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『アポカリッセ ディ ジョバンニ』

何と4ヶ月も日があいてしまいました…。待って下さった皆様申し訳ないです。ずっと舞台の部分を何度も手直しばしておりました。

プローズィト:お疲れ様、スペッタトーレ:観客です。一応そのまま何となくでも分かる感じで書いてるつもりではありまする…。

舞台袖(お客さんから見えない舞台の横の部分)でファータがどこからか取り出した指揮棒を振ると、楽器から静かに音楽が流れ始めた。ざわついていた村人達…お客が静かになっていく。そしてM.Dが目を閉じ何かを呟くと霧が発生し舞台を、そして辺りを覆ってゆく。



「世界は…思想が違うだけで分かれてしまうのでしょうか…」


霧の中から豪奢なドレスを着た姫が現れ、胸の前で祈るように手を組み、静かに言葉を紡いでいく。


「もう…分かり合う事はないのでしょうか…」

「言葉を尽くし、幾星霜互いの言葉を出し合っても同期しない我等が想い。なればこそ、力に拠って攻めて来し物共を我等は許せず…」


低く抑えた声の少女の声が唱和する様に言葉を続ける。


「だからこそ…、イケニエとなってもらうぞ…姫よ!」


その言葉と共に霧がさらに濃くなり、一気に姫を覆い尽くす。


「きゃぁぁぁぁ…誰か…誰か助け…」


そして霧が晴れ、舞台には誰もいなくなっていた…。と、そこに先ほどの少女の声が聞こえてくる。


「ふふふ…ふははははっ!ふはふはふっはぁー!神に反逆したとして、封印されていた私が千年の月日を経て遂に地上に出る事が出来たぞー。大変だったんだぞー!暇で暇で…。さぁ行け!我が力を与えし獣よ!」


その不敵な声と共に舞台に頭が10個の獣が舞台袖からのっそりと現れる。龍の様な頭らしき物がうごめき、何やら足を踏むな、前が見えないぞという声も、こそこそとその中から聞こえてくる。よく出来てるなぁと観客席からも声が上がる。


と、獣がバランスを崩して舞台から落ちそうになり、観客席から悲鳴が上がる。自分のおかげで盛り上がっていると思った少女の声がさらにテンションを上げつつ言葉を続ける。


「はっはっはっ!怯え惑うがいい~。いやっふー」

「マテー!」


そこに金属出来た重鎧をがちゃがちゃと鳴らし騎士が現れた。来るだけで既に息も絶え絶えだ。


「誰だ!」

「獣に悪事を任せて悪行三昧。その実態は魔王!魔王だよね?え~っとあれだ、貴様らに名乗る名前はない。許さにゃい!」

「うむぅ~ウルサイ!ウルサイ!台詞を噛んだヤツに言われたくないわ。行け獣!」

「ぐわ~ぎょわー」


襲い掛かる獣に対抗する為、背中にさしてあった剣を、重いらしく物凄くゆっくりと引き抜いた騎士。よいしょーと声を掛けながら、剣の重量に思いっきり振り回されながら振り下ろす。統率が全く取れないであっちこっちに向かう獣の頭。ぎゃおーという鳴き声らしき声の中にたまに演技ではなく本当にしっかりと剣が当たってしまい、痛い!や、危ないわ!等の声が聞こえつつ順調に頭は倒されていく。完全に動かなくなった頭は他の部分に無理矢理引きずられていく。どうにかこうにか頭を幾つか倒すも、騎士は劣勢だ。遂に膝をついてしまった。


「はっはっは。そんなものか~」

「ぐぅぅ」

「負けてはいけませんわ騎士様!」


舞台袖より、木に磔にされた姫が運ばれて来ながら声を掛ける。


「姫!」

「さぁ!民の力…会場の皆様!我等が騎士様に応援の声を!せーの」


反応が小さいながらも、小さい子供達ががんばれーと声をかける。


「声が小さいぞー!そんなじゃ騎士様がやられちゃうぞー。もう一回いくよ、せーの!」


先ほどよりも随分と増えた応援の声に騎士は


「うううう…そいやぁぁ!民の力で勇気千倍!今こそ滅びよ獣よ!」

「はい、拍手~!」


応援の声と、観客からの温かい拍手で騎士は一気に力を取り戻し、あっという間に獣を打ち倒す。


「きゅう~、参ったーがおー」


倒れ伏す獣。


「民の声ある限り、私は…私達は負けるわけにはいかない!姫よ今助けますぞ!」

「ありがとうございます騎士様!」


結び目が固い…、いいから早く解いてくれコンスケだのと、ごそごそとやっている間に先ほどの少女、魔王の声が聞こえてくる。


「ぐぬぬぬぬ…。仕方ない。私自らが相手をしてやろうではないか!滅びるがいい!」


背中に蝙蝠の様な羽が生え、黒い服を着た小さい女の子が舞台袖から颯爽と現れた。


「ふふふ…。私が、私こそが、魔王だ!!」


観客席から可愛い~と声が上がり、思いっきりにやける魔王。その間にどうにか姫の縄をほどき、騎士と姫は魔王に相対する。


「さぁ来い魔王!」

「いっくぞー!とぉーう」


騎士に一気に走りよってパンチを繰り出す魔王。本気で鎧に当ててしまい、拳を抑えうずくまり掛ける。当てなくていいんだよと、こっそりと姫が呟く。


「あうう…。よくもやったな騎士め!くらえー」


腕をぐるぐる回しながら再度突撃する魔王。しかし、頭を騎士にがしっと抑えられて届かない。


「うむ。封印だ」


姫が用意した大きな麻袋をそのまま被せられる魔王。


「ぎにゃー」

「また千年、闇の底でたゆたうがいい」


獣と一緒に舞台真ん中に集められ、姫と騎士が左右から祈りを捧げるとそこだけ霧が濃くなり、霧が晴れるとそこにはもう何もなくなっていた。


そして騎士と姫は手を取り合い…観客へ一礼をし…舞台から去っていった。少し間をおいて拍手が客席より聞こえてきたのだった。



☆☆☆



「うわわわわ終わりましたよ~。私大丈夫でした!?」

「初めてにしては上出来だろう。お客さんが喜んでた様だしアリアリ」


結構失敗…というか途中から何かアドリブ多すぎやしないかと思ったけど、まぁいいかな。しかし、魔王役の子とか打ち合わせなしで舞台上の本番一発合わせとか…こんな無茶知らんぞ…。まぁヒーローショーではたまにあったけども。


「プローズィト、ヴォルピ!」

「お疲れ様です!」


M.Dさんが控え室になっている荷馬車に入ってきた。音楽はまだ続いているのでファータさんは頑張ってるらしい。


「お客様の送り出しというか、また挨拶行った方がいいです?」

「え?私は早く鎧脱ぎたいですよー」


コンスケが兜の面頬を上げて顔を覗かせつつ文句を言う。さすがにこれは脱がせないと挨拶も行けんだろうと、鎧を脱がせていたら何故か代わりにM.Dさんが当然の様に鎖帷子を出してきて装着されていく。うむ、頑張れコンスケ。俺もそろそろドレスを脱ぎたいが、M.Dさんが出て行ってくれないとさすがにこう…肌着は見せたくないな。


そうやって俺がうにゃうにゃしていると、鎖帷子に着替えさせられたコンスケが舞台に連れて行かれた。俺もドレスから着替えて適当な格好で行くかなと服に手をかけた所で、出て行ったはずのM.Dさんが戻ってきた。


「おっと、覗きですかM.Dさん」

「いや忠告だヴォルペ…いや異界人」


思わず驚きで手が止まり、声も出ない俺に、腕を組み常にはない静かな口調で語りかけてくるM.Dさん。


「気をつけろ。我等が王も君達と同じ、二人で一人。そして半身…半神は未だ目覚めずだ。誰がどう敵に回るかわからない。心せよ狐の娘達」


普通に喋れるんじゃん…この人。しかし、こっちの都合は全部知ってるのか。そしてどうやら、コンスケも常に一緒にいた方がいいらしい。戦闘になった時は危険過ぎる気がするが…前にワームとの戦いでも一応勝ってるらしいからな。


「残る封印は僅かだ…。そしてこれは私の鱗だ」


苔むした様な色に白みがかった鱗を渡される。これで計6枚か。門はまだ5個しか触ってないはずだ。


「門は私の場合はこの荷馬車そのものになっている。案ずる事はない」

「あ、はい」

「君達が会ってない最後の一人は我々も久しく会っていないからな…。居所が掴めん。情報があれば何かしらの手段で伝えよう」


何でこの人は特に俺らの味方なんだ。利益はなさそうだけれども。


「この世界自体が君らの手に掛かっているのだよ。今日の舞台…あれは、ほぼ過去に実際にあった事だ。…喋りすぎた様だ…ここまでだヴォルペ」


人の気配が近付き、Dの面々が顔を出す。


「狐ちゃん!さっさと舞台に顔見せなよー!お客さん待ってるぜ」

「僕達も頑張ったんだよー、あの獣役」

「…痛かった…でも色々癖になる…ねぇ?お兄様」

「なんで俺までやる事に…一応まとめ役なんだぞ…」

「まぁ、楽しめたのならいいんじゃないのかしら?」


わいわいがやがやと、一気に人が集まって荷馬車がごちゃっとする。M.Dさんがさっきの話は内緒だという感じの目線をくれる。こちらも勿論、話すつもりはない。


「ちょっとー!皆さんお客さん待ってますよー!早く来てー」


舞台からコンスケの声が聞こえてくる。俺もうドレスそのままでいいや、助けに行くかね我が妹、我が半身を。


「さぁさ皆さん、さっさか行きますよ」

「ヴォルペの言うとおりだ!行こう我が同輩達!スペッタトーレが待っている!!」


いつもの調子に戻ってテンション高く舞台へと颯爽と進むM.Dさん、S.Dにこづかれながら歩くF.D。ぶつぶつと沈むB.Dさんを宥めるC.D。後ろからそれを眺めて楽しんでいるH.D。あぁ、こいつらのいるこの世界…俺達の手にかかってるというならば、つぶしたくはないな、勿論。


今はまだ深い意味なんてわからないが、とにかく歩いて行こう。幕はまだ閉まらないのだから。俺はそんな事を思いつつ、舞台でお客さんにもみくちゃにされているコンスケの所に走って行った。

これで第六章終わりです。第七、八章で終わりを予定していますが、ユウスケさんの過去(現実世界の部分)を外伝で挟むかもしれません。ちなみに実際のヒーローショーはここまでグダグダじゃないはず…ですよ?

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