ジャンヌダルクの携帯電話
私は、ジャンヌ=ダルク。
今は生まれ変わって 十字まもり としてこの現代日本で暮らしている。
長い事ひきこもりニート生活をしてきたが、とりあえず「ひきこもり」の部分は少し改善された。ニートは相変わらずである。
半年前、私は遂に携帯電話を入手した。
えらく遅いなと思うだろうが、ひきこもりで外部との交流をほぼ遮断していたから必要なかったのだ。携帯を持たないことを自己哲学としている、某ベテランサングラス芸能人とか某大御所俳優には共感を覚えたものだったが、遂に私もその哲学とはおサラバしたわけだ。
勿論、新型を買ったがスマートフォンではなくパカッと開く普通の携帯だ。
選んだ理由は、色々あるが、とりあえず見た目で選んだ。スカイブルーのすっきりとした色と、無駄な主張のない形に惚れた。例えるなら、艶やかな花束よりも、一本の白いバラの花の方が美しいといったような感じだろう。
さて、普通だったら買った時に何をするだろうか? まずは友達の携帯番号やアドレスを入力する作業にとりかかるのではないだろうか? しかし、私にその作業は必要なかった。なぜなら、電話番号を聞かねばならないような友達が一人としていないからだ。つまり、電話帳には両親の電話番号しか入っていない。弟は、聞いたがサラリと拒んだ。こんな美人の姉の電話番号をいらないとは実に勿体ない話である。
結局、説明書もほとんど読まず、電話もほとんど使わず、パケット代がかかるしパソコンがあるのでインターネット機能もほとんど使わないから、ただアプリ機能で遊ぶためだけのゲーム機のような存在として私の携帯電話は扱われていた。
しかし、そんなぞんざいに扱われてた携帯電話にも小さな転機が訪れる。
私の運営しているブログのオフ会が開かれたのだ。多くの人が集まって大盛況の中、会は進行していった。終盤には大きなサプライズもあったりして面白いオフ会だった。
私にとって数少ない交流の場だったから、初めての携帯やメールアドレスの交換が期待できたのだが、あまり素性を明かしたくない私なので、結局2人とメールアドレスを交換しただけに終わった。
1人はジル=ド=レイ。
私と同じく、現世に生まれ変わった前世の仲間だ。彼とは、昔のよしみもあるし、色々と私にやってほしい仕事があるということでメルアドを教えることにした。
もう1人は、ぱくりまく朗。
すぐ下ネタに走るし、ブログでは荒らし寸前のコメントを残すが、実際あったらなかなかの美少女だった。本当は教えないつもりだったのだが、私とジルの会話を、偶然に聞かれてしまったため、やむなく教えることになったのだ。どうも、ジルに任された仕事を手伝ってくれるつもりのようだが、アテになるかどうかはわからない。
ともかく、こうして、私の携帯の電話帳には4人の名が刻まれた。もっとも、新しく追加されたおそらく2人は仮名なのだが。これからは、多少携帯電話らしい働きをしてくれるかもしれない。しかし、こんな便利な通信手段が百年戦争の時にもあったら良かったと思う。戦いの時に重宝したに違いない。
神からのお言葉も、メールで来てくれたら有難いな。と、思うのは流石に罰当たりな考えだろうか?
そもそもに、今は神の声を聞くことができない籠の鳥ではあるが。