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行こう彼方へ

じわじわと書き進めています。

「必ず戻ってきましょうね」

「コン」

「…行こう」


ユウスケはその長い金色の髪を後ろでポニーテールにまとめ、烏龍亭へと向かって歩き始めた。先の問いに対しての返事は無く。コンスケも自分の部屋から持ってきた守り刀をぎゅっと握り、一度大熊亭を振り返ると、きちゅねと一緒にユウスケの後を追った。


「もうみんな用意はいい?」

「…ああ」


和装セーラーに、ポニーテール。見た目とは裏腹に防御効果の高い戦闘用意で瞑想でもするかの様に目を閉じ、静かに椅子に掛けているユウスケ。コンスケも見た目よりも何故か防御効果の高いピンクフリルの服にホットパンツという格好で、少し震える体を隠す様にきちゅねに触れ、落ち着かない様子でカウンターのそばに立っている。ツリータウンから追いついたF.D、M.Dも無言でコーヒーをすすっている。ピリピリとした緊張感の中で、さっちゃんがB.Dに声をかける。ごそごそと、カウンター内の床についていた取っ手を掴み、現れた地下への階段から皆が降りていく。そこは相当な広さの部屋であり真ん中に門が設置してある。見紛う事無い地獄の門である。


「オキツネさん達、鱗を」

「うい」


二人が今まで手に入れた鱗を差し出すと門が一瞬七色に輝き、彫刻の様に硬く閉ざされていた門がゆっくりと開く。


「行くよみんな」

「シィ」

「おっけだぜ」

「コン」


ユウスケとコンスケは無言で二人で手を繋ぐと、先行した彼らの後に続き門へと入っていった。





「随分と…久しぶりだな、ここは」


漏らしたユウスケの呟きが遠くまで響いていく。そこは彼が初めてログインした際に降り立ったあの場所。ただ、当時よりも樹木の一部が歪んで見えていたり、地面に穴が開いた箇所があったりと、不自然な状態があちらこちらに見える。以前の様に、動くものの姿、気配はない。


「ここも被害が出ているね…。警戒しつつ、あの山を目指すよ。みんないい?」


さっちゃんの号令の元、気を引き締めつつ進もうとした矢先、人を馬鹿にした笑いと共に目の前の木陰の闇が固まると、陰陽師の様な格好をした狐人キツネビトが姿を現した。


「邪魔をしないで預言者」

「そうもいかないのですよ半神様。そのヒトに行かれては都合が悪いのですよ」


そう言いながら膨れ上がる身体。小さな家程もありそうな巨大な九尾の狐へと姿を変える。元より細い目を更に細くし、突風の様に一行に襲い掛かってくる。


「避けろー!」

「もう逃げてますよー!」


ひぃひぃ言いながらも避けるコンスケ。素早く回避したF.Dがさっちゃんに向かって叫ぶ。


「さっちゃん俺の【解除】を!」

「ここなら多分大丈夫だね…、OK!ささやいて、いのって、ねんじなさい!F.D、いやファイアドラゴン」


F.Dの体から炎が吹き上がり、一気に大きくなると中から燃える様な赤い色の雄雄しい一頭のドラゴンへが現れる。透き通った皮膜の巨大な翼と凶悪そうな四肢で力強く九尾の巨大な狐に飛びつくと、動きを抑えつける。


「どうだい狐ちゃん達。惚れちゃう位かっこいいだろ?俺っち」

「あぁ…喋らなかったら惚れてたかもな」


器用に片目でパチッとウインクしてきた赤いドラゴンに驚きつつも、声も中身も、いつもと一緒なので少しげんなりするユウスケ。


「F.D…いえ、ファイア。ヒトになど加担しないで頂きたいものですな」

「お前こそ、いつまでも捉われんじゃねえよ。状況ってものが分かってないのか」


言葉と共に思い切り吹き飛ばされた九尾の狐が吼える。


「誰が何を言おうと我が神はあの方一人。半端者や逃亡者に何を言われようと我が信仰は揺らがずとも」

「それが前時代的だって言ってるんだよ、馬鹿狐めが!」


尻尾がそれぞれに伸びてきて攻撃を仕掛けてくるのを、背中の翼で軽く飛び上がると炎の息を吹きつけて牽制するF.D。巨大怪獣映画状態に為す術もないコンスケとユウスケに、さっちゃんがこっそりと声をかける。


「さ…ここはF.Dに任せて私達は行くよ」

「え…でも…」

「あいつなら問題ないぞヴォルペ。さぁ」


そう言いながら、戦い合う二体と自分達の間に濃い霧を発生させる。あっという間に姿が見えなくなる。待てという叫びと激しい音がするが、F.Dが止めているのだろう、こちらまで伸びてくる尻尾もない。手を引く、さっちゃんに連れられ、二人と一匹、そして派手な吟遊詩人と肩の妖精にモーニング姿のオールバックのB.Dはいつぞやの山へと向かって足を速めた。

やっと一人本来の姿に出来ました。ここまで来るの長かったです。2/14 0:58追記 B.Dの存在は忘れていたので慌てて書き入れました…。

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