ただいま私の家
なんか小説情報を少し変えたらお客様が増えたので、ちょっと気分が上がって続きを書いてしまった現金な玉藻です。
ゴトゴトと一定のリズムで馬車が揺れる。きちゅねさんを抱えたユウスケさんが馬車の真ん中を走っている通路を挟んで、反対側の座席で眠りこけている。結局そこまでのんびり出来たワケじゃないし、疲れたんだろうな。そのまま寝かせといてあげよ。旅装のマントだけじゃちょっと眠るには寒いからユウスケさんの隣に行こうかな。私もうつらうつらしつつ、昨日までの事を思い出していた。
☆
宴からの翌日。帰り支度をしていた私達を見て、まだ傷も癒えてないしゆっくりしていけとS.Dやジークさんから城の滞在を勧められもう一日、もう一日と気付けば三日も過ごしてしまった。一応親父さん達に状況を手紙で送ってあるけど、特にS.Dさんが強く勧めるから無理矢理帰るのもあれかなと。
働かなくてもご飯が出るのはいいけれど、何か動いてないと気が済まないので厨房やメイドさんのお手伝いをしようかと思ったら『お客様だから』とやんわりと断られた。しょうがないのでユウスケさんにちょっと稽古をつけてもらったりした。それを見ていた守備隊の皆さんも、我も我もと殺到してジークさんに怒られてた。確かにユウスケさんは教え方上手いし、みんな上達してた。ユウスケさん曰く『刀の殺陣』だから、ちょっと実戦向けじゃないと笑っていたけど周りの守備隊の皆さんは違う剣の振り方でみんな興味深々だったみたい。今度は『ひぃろぅしょう』の動きでも教えるかなとか言ってた。
後はS.Dさんと一緒にユウスケさんも含めてメイドさん達に着せ替え人形にされてたり、お城の図書室で本を読んだりしていた。何で『ねくろのみこん』とか『おれんじぺーじ』、『ごるごさぁてぃぃん』が置いてあるんだこの図書室は!とユウスケさんが叫んでたけど有名なのかな?
そんな感じで気が付くと、もう一日、もう一日と滞在が伸びて三日経った時点で流石に帰ろうという事になった。
守備隊の皆さんは仕事にならないからとジークさんに見送りを禁止させられてたけど、窓とかから手を振って見送ってくれていた。オッテルさんはユウスケさんと何か友情的なものが芽生えたらしく、握手しながら泣いていた。メイドさん達にもお世話になったな~。尻尾や耳を随分もふもふされた。狐族はやっぱり珍しいみたい。それにしても、ああいうメイドさんの清楚な振る舞いとか私出来るのかなぁ。勉強してみよ。
「それじゃお世話になりました」
「それは俺達の台詞だ。悪いな送ってけなくて」
「まだこっちも落ち着いてないし、隊長がいなくちゃ駄目ですよ~」
「コーン」
「またねユウスケ、コンスケ、きちゅねさん達」
「落ち着いたらお店にも食べに来てくれなー」
皆さんに見送られて馬車でまたツリータウンに向かい、リーフタウンへは二人だからきちゅねさんに乗って帰る予定。街道の整備はまだ完了してなくて、板とかが抉れた道の上に渡してあって馬車が頑張って通過していた。
☆
あくびしながらそんな城での事を思い出して、随分と沢山の人と毎日いたのが、帰りは二人と一匹。いつものメンバーなのになんだか寂しいなと思ってたらユウスケさんが起きたのか声を掛けてきた。
「ふぁぁぁ。何か…長旅だったなぁ」
「そうですねー」
「色々あったけど、ありがとなコンスケ」
「何ですか改まって?」
「いや…今回は本当に死んでたかもしれないし…。いつも妹分の様なつもりでいたけど、成長してたんだな…ってさ」
「ふふーちゃんと成長してますよぅ。私だって」
家族がいなくなるかもしれない恐怖…というのを味わってしまった私は、確かに前とは違うかもしれない。恐怖で成長というのもなんだか嫌だけど、少し何かが変わった気はする。
「専守防衛…自衛官の考え方だけど、守る為の力。やっぱり必要だよな…」
独り言の様にユウスケさんが呟く。
「せんしゅぼ-えい?」
「力をただ闇雲に身に付けてもしょうがないけど、守る為、自衛の力はある程度は必要だなって事さ。簡単に言うと」
「うーん。よく分からないですけど、やられる前にやれ?的な?」
「いや逆だな。やられてからやれだ。難しいんだけどね」
「うぅむぅ~」
深く考えると頭が焦げそうなので、何となくで理解した。確かに私はあの時力が欲しいと思った。でも、必要以上の力は欲しくないな。というかムキムキな私見たくないし…。頭を抱える私の髪の毛と耳をぐしぐしと近付いたユウスケさんが撫でながら言葉が続く。
「とにかく、久しぶりに親父さんのご飯食べてゆっくりしたいな。ドタバタが続いてたから通常運転に戻さないと」
「あいー」
「きちゅね抱えてみんなで寝ようぜ。まだ結構あるだろ」
「はい」
二人できちゅねさんを挟んで、座る。御者のおじさんが優しい視線をくれてた気がするけど、直ぐ意識が飛んでいった。
ツリータウンに到着し、御者のおじさんにお礼を言って別れる。結局行きと同じ人だったみたい。全然喋ったりしなかったな~。F.Dさんの所にも顔出そうと思ったけど、ユウスケさんが『せくはら』されるから嫌だって言って、そのまま二人できちゅねさんに乗って大熊亭へ帰った。一体何をされたんだろう…。
「ただいま戻りました」
「ただいまーです」
お昼の営業が終わった後ののんびりした時間に帰った私達。あぁー帰って来たって感じがする。翌日の仕込みをしていた親父さんが手を拭きながら厨房から出てきて出迎えてくれた。
「お帰り二人共。お腹は空いてないか?怪我はしてないか?」
「怪我は大丈夫です~。ご飯はいつでも歓迎ですよー」
「すいません、随分と店開けてしまって…」
「いいってことよ。コンちゃんとユウちゃんがいなくてお客さんも少なかったから。うちのやつと二人でのんびりで回ったしな」
「それはいいんだか、悪いんだか~」
「とりあえず荷物置いてくるわ、コンスケ荷物頂戴。お前は手を洗ってうがいしてご飯の用意なー」
「はいはーい」
ユウスケさんが二階に荷物を置きに行っている間に、テーブルにささっと食器を用意する。
「親父さん何か手伝いますか?」
「ん?大丈夫だよ。温めるだけだし。今日はミネストローネとサラダとパンだけどいいかな?」
「十分です~」
「お城で美味いもの食って来た二人の口に合うかな?」
「私にはここの味がお袋の味ですよ」
「ははは、親父の味だがな。よし、持っててくれ」
「はーい」
テーブルの上に料理を用意して、まだユウスケさんが戻って来ないのを見計らって、洗い物している親父さんを後ろからハグする。
「えいっ!」
「おやおや、どうしたコンちゃん」
「ちょっと色々あったので、改めてただいまです」
「うん、お帰りなさい」
そういってそのまま振り返らないで洗い物をする親父さん。うん、血は繋がってないけどやっぱり親父さんは私の家族だ。おかみさんにも後でハグしよ。ユウスケさんに見られると子供ぽいとか言われそうだから何か恥ずかしいんだよね。でも…ここが私の家だ。帰ってくる場所だ。
短いですが、ちょっと書きたいテーマではありました。そろそろ次の『○.D』さんを登場させる予定です。前回の話でもポロッと誰かさんが言ってましたが7人いますDの名前を持つ人達。なので後二人出てくる予定です。