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H.D

ハードディスクではないです。

2013/03/18 大幅加筆修正。

「行ってきま~す!」

「行ってきます」

「二人とも気をつけるのよ~」

「お土産は無理しなくていいからなー」


親父さんと女将さんに見送られて、まだ薄明かりの中で出発する。昨日は宿に戻って直ぐに、二人で出かけるから休みたい旨を伝えたら快く承諾してくれた。最近忙しかったし、じゃあそのままお店も休みにするかな、だって。お弁当もこさえてくれたし、優しい。ちなみに二人はきちゅねさんを見て、可愛いなぁと部屋に入れる事を当たり前に受け入れてくれた。昨夜は私の部屋よりも広い、二階の客間のユウスケさんの部屋で寝かせたらしい。いいなぁ、ずるいなぁ。絶対もふもふしながら寝たに決まってる。そういえば今朝からユウスケさんの様子が変だ。旅行用のマントをしっかりと巻き付け、フードも深く被っている。姿がほとんど見えなくてとても怪しい人になってる。


「ユウスケさん今日なんか調子悪いんですか? マント暑いと思うんですけど…」

「え、あ、うん? 大丈夫元気よ! うん」


明らかにおかしい。目線逸らしっぱなしだし。何か絶対隠してる。よーし、こうなったら…。


「あ! あんな所に空飛ぶお菓子が」

「何! 未確認お菓子物体か!」


こんなよく分からない事を言ったのに引っかかるなんて、絶対怪しい。


「えいっ」

「きゃあぁぁぁ!」


やたら可愛い悲鳴上げたよユウスケさん。ってこの格好は…。


「ち…違うんだコンスケ…。これはその…社長の趣味で…」


しどろもどろになりながら、真っ赤になってあたふたしているユウスケさんの格好は、見たこともない可愛らしいデザインの大きな襟の特徴的な服だった。






早めに起きた俺は、一緒に寝ていたきちゅねを起こさないように、そっとベッドから出る。もふもふで、ふかふかのきちゅねをハグしながら寝るとか、高級な低反発の布団や枕を超えるね。羽布団も要らない…。いいですなぁ。昨夜は今日の為に早く寝てしまったから用意は全くしていない。部屋に戻ったら、きちゅねハグして夢の中へGOだった。部屋にそのまま置いた社長からの支給品が入っているリュックは、俺がよくあっちで使ってる親父から貰ったカーキー色した自衛隊御用達の鞄だった。凄く丈夫で中身も濡れにくいから重宝している。これで中に迷彩服が入っていたら笑えないな。丈夫で防御効果は高いけれど、ここの世界で狐耳にそれだと完全にコスプレ状態だし。


早速中身の確認をすると、長脇差しと、少し刀身が短い護身刀が入っていた。確かに強力な武器は送れないと言っていたからな。強化はしてある様で、お手入れ基本不要と注意書きが付いている。銘が入っていて、長脇差が【稲荷】、護身刀が【葛葉】。狐の名前に合わせてあるみたいだ。他には下着とかタオルとか細々した物と一緒に、わざわざ別の包みが出て来た。


「お、皮鎧とかそんなの入ってるのかな…ってコスプレじゃんかー!」


黒い生地を基調として、臙脂色のミニスカートがセット、袖が着物みたいに袂まで付いている和装セーラーだ。ちょっとお洒落で可愛いけど、マニアックだ…これは絶対社長の趣味だ。なんでファンタジー世界にセーラー服が。これもメモがついているの読んでみる。


『アバター用に見た目重視で作っておいた物ですが、何故か防御効果が一番高い物です。コンスケ君ではなく、ユウスケ君が着ること。専用服に設定してあるからね』


最早、呪いの装備品位の気配がしてきたぞ。コンスケ用にはピンクのフリルの服とかが入ってた。どうみてもこれもアバター用だと思う。見栄え重視すると、防御効果が上がるのかこの世界は…。武器と一緒に後で渡しておこう。


「しかし、これ…、着ないと駄目だよな…」

「コン?」


いつのまにか起きていたきちゅねが、服を広げながら固まってる俺を、ベッドの上から見て首をかしげていた。






「違うんだ…コンスケ。…違うんだよ、あのほら」

「可愛いですよ! なんで隠すんですか?」

「いやあの俺も、女形おやまとかやったことはあるけど、あれは着物だったし、こんなミニなスカートじゃないし。女の子女の子したのとか…あうあうあ」


おやま…とか言われてよく分からないけど、確かに出会ってからユウスケさんはズボン系しか履いてなかった。


「よく似合ってますよ、ユウ姉ちゃん」

「あぅ…。確かに身体はコンスケと同じでも中身の俺の男の意地がぁ…」


何やら葛藤が随分あるみたいだけど、よく似合ってる。尻尾の色と釣り目な所以外は、基本私と見た目は同じだから私もこういう格好も似合うのか、双子って便利だ。


「もしかして、私のもあったりすんですか?」

「ちゃんと別のがあるよ。そっちも随分と可愛らしい系ので。休憩の時にでも渡す。しかし帰って来たら親父さん達に見られるかと思うと、これは恥ずかしさで石化出来る…」


何かに負けたといった感じで白くなりかけているユウスケさん。


「さぁさぁ、道を知ってるのはユウスケさんなんですし、大熊亭からも見えなくなってますし、そろそろ先導して下さいよー」

「はい…。きちゅね、乗るよ」


昨日の様に身体を下げて乗り易くしてくれたきちゅねさんに、ユウスケさんは素早く乗ろうとする。あ、スカートからチラリしちゃう。


「短いスカートだから気を付けて下さいね」

「わ…わかってるよ!」


顔を赤らめながら、慎重に動くユウスケさん。何かこうしてると可愛いなぁ。そっぽを向きながらも、手を差し出して、きちゅねさんの上に引っ張り上げてくれる。


「今日は二人乗りな上に、速度はかなり出るから、俺にしっかりつかまってろよ。よし、きちゅね。こっちの山の方向だ、GO!」

「のわぁぁ!」


グッと後ろ足で強く地面を蹴って、飛び出したきちゅねさん。急加速で身体が持ってかれそう。ぎゅっとユウスケさんの腰に掴まりながら、私は暫く悲鳴が止まらなかった。





途中でお弁当兼、着替え休憩を一回挟み、山を一つ越えて、さらにもう一つの山の中腹の滝の近くまで来た。滝に向かって張り出した岩壁の先に小さな家が一軒建っていて、その周りは綺麗なお花畑になっている。


「はーい、きちゅねお疲れ。今度お稲荷さんを作ってあげよう」

「きちゅねさんありがとうね。お稲荷さん?」

「ふふ…今度な」


なんだろう。食べ物ぽいなぁ。ユウスケさん料理も上手そうだから期待。きちゅねさんも、ちょっと目がキラリとしたよ。


「しかし、綺麗な所ですね~」

「んだなー。もうお茶の時間位か。きちゅねの足でもかかったな」


ユウスケさんが動揺しなければ多分もう少し早かった気がするけど、それは黙っておこう。また顔が赤くなっちゃいそうだし。いつもお兄さん的な感じだから、からかうと面白い。花畑に育っているのは香草なのかな。お店でよく嗅いだりする匂いも漂って来る。けど、一番強いのはラベンダーの香りだ。その香りのカーテンの中を、ユウスケさんを先頭にして、私、最後にきちゅねさんがとことこ進む。


「ごめん下さい」


ノックをすると中から声がする。在宅中みたいだ。


「はいは~い、どういった御用かしら?」

「リーフタウンで、門について知っている隠者さんがいると聞いて伺ったのですが」


そうユウスケさんが応えると、また外とは別に爽やかな香りと共に静かにドアが開いた。


「あら、可愛らしいお客様達ね。狐さんが三匹も。私がその隠者のH.Dよ」

自衛隊で採用されている備品はどれもスグレモノです。

基地によってはお土産で買えるのでかなりいい感じです。戦闘用糧食がおススメです!買えないけど、自衛官の迷彩服は本気で丈夫なので防御効果は確実に高い模様。

女形=おやま(おんながた)ですね。アクション俳優が演じることはまずない…という訳でもなくやれと言われたらやるそうです。当然着物にカツラ、白塗りです。普通の男の人には慣れるまで葛藤があると思います。

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