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 妹が生まれてから六年。

 妹……、あおとの生活は俺に今までよりも沢山の充実感を与えてくれた。

 初めてはいはいをした時も、初めて掴まり立ちした時も、俺は少しでも可愛い蒼を残そうと写真を撮ってきた。

 そして沢山の蒼の初めてを写真に収めるうちに俺は自他ともに認めるカメラ小僧へと進化を遂げていた。

 まあカメラ小僧と言っても撮るのは専ら蒼だけだからその道の趣味の人には笑われるくらい拙いものだとは思う。

 だけど誰よりも蒼の事だけは一番可愛く取れるとも自負している。

 それにあんなに小さかった蒼も今では『にいたん』と俺の事を呼び、後ろをヒヨコのようにちょこちょこと付いてくるまで成長している。もう可愛すぎる。

 最近ではぴこぴこ音が鳴るサンダルがお気に入りみたいで、まだまだ上手く走れない蒼はぴこぴことした不揃いの音を鳴り響かせている。そんな姿も他の子供ならなんとも思わないのに蒼だと言うだけで可愛すぎると思う俺は十分シスコンと呼ばれる部類に入れられるだろう。

 昔なら全く考えられないことだ。

 だけど不思議なことに後悔していない。

 それどころかこんなに人を大事に思えるようになった自分の成長具合に驚いてさえいるくらいだ。

 そんな俺の事をシスコンだ、気持ち悪いだ、性犯罪者になるんじゃねえぞ、だとからかってきた奴にはとつとつと俺は言い聞かせてやったくらい成長したなと思う。

 妹を、家族を大事にして何が悪いんだ、と。

 勿論人それぞれ事情があるだろうけど、五体満足で食べさせてもらっているうえに学校まで通わせてもらっている生活で、それが当たり前だと勘違いして感謝もせずでかい態度をとっている方が一番近くにいる家族を大事にできない方が気持ちが悪いだろ、と。

 二次元での話なら人それぞれ妄想を楽しむことに何の問題もないが、三次元の人を、家族を、ましてや守るべきはずの存在である大事な妹を性的な目で見るなんてのは、それはその存在を全く大事に思っていない証拠だと思う、と。

 俺から言わせれば本当に大事だって言うなら血が繋がった奴を抱きたいとか、そんな自分勝手な感情は自分の理性で抑えるべきだろ。

 大事だなんだとぬかしてるってのに、理性が本能に負けてどうすんだ。

 それこそ自分が可愛いだけだろ、と。

 もし妹が将来俺の事をそう言う意味で好きだと言ったって考えは変わるわけがないだろ。馬鹿か。

 世間では後ろ指さされるって分かってるのに、もしもその過程で子供が出来たらそれこそ妹が傷つくことになるだろ。

 子供が出来るって凄いことなんだぞ?

 俺、蒼が生まれてお袋の育児本とかネットでいろいろ知らべたけどこんなに医療が発達してる今の時代でさえ母子ともに無事で生き残るの百パーセントなわけじゃなくて下手すると死ぬこともあるんだぜ?

 それ知った時、蒼が無事に生まれてきたことに、お袋が元気なことに本当に感謝したよ。

 それと同時に命には責任が伴うんだって思ったね。

 好きな奴と体を重ねたいって思いがあるのは自然なことだから大事にしたいけど、その先に伴う責任を放棄するような自分勝手な人間にはなりたくないし、妹にもそんな無責任な人間になってほしくない。

 もしそれでも妹がそんな道を歩もうって言うなら俺は兄として大事な家族として妹を殴ってでも止めて見せる。

 そんな事を真剣にからかってきた奴が納得するまでとつとつと聞かせて納得するまで話し合いをした。

 そしたら少し泣きそうな顔で俺の考え方に納得してくれたみたいだ。

 勿論俺の事をからかってくるのは一人や二人じゃなかったから、その度にとつとつと話し合いをしていたら、暫くしたらその事で俺をからかってくる奴はいなくなっていた。

 皆話が分かる奴ばかりで本当に良い奴らだよな本当。






「にいた~ん、みて~できたよ~!!」

 リビングで写真を整理しながら蒼が生まれてきてからの今までの事を思い出しているとテレビの前で積み木で遊んでいた蒼が満面の笑みで今までの成果を報告してくれる。

 今までよりも高く積むことができて嬉しいのか積み木を崩さないように気を付けながら角度を変えて高く積んだ積み木を見つめている。

 その時大きく体を動かしているから、上の方に二つで結んでほしいと頼まれて結んだ髪の毛も蒼の動きに合わせて右に左に揺れていた。

 まだ落ち着きのない蒼の行動を横目に見つつ写真の整理に目途がついてきたから一段落付けて片付けをする。

「蒼、そんなに勢いよく体揺らしてると髪が積み木にぶつかって崩れるぞ」

 その時あまりにも勢いよく動く蒼の行動に一応注意をすると、蒼は俺の方を向いて頬を膨らませると口を尖らせた。

「あお、そんなことしないよ~!!」

 拗ねたように蒼は文句を言うと勢いよく顔を背けて怒ってますよアピールをした。

 だけど言った傍から横を向いた時の勢いで髪が振り子のように揺れて積み木に勢いよくぶつけている。

 蒼も髪がぶつかった事に気が付き直ぐに積み木へ意識を焦ったように向けているけど時すでに遅し。崩れる積み木の様子にこの世の終わりのような顔をして散らばった積み木を呆然と見つめていた。

 だが残念なことに蒼が積み木を自分で崩すのは今日が初めてなわけじゃないので俺は気にすることなく自分の片付けを続ける。

 だけど毎回思うけどよく何回も自分の意図しないで壊せるよな。

 蒼が積み木にはまって半年くらい。で、高く詰めるようになったのは一ヶ月くらいだっけ?

 それでもほぼ毎日同じ遊びしてるんだから学習してもいいと思うけんだけど、どうなんだ?

 今日は髪だけど、昨日が成功した喜びを万歳で表してたら手がぶつかって壊してたよな。

 その前が慎重に動いてるのに足元みてなくて転がってた積み木に足とられて転んで壊してたし。

 そんな抜けてるとこも可愛いけど、何ていうか蒼はドジなんだろうか。そうなんだろうな、きっと。

 俺が一人納得していると、積んでいた積み木を崩してしまったことで今日の積み木遊びは終わりにしたのか、積み木を片付けている。蒼の背中から哀愁が漂ってきているな。

 しっかし今日はいつにもまして目に見えて落ち込んでるな。

 まあ、いつもより高く詰めてたみたいだしな。仕方ない。

 今日のおやつはプリンだけにするつもりだったけど、まだ晩御飯まで二時間以上あるし奮発してアイスも添えてやるか。

 蒼が生まれて五年。蒼が幼稚園に通うようになってからお袋が本格的に職場に復帰したため、蒼の世話や家事でできることは俺がやるようになったこともあって蒼のおやつを偶に作るようになった。

 最初は難しいとも思ったけど、菓子は分量さえきっちりすれば大体のものは作れるから少しずつ日課になりつつあるため苦だとは感じない。意外と料理も向いているのかもしれないかと自負し始めてたりするしな。

「にいたん、おかたづけおわったよ~」

 さて、蒼の片付けも終わったみたいだしいっちょ腕を振るいますかね。




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