きちゅね現る
うぅぅ中々話が進みませぬ・・・。後何話かで一区切りになるかな?
大分歩いてはみたものの、やっぱり女の子の足では速度が出ない。深く生い茂った森というわけでもないんだけど、都会に慣れた自分には中々歩きにくい上に、感覚を調整しながらだから結構神経を使う。獣もいないのか、通り易い部分もないし。気を抜くと迷子になれそうだ。などと溜め息つきつつ考えていると、尖った枝で指先をちょっと怪我してしまった。ちゃんと血が出るし痛い。リアルだ…。仕方ない困った時の神頼み。
「社長~もう見飽きたでしょ?そろそろなんか乗り物とか出しませんか?」
『もうギブかい?まぁ通常動作の範囲はもう確認は大丈夫そうだし、助っ人だすか。さっき怪我したでしょ?その血をちょっとひらけた地面に垂らしてごらん』
少し先に、ほどよくひらけた場所があった。では早速、ちょっと痛いけど…、指をギュっとして血を垂らす。
『うん、OK。ちょっと待ってね……はい!』
ぼう~んとなんだかマヌケな音がして、煙と共に何かが現れた。社長のこだわりがよくわからなくなってきたな。煙が晴れると現れたのは、コンスケの守護用の霊獣九尾の狐だ。真っ白い毛皮につぶらな瞳、もさもさの尻尾が九本生えている。名前が『きちゅね』なのは…まぁ以下略。
「おぉ!九尾のきちゅね!これは…もふるしかあるまい。おぉぉ、ふかふかだぁぁぁ…うへへへへ…へへへへ…」
少しびびるきちゅねを無理矢理なで繰りまわす。
「く~んきゅーん…コ…コン」
『おお~い、ユウスケ君ほどほどにしないと嫌われるかもよ』
「はいすいませんやめます。ごめんねきちゅね」
きゅーんという鳴き声と共にちょっと潤んだ瞳で下から見上げてくるきちゅねは破壊力があり過ぎる可愛さだ。ぐっと自分を抑えて手を止めると、きちゅねは首をしゃくって、背中を指し示す。乗れってことか、乗っていいのかこれは。
「社長きちゅねって乗っても大丈夫なんですか?」
『今のユウスケ君の体重なら大丈夫だよ。本気出せば二人はいけると思うし』
四つの足を折り曲げて、身を屈めてくれたきちゅねの背中によじのぼる。普段の自分ならひょいってサイズなのになぁ。俺が乗ったのを確認し、きちゅねがゆっくりと身体を持ちあげる。優しいなぁイイコイイコしてあげよう。
『ちゃんと掴ってなよ。速度は結構出るはずだから』
「本当ですか?」
『うん、馬くらい出るから』
俺が思わずぎゅっと毛皮を掴んだ途端、きちゅねは走り出した。
「おわぁぁぁぁぁぁぁぁ~」
速い!これで馬くらいなのか!?自分のいつもの身体との差なのか、体感速度が凄い。思わず身体全体でしがみつきつつ目を閉じてしまう。耳元(頭の上の方)がびゅうびゅう鳴っている。落ち着いてゆっくりと目を開けると…スゴイ!地面に足が付いているのが不思議な程、軽やかにきちゅねは走っていく。疾走と言っていいレベル。障害物も軽々飛び越えていくのに、足の裏でしっかりと衝撃を消しているのか身体に負担はない。
「よし、このまま一気に山までGO!きちゅね~!」
あ…チャットウィンドゥが見えないや。まぁいいや。
きちゅねは完全に私の趣味です。すいません。
2013/03/15 修正