え終わって待っていた。浮き輪も完備だ。ただ一人みっさんだけ青い顔をして後ろのほうにいる。
「あれ、みっさんどしたの? 具合悪い?」
里羅が声をかけると、恋が察したように里羅の肩を叩く。里羅も気づいたようで、みっさんの肩をポンポンと叩いていた。
「まあ無駄に思い出す必要ないわよ。とりあえず今日は楽しみましょ」
そう言って海の家を出ると、すでに海を満喫しているクラスメイトの姿がちらほら。そこに混じるように学院長もいた。
「さすがに生徒もいるからねー」
恋がその姿を観察するように目で追う。みっさんは逆に見ないように目をそむけていた。
「さて、私たちも」
「遊ぶとしますかぁ」
そう言って走り出す夏希と真澄。その姿を追いかけるように里羅も走っていく。都と柚樹はパラソルとレジャーシートを持ったままだ。二人は溜息をついてちょうどいい場所を探し出す。夜宵は日陰から出たくないのか、海の家のデッキでぼんやりと海を眺めている。恋と満もとりあえずという感じで遊びに行った。
夏ももうすぐ終わりです。




