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臨時ボーナス

 北海道と沖縄を除く日本列島はほぼ一斉に梅雨の時期に入った。華月が東京の上野へ出てきて半年が経過していた。

 華月は相変わらず自らの拒絶意志によって、佐竹が勧めている『商品』、つまり営業マンの取ってきた会社の仕事での『商品』になることは決してなかった。しかし、それとは関係なく、自称支店長補佐、同支店長、社長の個人的仲間であり派遣先の団体客の四名の男たち六人は、毎月一回、ホテルの一室で一同に会し、華月をそこへ呼び出して彼女を思うがままにしていた。

 佐竹は、ある日そのことを華月の言動から知り得て烈火のごとく怒りだした。

「あの野郎! 未成年者の『心』を踏みにじりやがって! 許せねえ! 男の風上にも置けねえ卑怯な野郎どもだ!」

 華月には、佐竹がその体格以上に大きく雄々しく感じられた。

 しかし最後に小さな声で。

「俺だけ仲間はずれにしやがって……。ゆっ許せねえ……」

 佐竹は六人全員に対しそれぞれ請求書を発行した。


『請求書・¥三七八,〇〇〇ー・請求内訳・一回¥六〇,〇〇〇ー×六回、同消費税・¥一八,〇〇〇ー 振込先……、期限・六月二〇日(明日)まで、延滞金日歩一割にて申し受けます』


 以降、六人の男は華月の体には触れることもなくなった。どこか体が触れただけでも一万円くらい請求されそうな気がしたからである。請求書発行の翌日には全員から入金があった。おそらく仲間内のサラ金あたりから借金の手当てをしたのであろう。入金確認後、佐竹は収入金を折半にしようと言い、華月に約半分の百十三万円を気前よくポンと手渡した。

 その金額は、普通に働いていて一度に得られる金額では到底ない。しかし、労働の対価としての金の価値がわからない華月にとっては、それは巷に聞かれる『ボーナス』のようなものであり、普通、初めてのボーナスでは親へ感謝し何か買ってあげるという話を聞いていたので、早速最高級の天然ウナギとズワイガニセットを冷蔵宅急便で実家へ送った。


『なにせ、体一つかかってるんだからね! 味わって食べてね!』というメッセージを入れて。


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