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胃袋に愛情つめて

深夜に読むと、お腹に優しくない描写がありますので(食欲的な意味で)ご注意ください。

2013/04/25修正

「これは!?」

「あら可愛いじゃないですか」


親父さんから渡されたのは二人分のメイド服だ。ヘッドドレスまで付いている。今日は親父さん気合い入ってるなぁ。というか、こんなの大熊亭に置いてあったのか…?


「コンスケ着方分かるか?」

「えっと…そのまま着ればいいんじゃないですか?」

「パニエ…えーと、この骨組みたいなのを下着の上に装着してから、スカート履けばいいよ。上着の方は上から着て背中側を閉める。ボタンタイプだから留めるの難しかったら言ってくれれば後ろから留めてやるから。」

「は~い。詳しいですね。これもお姉ちゃんの影響ですか?」

「え? 自分で着てたから」

「え! 気持ち悪い…」

「いやいやいや待て待て! 舞台の仕事で着た事あるだけだよ! 普段は着てないよ」

「…へぇ…そぅ…そうなんだ…」

「お前俺の事なんだと思ってんだよ…」

「ステキナオネエチャンデスヨ」

「お前なぁ…。いいからさっさと着替えてこい」

「はーい」


着替えた後も、こんな調子でなんやかんやと、きゃいきゃい言い合いしながら用意を進め、あっという間に時間が過ぎ、ランプに火を入れた頃にお客さんが到着した。




「いらっしゃいませ~!」

「いらっしゃいませ」

「これはこれは…こんな可愛いメイドに案内されるとはな…」

「ありがとうございます」

「あぁ、案内してくれや嬢ちゃん達」

「はーい。こちらへどうぞ~」


コンスケが先導し、俺が男の人の後ろからついて行く。俺の目線よりも少し上位の身長だから…あっちの俺と同じ位か。肩甲骨の辺りが盛り上がったいい筋肉をしてる。それに軽装ながらも、きちんと鎖帷子を身に付け、手に持った剣も重そうなバスタードソードなのに歩き方にブレも隙もない。

かなり出来るなこの人。西洋剣術も知り合いがモーションでやってたけど、ガチで着こむと半端ない重量だからな。鎖帷子から音がしないから銀とか使ってるのかな。擦れると痛いらしいけど…。


「おいおいそんなに背中に熱い視線送らないでくれよ。火傷しちまらぁ」

「っと、失礼しました。この辺りでは中々見ないもので」

「これだって使う機会は大してないけど一応形だよお嬢ちゃん。尻尾そんなに逆立てなくていいぜ。別に取って食いやしねぇよ」


こちらも見ないで気配で気付くとは恐ろしい。いつの間にか俺の身体も緊張してたのか…。やはり侮れないな。敵に回したくはない。手合わせはしてみたいなとは思うけど。しかし緊張なのか、本能的な(女の子の)身の危険の緊張なのか判断に困る…。


「こちらです~」

「ありがとう」

「はい~」


コンスケは何も変わらずいつも通りだ。


「親父さん案内しましたよー」

「あいよ。料理全部出したら俺も行くから、どしどし出してくれ」

「はーい」




前菜の各種ハーブのサラダとジャガ芋のポタージュから始まり、ポルチーニのクリームパスタ、地鶏のハーブ包み、アクアパッツァ(魚のワイン煮込み料理)、ミートパイ、これらを出し続けている間にも消費されまくっているパンとワインの補充。皿もどんどこ空いて行く。この人…一人で団体の宴会並みに食ってる…。


そして二週目…。


今度は南瓜のポタージュに、ラム肉のトマトソースペンネ(普通のパスタよりもマカロニ風なパスタ)、豪快なリブステーキ、白身魚のムニエル、ポルチーニをふんだんに使ったリゾット、ティラミスで休憩。


そして三週目!?


いやいやいやいや、おかしいって人間じゃねぇ!と思ったら流石に打ち止めらしく、出しきる前に親父さんがやってきた。


「相変わらず凄まじい量食うなジーク」

「お前も相変わらずの腕だなフェリング」

「お互い変わらん」

「の様だな」


二人はニヤリと笑って乾杯した。これが通常の量ですか…。あり得ん。ランチの三日分位の量のパン焼いた気がするぞ…。コンスケも途中から顔が笑顔から真顔になってたし。いや…コンスケさんそんな俺を同類みたいな目で見てもこんなに食えませんよ…?


「二人とも後は片付けだけだからもう大丈夫だよ。ありがとう」

「洗い物やっときますよ。凄い量だし」

「そうかい? 悪いね」

「気が効くなぁ嬢ちゃん。どっちか一人残ってお酌してくれてもいいんだぜ」

「おいおい、うちの看板娘に手出すんじゃねぇぞ」

「わ~ってるって。そんなに軽い男に見えるかってんだ」

「おぉ、軽すぎて浮いて見えるぜ」

「酔ってんじゃねぇのか?」

「それはお前だ」

「ちげぇねぇ」


二人してガハガハと豪快に笑う。仲いいなぁ。そしてジークさんノリ軽いなぁ。





結局コンスケと二人して洗い物を終わらせる事にした。しかし山の様だ…。


「あんなに食べられる人がいるもんなんですね」

「全くだよ。有り得ない量だぞ…。確かにしっかりと給仕してないと追い付かないわな…」

「普段どうしてるんでしょうねー」

「考えたくもないな…」


簡単な汚れは落としてから、石鹸を泡立てて洗っていく。洗ったものは水を切ってからコンスケが布巾で拭いていく。


「キノコ美味しそうだったな」

「うん、よかったです」

「苦労した甲斐があったよ。あれ俺らの分ってあるのかな…」

「さっきキッチンの端のざるに入れて置いてありましたよ」

「おぉ、楽しみだ~」


汚れがひどいのは漬け置きして明日洗うか。


「コンスケそっちは終わった?」

「これで…よいしょっと。終わりですよー」

「よし上がるか」

「はーい」


さっと火の周りを確認し、キッチンから出る。


「じゃあ親父さん俺ら上がりますね~って寝てるし…」

「だいぶ飲んだからな。まぁ俺程じゃねぇが」

「普段飲んでる姿見ないですからね」

「流石に一人じゃつまらんから、少し酒付き合ってくれや」

「少し位でしたら」

「お酒~♪」


あ…コンスケ酒大丈夫かな。まぁここでなら潰れてもすぐ連れてけるか。




新しくグラスを持ってきて三人分注ぐ。コンスケのは少なめにしておこう。


「それ少なめのはユウスケさんのですよね。私これもーらい」

「あ…馬鹿。お前飲み慣れてないだろ?」

「大丈夫ですよ、ジュースジュース♪」

「おぅ垂れ目の嬢ちゃんもいける口かい? 五月蝿いのはほっといて乾杯だ」

「わ~い乾杯~♪」

「ちょっとちょっと…乾杯ー」


あれだけ飲み食いしたのに、来た時とあまり変わらないペースで食べているジークさん。にへらにへらしながら飲んでるコンスケ。もう突っ込まないし、しらんぞ。親父さんが突っ伏していびきかいてる横で何故か盛り上がるコンスケとジークさん。


「ぷはぁ~」

「おぉイケるねぇ嬢ちゃん。ほら注いでやるよ」

「ありがとうございます。次は赤いのがいいです」

「おぅよ。やっぱ肉には赤だよな」

「いや…色が綺麗だからー」

「ハッハッハッ!面白い娘だな。気に入ったぜ。食いねぇ飲みねぇ」

「はーい」


あ…なんか俺だけ置いてかれた。仕方ない…黙って食うか。もうテーブルの上には三週目に出した料理が半分位しか残ってない。お!チキンのパイ包み焼きが残ってる。おかみさんお手製のパンがあれだけ美味いんだから、パイも推して知るべしってやつだね。ナイフを入れるとサクッといい音がする。外はサクサク。中は肉汁たっぷり。お肉がスパイスに漬け込んであるのか…。これはお酒進むだろうなぁ。おぉー、こっちは川魚のフライ。カリッと揚がってて、冷めても美味しいな。レモングラスで風味もいい。親父さん相変わらずいい腕してるよなぁ。そりゃこうやって古馴染もわざわざ食べに来るよ。こっちの自家製のマヨネーズで食べるサラダもいいなぁ。マヨネーズって自分で作ると混ぜるの結構大変なんだよな。そんなこんなで俺が黙々と味わいながら食べている内に、気付けばなんか口調が怪しくなってきている人が一名。


「ジークさん王宮務めなんですかぁー。凄いですね!」

「おぅよぅ~。これでも傭兵隊の隊長なんだぜぇ~。モテるんだぜぇ~」

「へー。傭兵隊って何やるんですか?」

「訓練ばっかだなぁ…。冒険者時代にフェリングと一緒に色々旅してた方が気楽だったよ。最近は付近住民を脅かす魔物と化したデカイ動物~なんかもいなくてなぁ、張り合いねぇんだよ」

「そんなのいるんですね~」


合間にワインを注いでやるコンスケ。あんまり入れなくていいぞ。


「おぅ。巨大熊と戦った時も凄かったぜ。フェリングのやつ素手で熊のヤツと掴みあってよぉ。どっちが熊がわかんねぇでやんの」

「あぁ確かに~」

「結局そのまま熊を放り投げて気絶させて終わりよ。あり得ない強さだよな~」


あり得ないのはあんたの胃袋だ…。という突っ込みは心の中にしまいながら耳を傾ける。親父さん最強過ぎるなぁ。


「そういやフェリングに聞いたが嬢ちゃん達探し物してんだって?」

「え? あぁはい。巨大な門を探してるんですが…」


急に話を振られて驚きながらも言葉を返す。王宮務めならそういう情報も入ってくるのかな?


「門なぁ…。聞いた事はないが、探し物なら王宮に丁度いいのがいるぜ。S.Dって言う占星術師なんだが」

「S.D…。まさか」

「お、聞いた事あるか? 都じゃ結構有名なんだぜ。やれ失せモノが見つかっただの、やれ恋の鞘当てが上手くいっただの」


言い回しが古いなぁ。けどこれはヒントになるかもな。行ってみるか王宮へ。

なんで夜中にお腹の空く話しを書いてるんだろう…(;一_一)

手作りマヨネーズは空気とふんわり混ぜると美味です。

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