『I.D』
面頬まで完全におろすと外からはほとんど顔が見えなくなります。
光が晴れて、俺とコンスケ、きちゅね、そして横には甲冑がいる。元の教会に戻れた様だ。これ中に人いるんかな。と思ったら話しかけてきた。
「身動きが取れぬ状態であった故、助けに馳せ散じて頂いた事大変あり難く思う」
そう言って膝をつく甲冑。膝をついてようやく目線が合う。
「我が名は[I.D]。故あって鎧脱ぐ事あたわずが為、非礼を許して頂きたく思う」
何でもいいけど、物凄く言い回しが面倒だぞこの人…。既にコンスケが口開けたまんまになっているし。
そのままI.Dが語ってくれた事を要約すると、突然大量の虫が街に大挙して押し寄せてきた。街の住人をこの教会の地下に避難させ、自らの能力で発生させた氷で入り口を塞ぎ、食い止めていたそうなのだが、気が付けば押し込まれてしまい、最後の手段と自分自身を氷にする事で無理矢理防いだそうだ。虫が去った為、元に戻ろうとした所、何かの力で防がれてしまい、どうしようもない所で人が来る気配がしたから声をかけたそうな。
ちなみに街の住人は冬眠している状態なので、特に問題なしと。便利だ。
「大体事情は理解しました。俺達はM.Dにここに門があると聞かされて来たのですが、あの門を触らせてもらってもいいですか?」
「いかようにも」
「イカ…?」
コンスケが完全にオーバーヒートしてきた。早く用事を済ませて休ませて貰おう。あんなに巨大に門を覆っていた氷は気配すらなく、簡単に近付く事が出来た。触ってみるも無反応。結局最後の一つが当りか…。と、I.Dが何やらゴソゴソと動いたかと思うと、俺に渡してきた。
「もう、既に他の物もお持ちやもしれませぬが、我が鱗であります姫」
「姫!?」
ちょっと、いつの間に姫認定されたんだ。そもそも男…ってこっちでは女か…ややこしい。
「我が主は神であり、王である方。されども、大恩あるお二方には、礼を義を尽したいと思います故…」
「分かった分かった。とりあえず喋り方をもう少し噛み砕いてくれないか。コンスケがもう会話についていけてないんだ」
「分かり申した。この位でよろしいでしょうか?」
あっさり崩してくれた。でも、何か固いな…。まぁいいや。これで鱗が二人合わせて7枚。門を触ったりしたのは6個。足りない。
「マスター…、B.Dさんのは触ってないですね」
「そうだな。そろそろ色々話してもらえるかもしれない。ツリータウンに帰るか」
「では、私の方で馬車を用意しましょう。明日には街の機能も復帰するでしょう。今日は宿を用意します故、お休みくださいませ」
★★★
いち早く目覚めた街の人によって、用意された宿屋。ちなみに街の住人は、他の街以上にケモナーさんが多いらしい。みんなして、もふもふまふまふだ。用意が大変そうだったので、ダブルの部屋で一部屋を貰い、お湯はあるという事なので、交互に手早く身体を拭く。
「本当は温泉入る予定だったんですけどねー」
「まぁ仕方ないだろう。何か予想外の自体ばかりだったなー」
二人して寝巻き…俺が持ってきていたジャージに着替えてベッドへ。きちゅねはコンスケのベッドでもう寝てしまっている。
「ふぅ。何だか…あっという間でしたね」
「ん…? 何がだ」
「門を見て回って、色んな所を旅して…。ユウスケさんの世界にも行っちゃいましたしね」
「そうだな…。あーあっちの世界の食い物も、少し食べさせればよかったなぁ…」
稲荷寿司とか、絶対好きだろうしな…。酢があればこっちでも作れるか…そもそも米があるのか…。
「ユウスケさん何美味しそうな物を考えてるんですか! 駄目ですよーずるいー」
「今度作ってやろうっていうアレだよ。あっちの世界にお前は行けないんだしな…」
「………」
しまった…。これは言っちゃまずかった…。全部片付いたら…俺もどうなるんだろう…。そしてこの世界も。ただのゲームとして販売されて一般プレイヤーが来るのだろうか…。
「そしたら、全部片付いたらお別れですかね…」
それ以上、言葉が繋がらず俺達は黙って眠りについた…。
書き溜めた分がここで打ち止めです。最終章できるだけ早く書き上げます。