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王宮ナイルシックス

大変遅くなりました。資料集めに時間かかってしまいました。

続きです。

王宮…ナイルシックス。

山の稜線に沿って、崖の上に作られた城と、その麓に広がる城下町だ。


立派な城壁が町の周りを囲い、がっしりとした作りの門の前には門番が二人気楽に立っている。乗合馬車が凄い勢いで走って来るまでだったけれど…。


「止まれ! 止まれ!」

「何事だ!」


土煙りを上げ急角度で停止した馬車に、正門を通ろうとしていた通行人も何事かと呆気に取られて見ている。槍を構えた門番二人と通行人達が見守る中、馬車の扉がゆっくりと開きジークさんが颯爽と飛び出し、二人と一匹はコロコロキューと地面に転がった。


「隊長! お帰りなさいませ。激しいご帰還で」

「旧交を温めてくるからのんびりしてくる…とのことでしたが?」

「まぁその話は今度な。悪いが、火急の事態だ。街道に謎の化け物が現れたらしい。守備隊を緊急招集する。馬を貸せ」


その内容に、一瞬ほっとした二人の顔が引き締まる。


「了解しました!」

「お連れの方々は?」

「あぁ、俺の客だ。後から王宮へ来させといてくれ。…と、いうわけだから嬢ちゃん達はのんびり王宮へ来てくれや。オイおっさん。ありがとな」


そういって地面でのびてる俺達の返事を待たずに、御者のおじさんに結構な量のお金を渡すとジークさんは用意された馬に乗って土煙を上げながら城へと向かって行った。




★★★




「いや~きちゅねさん以上でしたね」

「ジェットコースター越えてたわ…。馬もよく持ったな」

「ココン…」


城まで送ろうかという御者のおじさんの言葉を丁寧に断り、俺達は城に向かって歩いていた。急ぎの件ではあるけれど、お言葉に甘えて少しのんびりさせてもらおう。小腹も空いたからちょっとつまんでから城行きたいし。


「馬も相当疲れ果ててたからな…。うちらは歩けばいいしな」

「ですよねー。あっあの屋台なんですかね~」

「串焼きかな。あっちにはプティングも売ってるなぁ。どっちも買うか」

「はいです!!」

「コ~ン」


テクテクと城までの道の両脇に出ている屋台を冷やかしながら、増えていく食べ物、減っていく財布の中身。コンスケも結構食いしんぼうだ。往来も活気もリーフタウンに比べれば相当な物だ。それでも平日の繁華街位な感じ。この位の人の多さは落ち着く。道行く人、商売している顔を見ると猫耳・犬耳と獣族の人も結構いる。狐はうちらだけみたいだけど。




そんなこんなで城門に到達。既にジークさんから話が通っていたのですんなりと中へ。受付の兵がいた門を潜り、階段を上がって城の中へ。崖をどんどこ登っていく感じだ。入ってすぐのロビーの様な場所で待つようにと言われ、二人と一匹で設置してあるソファに座って待つ。ドタバタとすぐ下の階(ここから行くと地下扱い?)で守備隊の人達が武装の用意をしているのか、鎧や剣がガチャガチャ鳴る金属の音が聞こえてくる。周りを見渡してみると、壁にかかってるタペストリーや置き物も全てドラゴンがモチーフの様だ。西洋の竜もあれば、東洋の龍もあるし随分とドラゴンが好きな王様なんだなー。そうしてきょろきょろと周りを観察していると、ロビーの奥から本の塊が歩いて来た。フラフラと左右に揺れながらこっちに向かってくる。


「嫌な予感がします…」

「奇遇だな…。俺も凄いするよ…」


案の定、歩く本はもう限界らしく、倒れかける。すかさず俺とコンスケで両側から支える。ってこれ辞書並みの重さじゃないか…。予想外の重さでバランスが崩れる。そして三人まとめて本の山に潰される…。ん? 三人?


「イタタタ…。ごめんね~僕のせいで…」

「こっちは大丈夫。コンスケ無事か?」

「どうにかです…。尻尾踏まないで~!」

「あ~ごめんね! よいしょっと」

「はぅっ! 今度は俺の尻尾が!」

「あー…」


謝ったり踏まれたりしながらどうにか這いずり出た俺。ひどい目に合ったわ。

二人に手を貸して、全員救出完了。


「二人とも大丈夫かー?」

「はいです…」

「僕は平気だよー」


そう言って、服の裾を払いながら出てきた髪の毛の短い活発な感じの子は、改めて握手を求めながら自己紹介してくれた。


「本当にごめんね二人とも。って、さっきから謝ってばっかりだね。僕S.Dって言うんだ。君達がジークの言ってた狐さん達だよね?」

「そうだよ」

「よろしくですー」

「コココン」

「なんかドタバタしてるし、とりあえず僕の部屋に来てもらってもいいかな」


結局三人して崩れた本を手分けして運び、城の5階へ。途中で軽く説明してくれたけど、1階がロビー兼謁見の間、そして食事も出来る大広間。2階がメイドさん達の部屋他。地下が守備隊の詰め所と訓練所。3階は王様の部屋、4階が礼拝堂で5階がS.Dの部屋や客間等があるそうな。火を扱うキッチンは別の棟になっていて、そっちの方には庭の一部が果樹園だったり豚や鶏を飼ってたりするとか。機能的ですなー。


「運んでもらってありがとねー。ここが僕の部屋だよ」


そう言って案内された部屋は、城の外側に面していて窓からは城下町が一望出来る中々いい部屋だった。本が本棚に大量に入っていて、入らない分は床に山積みになっている。足の踏み場はどうにか。窓際には望遠鏡が空に向かって置いてある。星を見るのか。


「ちょっと調べ物が終わらなくてねー。そっちのソファーに掛けてよ」


二人と一匹…は既に本が鎮座していて座れないのできちゅねはソファーなしだ。ごめんなきちゅね。


「なんかジークから聞いたんだけど、調べたい物があるって?」

「あぁ、門の事を占い師に訪ねたかったんだけど、調べるまでもないかな」


特に隠しもしてないのか、あっさりと答えるS.D。


「さぁねー、僕の管轄は特殊だからね。他の人達の分までは教えてもらってないし。みんながみんなF.Dみたいに適当でもないからさー。気になるなら運勢と合わせて占いという事で軽く伝えようか?」

「いいんですかー?」

「まぁその為にここの城にいるんだしね。うちらの王様もそういう方法なら怒らないと思うよ」


運勢とかは、とりあえず俺は別に占ってもらわなくてもいいかなと思ったら、コンスケが食いついてる。


「しかし、随分と協力的だな。いいのか?」

「こっちもやって欲しい事もあるしね」

「やって欲しい事?」

「うん。モンスター退治。」

「私達で!?」

「守備隊がやるから俺達の出番なんてないだろう?」


おいおい、まさか俺達で謎の巨大生物を倒せと…。プロにお任せしておけば大丈夫だと思うのだが。


「いやー多分厳しいんじゃないかな。報告聞いた感じだと、僕達も知らないモノみたいだし。イレギュラーにはイレギュラーをね」

「で…俺らと」


そうだな、まさしくイレギュラーの塊過ぎる二人&一匹だし。


「私戦えないですよー」

「まぁ何かしら役に立つと思うから、行くだけ行ってみてよ」

「うーん。コンスケはきちゅねに乗って極力離れて見てるだなー」

「…キンチョーですね」

「帰ってきたら占ってあげるからさ」



★★★




「あぁあ!? ついてくるだぁぁ? お前さん達がか!?」

「らしいですよ…?」


地下の守備隊の詰め所でジークさんに俺達がついて行くこと伝えると、直ぐ様呆れた声が返ってきた。まぁこういう反応にもなるよな。


「王様の命でもあるって言ったら逆らえないよね? ジーク」

「S.Dよぉ…。幾ら気まぐれな王様だからってそんな命令、俺は聞いてねぇぞ」

「うん、さっき僕が確認してきたんだもん」

「全く…そういうのはきちんと本人に言ってくれよなぁ。で、嬢ちゃん達はどの程度やれるんだ?」

「私は初心者です!」

「俺はそこそこ…ですよ」

「ほぅ…垂れ目の嬢ちゃんはともかく、言ってくれるじゃねぇか。おい! 誰か立ち合ってみろ!」


ドヤドヤと人が集まってくる。あぁ男臭いし、金属の臭いがキツイ。コンスケも顔は我慢してるけど、尻尾がひくついてる。


「隊長…俺相手しますよ…」

「おぉ、オッテルやってくれるか」

「任せて下さい…」


随分と声の低いごついお兄ちゃんが出てきた。うちの父親よりは体格小さいけど、筋肉がミチミチに詰まった身体してる。動きは遅そうかな。


「嬢ちゃん…。加減しないぜ…」

「望むところですよ」


訓練場に移動し、守備隊の面々・コンスケ・きちゅね・S.Dが見守る中、木剣をお互い構える。防具は無し。オッテルさんは、西洋剣らしい肩の横辺りに構えた基本の横構え。俺は斜め前方に剣を突き出す感じの青眼の構え。


「勝負は俺が判定する。有効なダメージと認めたらそこで終える。手早く頼むぜ」

「はい」

「了解…」

「よし始め!!」

「でぇぁぁぁぁ!」


容赦なく、本気で振り下ろしてくるオッテルさん。だが西洋剣の重い振りだから力強いけどやや遅い。剣先だけを合わせ、直ぐにそのまま剣を傾けていなす。まともに受けたら腕がいかれるな。左下を向いた剣先をそのままにオッテルさんの右側面を抜けて、振り向き様に背中から胴斬り。オッテルさんはこれを気配だけで察し、いつの間にか後ろ手に回した剣で受ける…速い。さらに腕の力だけでかち上げてきた。流石に距離を取る。


「中々早いですね」

「嬢ちゃんも…面白い技を使うな…。だが…!」


とーんとーんとリズムを取る様に。剣で自分の肩を叩いていたかと思うと、また一気に振り下ろしてきた。


「だから…西洋の技とは違うんですよ!」


振り下ろされた剣を右の脇に構えていた剣で下側から擦り合わせてそらしながら、オッテルさんの喉元まで一気に突き上げる。これは決まった。こういう攻撃は予想外だったのか、完全に対応が遅れたオッテルさんは無理矢理顔を逸らしたけれど、顎を剣先が掠めその勢いで後ろに倒れた。追い打ちで倒れた所に剣を突きつける。


「参った…」

「勝負あり。そこまで!」

「うわぁー! ユウスケさん勝ちましたね」

「釣り目の嬢ちゃんやるじゃねぇか。見たこともない剣術使うな」

「この細腕じゃ、こういう技か、レイピア式でないときついですからね」


思わず喜び勇んで飛んで来たコンスケ、横から声をかけるジークさん。そして一気に寄ってくる守備隊の皆さん…にあっと言う間に俺はもみくちゃにされたのだった。

この章はもう一話位で終われるかな?って感じです。


西洋剣術のバスタードソードの場合、叩き潰す事が前提。東洋剣術の刀の場合はいなして斬るが前提みたいですね。

侍と騎士が戦ったら、侍が勝つだろうという話もあるそうです。

確かに昔の侍なら、鎧の隙間とかしっかり狙って勝てそうです。

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