憧れのデート
待ち合わせは、午前十時ちょうどに、足裏マッサージ『おいしいキリンレモン』だった。華月は『何だか変わった場所で待ち合わせだな』と思ったが、それ以上気にはしなかった。権三郎さんを待たせてはならない、と思い十時十五分前にはそこへ行き待合室にいた。
ところが、すぐに華月の番がまわってきてしまった。
「四十分コースですか?それともクイック二十分コースですか?」
四十分コースは、足がちょっときつそうだ。でも、「四十分コースは割安になっています。」と店の人が奨める。
華月はどうしようかと迷ったが、彼が来たらやめればいいと思い、ちょっと足裏マッサージしてもらうことにした。
――とっても気持ちいい……。
すっかり健康の源を取り戻したころ、「お客さん。携帯が鳴ってますよ。」とマッサージ師さんが言った。
――きっと権三郎さんだ!
電話に出ると、やっぱり権三郎だった。
「華月。おまえ、何やってるの?」
「はい?」
「待ってるんだけど。『喫茶キリンレモン』で」
「えええ?!」
華月はさっそくドジをかましてしまった。
「ごめんなさい。私……。どう償ったらいいのか」
「昼飯オゴッてくれれば許そう。腹減ったから」
二人で御徒町駅前のステーキハウスで食事をしてから、権三郎は華月を競馬場に誘った。そこでたくさんのお金を使い、華月はたっぷりとデートを楽しんだ。そのあと、パチンコ『出るぞ出るぞ』でまたたっぷりと遊んだ。そして、宝くじをたっぷり買って願をかけた。最後に英会話教室に行き、体験教室で英語の勉強をした。
あまり一般的なデートコースではなかったが、とにもかくにも生まれて初めての、デート体験、そして遊び歩き体験を華月は無事修了した。