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苺牛乳始めました

そんな初めの方のネタを拾ってみたり

「チャオ ヴォルピそしてS.D。私がリーフタウンまで護衛をしようじゃないか」

「え?え?」

「あ、M.D来てたの?そして僕はついでなのね…。僕はさっちゃんの代理もしないといけないし。是非二人をお願いしていいかな」

「護衛と言っても、あの舞台美術込み込みの馬車で護衛するって厳しいんじゃないんですか?」


突然現れたM.Dに驚くコンスケ、そして何と無く気配で察していたユウスケとS.Dは冷静に返答する。


「何…、私が本気を出せば虫を出し抜く位ファシーレ、簡単だ」


何やら自信たっぷりのM.Dに、笑顔で安心するS.Dと逆に不安げなユウスケ。とりあえず移動前にと、コンスケときちゅねは慌ててお茶菓子をパクつくのであった。




先日、舞台の着替えにも使った馬車が、城門の近くに出されている。荷物は随分と小奇麗にまとめられていて、二人と一匹が乗り込むのにはぎりぎりの隙間がある。M.Dは御者席に座り手綱の張り具合等を確かめている。I.Dが用意してくれた馬車に比べると耐久性は別段高そうには見えず、若干の不安を抱えながら二人と一匹は荷物の隙間に身体を滑り込ませた。M.Dが門の横にいたS.Dに視線で合図し、強く頷いたS.Dの号令で跳ね橋が降りる。馬車はゆっくりと外へと進んで行った。


「ユウスケさん…大丈夫なんですかね…」


舞台道具の詰まった中で、身体を押し込めて落ち着き所を見つけたコンスケが声をかける。言われたユウスケも不安は隠せない。ごそごそと動くのが落ち着いた頃、M.Dが背中越しに声をかける。


「この間の舞台でも見ただろうヴォルピ。私は霧を操作する事が出来る」


それが自分達をリーフタウンに運ぶのに、どんな利点があるのか思いつかない二人に、ファータがM.Dの肩から安心させる様に微笑む。


「つまり…こういう事だ」


そういった矢先、計ったかの様にツリータウンへ向かう街道の横合いから飛び出してくる甲虫。巧みな手綱捌きで回避するも、甲虫はピッタリと馬車に張り付く様に追い掛けてくる。


「うわあぁぁぁ。ちょっと!M.Dさんいきなり襲われてる!」

「ひぃぃぃ近い!近いですよ~!」

「案ずるなヴォルピ、行くぞ!」


ファータが指揮棒を華麗に繰り出し、荷台の中から演奏が始まる。舞台の上にいるかの様に、M.Dが朗々と台詞を叫ぶ。


『風よ吹け、嵐の如く引き裂けよ。雨よ降れ、全てを押し流しなぎ倒すが如く吹き荒れよ』


音楽と台詞と共に、馬車の後ろから霧が吹き荒れる。虫が霧に巻き込まれて姿が見えなくなる。馬に鞭を当て、馬車の速度が増す。


「無茶苦茶だー!」

「気持ち悪いです~」

「コン…」


叫ぶ荷台の彼らの声を無視し、暴走気味の速度で馬車がツリータウンへと疾走していった。




「ハァハァ…。別の意味で死ぬかと…思いました…」

「これが…パッシーオーネ、情熱だ!」

「うるせーしぬー」

「…コン…」


半日かかる距離をその半分程の時間で到達してしまい、乗客は全員瀕死である。馬もファータの演奏で勢いがついていたのか、止まった後は疲労困憊の様だ。荷台から文字通り二人と一匹が転がり落ちる


「きちゅね…リーフタウンまで…行けるか…」

「…コ…」

「私もすぐには無理ですよー」


きちゅねも首を振ってはっきりと否定する。休んでからでないと動くのは無理そうだ。


「凄い勢いで何か来たと思ったら狐ちゃん達か…。M.Dよー、俺の可愛い狐ちゃん達に何やらかしたんだ」

「F.D…お前のものじゃないぞ…俺らは…」


そのユウスケの反論を無視して二人を肩にひょいっと担ぐと、F.Dは温泉宿に入っていった。


「ちょっと!F.D何してるんだよ!」

「恥ずかしいですよ~」

「まだ当分動けなさそうだから休まそうと思ってな。M.Dお前も馬を休ませてる間に来いよ。茶でも出すぞー」


大広間の座布団が敷いてある宴会場に運ばれる二人。きちゅねもややふらつきながらついて来る。座布団を丸めて枕代わりにして二人を寝かせるF.D。


「いやー二人共軽いからお兄さん運ぶの楽だわー。苺牛乳でいいかい?やっと入荷したぜ!」

「何か随分優しいな…。どうしたんだF.D…。何も出ないぞ?」


元々気さくな雰囲気だったが、今日は随分と優しいので疑ってしまうユウスケ。


「この後の事が分かってるからな。まぁ今はゆっくりしてくれや」


そういってテキパキとそれぞれのお茶、二人と一匹には苺牛乳を用意する。ファータ用の小さなカップまであるのは中々気配りが出来ている。


「とりあえず、俺にも連絡来てるけど今の所ツリータウンは被害なしだ。村の人間には村は最悪見捨てていいから裏山に逃げる様に伝えてある。んで俺はついてくから」


熱いお茶をすすりながら、当たり前の様に呟くF.D。特に驚いていないM.Dは予想済みだった様だ。


「何でなんて聞くなよ、狐ちゃん。自分の場所は自分で守りたいし、ヒトコト言ってやらないといけない相手もいるしな」

「まぁ、お前ならそう言うと思ったよ。本来はもっとカルド…熱い男だからな」

「暑苦しいともいいそうだけどな…」


少し回復してきたユウスケが牛乳瓶のキャップを二人と一匹分はずしながら突っ込む。リーフタウンで何が待っているのか詳しくは分からないけれど、事は大きく動く。それを感じ、さらに車酔いとその予感に火照った身体には程好く冷えた牛乳はちょうどよかった。



コンスケ、きちゅねも大分回復してから、いつもの様に二人乗りでリーフタウンへ向かう。馬車組みは後から直ぐに追い掛けてくる手はずとなった。


「恐らく大丈夫だとは思うがアテンジオーネ、気をつけてくれたまえ」

「はーい。そっちの二人とファータさんも気をつけてくださいね。まー大丈夫そうですけど」


軽快な足取りで走り始めたきちゅね。相当回復した様だ。あっという間にツリータウンが見えなくなる。それを見計らった様にユウスケが静かに話し始めた。


「コンスケ…。誰が何と言おうと、どんな風にしてお前が生まれたとしても…お前は俺の妹だ。家族だ」

「…ユウスケさん」

「だから、心配するな。まだ俺も全部答えが出た訳じゃないけどな」


そう言って自分の後ろに座っているコンスケへ、チラッと振り向き微笑する。コンスケも、ふにゃっと笑うと、後はリーフタウンまで二人は無言だった。この間の馬車の時の様に気詰まりな気配ではなく、温かい空気をまといながらであったが。

結構勢いで書いてしまっています。完結までなるべく間を空けないで行けたらと思います。

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