嘘と償い 二
「――んじゃ、ミランダさん。私達、先に教室行って、オーブの知り合いだってこと皆に話してきますね」
狭いけど、物が整理整頓された孤児院の事務室の中。私とロゼは、必要な手続きを済ませた隣のオーブを残し、ソファーから立ち上がった。
「ええ、こちらもすぐに行きますからね。子供達と待っていてください」
そう応じて、エプロンみたいな服を着た温厚そうなお婆さんが、シワの刻まれた顔に微笑を浮かべた時。
「クリスさん……」
不安げに紫色の瞳を揺らすオーブが、私の名前を呟いた。
院長のミランダさんや、この孤児院のことは前に説明していたが、実際に来て以降、オーブはずっと緊張気味でいる。これから、一緒に暮らす子供達へ挨拶をするんだけど、大丈夫かな。
「あー、自己紹介なんて難しく考えないでさ。普通に名前と、これからよろしくってなこと言えば、後は向こうが勝手に受け入れてくれるよ」
「クリスの言う通りですよ。オーブさんの記憶のことは、病気ということで説明してありますし……。今ここにいる子供も色々と事情がある子達ですから、決して貴方を変に思ったりはしないでしょう」
「……は、はいっ」
私とミランダさんの励ましに、オーブが今度は大き目の声を出した。
その言葉に頷いた私は、ロゼと共に事務室を出る。
外はもう日が落ちていて、子供達の待つ教室と呼ばれる部屋と、事務室を繋ぐ渡り廊下の照明には明かりがついていた。
「挨拶、上手くいくといいが……。やはり皆がオーブの黒髪を見たら、最初は驚くだろうな」
レンガの敷かれた渡り廊下を進むロゼが、憂慮のにじむ声で言った。
「まあ、私も初めはびっくりしたしね。驚かれるのは仕方ないとして、それが悪影響にならなきゃいいんだけど……」
ロゼの隣で答えた私は、自身の眉にかかった前髪を指でつまむ。
私の白に近い白金の他、ロゼの鮮やかな金髪、エイミーさんやミランダさんみたいな茶髪が、ロングランド……というか世界中の人間の大多数を占める髪の色で、オーブのような黒髪を持つ人は珍しい存在だ。
海を越えた大陸などにはいるみたいだが、この国だと黒髪の人はほぼ見かけない。人によって様々だけど、紫色の目というのも同様だ。そうなれば、自然とあの子の正体について、一つの可能性が出てきていた。
オーブは、ロングランドではなく、どこか外国の人間なのではないか。
確証はなく、難航もしているが、その可能性が高いことを考慮した捜査を実際に警察は行っているらしい。そしてオーブ自身、自分がロングランドの人と違うことには気づいていた。
ただ、オーブが本当に外国人だとしたら、身一つで遺跡にいた理由がますますわからなくなる。
考えつくことで警察の人やロゼと話したのは、誘拐だ。
オーブは、どこかで何者かに誘拐され、何らかの理由であの遺跡内に連れてこられたのでは? ってことだが、犯人や犯行の目的は謎……。
私は悩みながら、廊下の突当りにある扉まで歩いていく。
「失礼しまーす」
明かりと騒々しい話し声が漏れる扉を、私はノックして開ける。
その瞬間――、
「ああっ、クリスだ!」
「ロゼねーちゃんもいるぞ」
「あれー、クリスお姉ちゃん達どうしたの?」
「金なくて飯でも食いにきたのか? この貧乏人!」
押し寄せた子供の声に、私はカッとなって口を開けた。
「誰が貧乏人よ! 今おもしろいこと言ったのはどいつだ?」
叫んだ途端、「あいつ」「違うよ」「男の子だった」「俺が貧乏人だ」などと言って、見知った男女十数人の子供が口々にわめいた。
……やってしまったぜ。この騒ぎ、どう鎮めたものか。
「落ち着け、クリスお姉ちゃん。大人気ないぞ」
「うぐ、すみませんね、ロゼねーちゃん」
私は、呆れたような顔をした横のロゼに応じ、頭をかいた。
私は、学校の教室を小さくしたような部屋を見回し、木の机の椅子に座った子供達の前に立つ。子供の服装は半袖、長袖、ジーンズ、スカートと各自異なるが、一様に興味深そうな様子で私へ視線を向けてきていた。
「えー、まずは皆、久し振り。変わらず元気一杯でなによりだわ」
挨拶にまた騒ぐ子供達を制して、私は本題を切り出す。
「私とロゼがきた理由だけど、皆はなんで教室に集まってるの?」
「今日くる新しい子の紹介がここであるんだ。終わったら食堂で歓迎会をやる」
私の問いに、短い茶髪の男の子……マッシュが答えた。
子供の中では一番年上で、十二歳くらいに見えるオーブと同年代の子。全員のリーダー的な存在でもあるマッシュの言葉に、私は頷く。
「そう。実はその新しい子と私達は友達で、さっき孤児院まで一緒にきたの。これからすぐにその子が挨拶するから、話をよく聞いてあげてね」
私が言い終えた時、室内にノックの音がした。
続けて扉が開き、ミランダさんとオーブが教室に入ってくる。
オーブの姿を見て、室内に子供達の驚いたような反応が飛び交った。
それを収めるように、ミランダさんは両手を広げる。
「はい、みなさん静かに。今日は前に話しておいた、新しい仲間を紹介します。さあ、オーブさん」
促された少女が、下がった私達の斜め前に移動する。
表情はまだ硬いけど、子供達をじっと見つめた後、口を開いた。
「皆さん、はじめまして。わたしの名前は、オーブと言います。今日からこの孤児院で、皆さんと一緒に生活していくことになりました。わからないことばかりで迷惑をかけると思いますが、よろしくお願いします」
少し震えた声で言って、ぺこりとお辞儀をしたオーブ。
良い挨拶だった、と私は感じたが、子供達は揃って目を丸くしている。
拍手するミランダさんに、私とロゼも合わせているけど……。
まずい、子供は誰もついてこない。どうしよう、どうしよう。
焦るも妙案は浮かばず。ただ、とにかく私は、前を見続けているオーブに声をかけようとした。同時に椅子を引く音がして、並んだ机の最前列に目をやる。
そこで立ち上がっていたのは、小さな金髪の女の子……パムだ。
可愛いお人形みたいな、最年少である六歳の子供が、とことこオーブの傍まで歩いて行く。そして、百四十センチ程だが、自分にしてみれば背の高いオーブを不思議そうな顔で見上げた。
「わぁ、お姉ちゃんの髪、キレイだねー。さわってもいーい?」
「え、あっ、はい。どうぞ」
青い目を輝かせるパムの前に、早口で答えたオーブが屈む。
パムは黒髪に手を伸ばして、楽しそうに笑った。
そんな相手の様子に、オーブも微笑み返す。……と、さらに、女の子を中心とした他の子供達が、「私も触りたい」と言って二人の傍へと集まり、一気に打ち解けた雰囲気が広がった。
――これはもう、私が口出しする必要はないな。
「はぁ、疲れたー」
「そうだな。しかし、ひとまずは安心……と、クリス、そっちを引っ張ってくれ」
「あいよー。ほんと、パムに感謝だわ」
ロゼと喋りつつ、ミランダさんに使っていいと言われた空き部屋のベッドを整える。空き部屋とはいえ室内は掃除されていて、二つ置かれたベッドも綺麗だ。シーツを敷いたその上に寝転んだ私は、借り物のパジャマを着た身体をよじり、大きく伸びをした。
オーブの挨拶の後、ロゼ共々夕食を御馳走になってしまった歓迎会。
加えて、「時間も遅いし、せっかくだから泊まっていけば?」とのミランダさんの言葉に頷いた、現在に至る状況を思い返し、ふっと息をつく。
その時、閉めた扉から、控え目なノックの音がした。
「あの、オーブですけど」
「お、開いてるよ」
私は聞こえた声に応じて、上体を起こす。
……と、照明の点いた部屋に、神妙な顔をした少女が入ってきた。
オーブは私達と同じく、借りたパジャマを着ている。ただ、サイズが大きい所為で、手が裾に隠れてしまっていた。そんな姿も実に可愛いが、何の用だろう。
「すみません、眠るところでしたか?」
「まだだけど、どうかした?」
私は訊き返したオーブへ、自分のいるベッドに座るよう言った。
それに従った相手から、枕元に置いた懐中時計へ視線を移す。
現在の時刻は、午後十時前。
孤児院の消灯時間は十一時で、他にも起床の時間などが決められている。そういう規則を覚えて慣れるのに、まずオーブは苦労するだろう。
けど、その辺は子供達が色々助けてくれるはず。様子を見る限り、早くも女の子達と仲良くなっていたし、マッシュをはじめとした男子だってまんざらでもなさそうだった。
とはいえ、オーブにしてみれば不安は尽きないか。
「また、なにか質問?」
私が再び問い掛けると、オーブは伏せていた目を上げた。
「いえ、そうじゃなく、あっ」
ハッとしたような相手の言葉を促す。
「少し気になったんですけど、食事をする直前にミランダさんが、ソニア様がどうとか言ってましたよね。あれは、なんですか?」
「――え?」
私は驚いて、隣のベッドに座るロゼと顔を見合わせた。
「なんですかって、食事に感謝するソニア教のお祈りじゃない。まさか、あんた……ソニア教とかソニア帝国の記憶もないの?」
「ソニア帝国。その国のことを、警察の人や病院の先生に知らないかとは訊かれました。でも、わたし、何もわからなくて……。ソニア帝国についての説明は特になかったんですが、ソニア教というのは、帝国の?」
私の問いに、オーブは思案顔で首を傾げた。
この子が受けてきた警察の事情聴取や、病院の治療の詳しい内容までは知らなかったけど、そういう状況になってたのか。
「ソニア帝国を筆頭に、ここロングランドの他、たくさんの国の国教となっているものがソニア教よ。ただ、帝国のことが何もわからないってのは、さすがに有り得ないから……。きっと、思い出せなくなってるんだ」
かすれた声で喋った私に、
「ああ。これも記憶喪失の影響だろうな」
ロゼが眉をひそめて、そう同意した。
「同じことを、先生も話していました。よければ、ソニア帝国やソニア教のことをわたしに教えてくれませんか? 入院中は調べることもできなくて、気になっていたんです」
オーブがベッドの上で私の方に身を乗り出し、上目遣いで頼んできた。
無意識でやってんだとは思うが、その可愛さたるや、半端じゃない。
「わ、わかったわ。ともかく、ここで生活していく以上は、帝国やソニア教のことを知っておくべきだしね」
私は凝視していた少女に、若干、慌てながら言った。
「この孤児院は、一体?」
訝しむように訊いてきたオーブを、私は横目で見やる。
「私は言ってなくて、手続きの時にも話が出なかったけど、そのうち説明はされたはずなんだ。簡単に言うとね、エイシップ孤児院は、ロングランドにいるソニア教徒の人達が設立した施設なの。経営も国の補助を含む教団の支援で成り立っているから、ソニア教のことは知ってないと具合が悪いのよ」
「そうだったんですか。それは、確かに知らないと問題でした」
私の言葉に恐れでもしたのか、オーブはぶるっと身を竦ませた。
「生活上、食前にやる事が決められてるお祈り程度しかソニア教は関係してこないから、あんま気にすることじゃないよ。島国だからとか色々理由があって、そもそもロングランドはソニア教信仰が盛んな国じゃないんだ」
ロゼが、軽い口調で話した私を見て、ベッドに腰かけたまま腕を組んだ。
「私やクリスも信心深い方ではなく、食事前に祈ったりはしない。海を隔てた帝国自体、距離的な意味でも、この国で暮らす人にとっては遠い存在だ」
「……ソニア帝国というのは、どういったものなんでしょうか?」
理解を示すように頷くオーブが、真剣な表情で質問してきた。
それを受けて、私は頭を整理しつつ語りかける。
「今から三千年くらい前。この地球に巨大隕石が落ちたって話はいいよね? 衝突で起きた大災害によって、それまで繁栄していた文明が滅び、人類は絶滅しかけた……」
「は、はい。なんとなく」
なんとなくかい!
オーブの頼りない返答に心の中でつっこんだ。
隕石が落ちた日……終末の日とも呼ばれる大災害のことは、どんな歴史書にも載ってたりするが、その辺りの記憶もあやふやなのか。
しかし、肝心なのは終末の日の後のことなんで、ここは話を続ける。
「絶滅しかけた人類は、被害の影響が少なかった現在の帝国がある大陸に集まり、千年の間、大災害でメチャクチャになった地球の自然が回復するのを、電気や水道も無い過酷な環境で待ち続けたの。その後、文明を再興する為に協力しあい、ソニアって名前の女性を中心として一つの国を造り上げた。同時に、新生暦っていう新しい時代が始まったんだ」
「ソニア……」
ぽつりと呟いたオーブが、どこか遠くを見るような目をした。
「ソニアさんは国の指導者となり、造られた国は名前もソニアと名付けられた。んで、そのソニアさんの教えを広めたものが、当時から現在まで世界各地で信仰されている、ソニア教っていう宗教になったんだ」
「それは、どのような教えなんですか?」
私の話をじっとして聞いていたオーブの問い掛けに、ロゼが口を開いた。
「要点を言えば、寛容の精神を持って日々を大切に生きなさい、ということだ。大災害後の過酷な環境の中、多様な人間が集まる困難な状況に際した時の、人のあるべき姿を説いたのだろう。食糧を得て生きることへの感謝を表したモノが、先程の食前の祈りだ」
厳かさを感じたロゼの話の後に、私は言葉を続ける。
ソニア国で原始的な生活から文明を再興させた人間は、やがてソニア教と共に世界各地へと散って今ある国を造った。
その間も技術や経済、文化など、あらゆる面で世界の中心であり続けたソニア国は、何時しか他の国々をまとめる帝国と呼ばれる存在になった。それが新生暦、五百年頃。二千十四年の今から、千五百年くらい前の話――。
「だが、現在も世界は帝国を中心に回っている。世界的に有名な企業などは皆、帝国に本社があるし……。古代文明の技術を復活させているのも、大体が帝国の技術者などだ」
「その古代文明の技術が復活したのは、遺跡やら遺物を発見してきた、遺跡調査員の活躍あってのことだけどね」
自分に代わって喋っていたロゼに一言付け加えた私は、静かに黙しているオーブへ笑いかけた。
「大まかにだけど、今できるソニア帝国の話はこんなところかな。もっと詳しいことが知りたかったら、本とか読んで調べてみてね」
「……わかりました。ありがとうございます」
どこか陰のある表情で応じたオーブが、ふっと息をついた。
結構長く会話してきたし、疲れもあるのだろう。
「オーブ、大丈夫?」
「あ、はい。わたし頑張って、色々思い出せるようにしますね」
無理に笑って言ったようなオーブの姿に、切なさがこみ上げた。
「ここの生活にも慣れなくてはな。しばらくは孤児院の手伝いをしつつ、症状に変化がないか様子を見るのだろう?」
「そうです。明日からは掃除とか、ミランダさんのお手伝いをします」
話題を変えたロゼの質問に答えて、オーブはまた笑顔を見せたけど……。
ロングランドは、六歳から十五歳まで義務教育の期間がある。
孤児院の子達も普通の子供と同じく学校に通っていて、全員、夕方くらいまで帰ってこない。その間、ミランダさんなどがいるとはいえ、学校に通えるはずもない状況のオーブは一人になってしまう。
それをどう考えるかは当人次第だが……なんにせよ、大変だ。
私は何気なく手を伸ばし、オーブの頭を優しく撫でた。
「ごめんね、傍にいたいけど……。私達、明後日には仕事で町を離れなきゃいけないの。それが終わったら、絶対また会いにくるからさ」
私の発言に目を瞬かせた少女が、すぐ首を横に振った。
「クリスさんが、謝ったりしないでください。わたし、この部屋きたのは、今までのお礼を言いたかったからなんです」
そう言って泣きそうな顔をしたオーブから、私は慌てて手を引っ込める。
「クリスさんとロゼさんは、わたしの命の恩人です。二人がいなければ、わたしは遺跡の中で死んでいました。助けられた後も、色々気にかけてくれて……。孤児院に入ることが決まった時も、ここにクリスさんがいたって聞いて、すごく安心できたんです。本当に、二人には感謝の気持ちがいっぱいで、けど、それをまだちゃんと伝えてなくて……。だから、ありがとうございましたっ!」
一息に言ったオーブが、俯いて、小さく肩を震わせる。
その言葉を聞いていて、私は不意に涙が出そうになった。
これまで接してきて何度も思ったけど、この子は本当にいい子なんだ。それだけに、今みたいな状況になってしまったことが、とても悲しくて……。
私は無意識に、オーブの華奢な身体を抱きしめていた。
「わ、く、クリスさん?」
喋ったら情けない声が漏れてしまいそうで、戸惑うようなオーブの反応に、私は答えることができなかった。
「……私達は、当然のことをしているだけだ。気にするな」
やや硬い声はロゼのもの。
自分の気持ちを上手く代弁してくれた相棒に、私は心の中で感謝する。
遺跡でオーブを発見した際の状況は、明らかに異常だった。それを冷静に考えれば、この子は発見した時点で記憶を失っていた可能性もある。
つまり、崩落の原因と同じく、オーブが記憶喪失になった原因が、私にあるとは限らない。それはロゼにも指摘された、間違えてはいけない事実だ。しかし、あの時の出来事や病院の診断結果を思えば、自分が無関係だとは当然言えなかった。
私は、自分の身を守った行為は正しかったと信じている。
ただ、その所為で、記憶を失った可能性が高いオーブには、強烈な罪悪感を覚えていた。今まで生きてきた記憶を失わせたって、言ってみれば、その人を殺した事に等しいだろう。この罪悪感から解放される為、何より本人の為、なんとしてもオーブには記憶を回復してもらわないといけない。
「――ロゼの言う通りだから、気にしないでいいよ。それに、こんな可愛い子が一人で困ってたら、ほっとけないしね」
「……クリスさん」
様々な思いをのみ込んで声を絞り出した私を、オーブが見据えてくる。
ああ、無理。この気まずい空気には、ちょっと耐えられない。
「そうだッ。オーブ、今日はこのまま、私と一緒に寝よう」
「ええっ?」
咄嗟に思いついたことを言うと、腕の中の少女が慌てた表情を見せた。
「いえ、でも、わたし、割り当てられた部屋に戻らないと……」
「んーと、この部屋に行くって、誰かに言ってある?」
すっかりその気になっていた私の問いに、「同室の子や、ミランダさんにも伝えてあります」とオーブは答えた。
「なら平気だ。戻らなくても皆、ソニア教徒の寛容な心で許してくれるよ」
「ソニア教の寛容さとは、自身と異なる他者の考えを理解して許容することだ。何をやっても許す事とは違うぞ、クリス。都合のいい解釈をするなよ?」
真面目なロゼの言葉に、
「まあ、いいじゃん。似たようなもんだ」
そう私が応じた時、思わずといった様子でオーブがふき出した。
私とロゼも一緒に笑って、全員の声が、静かな部屋の中に響いていた。