誰のモノ?
ユウは、今年27の社会人。年下の彼氏がいる。ある日会社の飲み会に、彼氏が参加することになって…?
(彼氏に関西弁を使わせています。不自然な点があるかと思いますが、ご容赦ください。)
わたしの彼氏は、ハルカと言う可愛い茶髪の年下の男の子。
ふわふわした癖毛の、思わず撫でたくなってしまうような細目の男の子。
困った顔をすると、目尻が下がって細い目が見えなくなってしまう。
その顔が可愛くて、わたしもイタズラをしかけてしまうことは…ちょくちょくある。
まあ、だからあなた達の気持ちも、わからないでもない。
週末の居酒屋。
会社の暑気払いと名前の付いた、ただの飲み会。
終電がなくなるぐらいの時間になっても飲んでいるのは、明日が休みだからみんな気が大きくなっているからだと思う。
「ハルさんかーわーいー!」
後輩の女子が、ハルカの頭を撫で回す。
ハルカは困ったような笑顔で、それを受け止めていた。
ハルカとは、週末に一緒に過ごすことを約束していた。
ふたつ下の可愛い男の子は、週末の飲み会の予定を伝えると「遅くなるやろ。仕事終わったら迎えに行くわ。」と言ってニコニコ笑った。
そして、約束通り迎えに来てくれたハルカは、目ざとく見つけた後輩女子に引きずり込まれて、わたしの会社の飲み会に参加しているのだ。
『彼女』の会社の人だから、愛想を振りまいてくれている。
そんなの、わかっている。
大人だもの、同じ立場になったらわたしだってそうする。
でも、心のむかつきは押さえられない。
「ハルさんはー、年いくつですかぁ?」
「25ですよ。」
「あたしの2個上なんですね〜!」
「え〜!見えない!なんか可愛いし若く見えますぅ。」
後輩の女子に絡まれて、ぺたぺた触られて。
逃げることもできず、困った笑顔でただ受け止めるだけのハルカに、いらいらしてしまう。
近くで飲んでいた同期の慰めるような目にも、いらつきを煽られてしまう。
ああ、冷えたビールを飲んでも、全然熱が下がらない。
「おい、お前飲みすぎじゃないか。」
同期の声が、遠くに聞こえる。
やだ、ほんとに飲み過ぎた、かも。
「もーユウさん飲み過ぎやん。すんません、俺連れて帰ります〜。」
くらくらした体を、馴染みの熱が受け止める。
素早く近くにあったわたしのカバンを持って、自分の財布からお札を渡しているのが横目で見える。
もう力が入らない体を、慣れたように支えながら挨拶をしているのが、遠くのように聞こえた。
ゆらゆら。ゆらゆら。
暑いはずなのに、不快じゃない熱に背負われて、ハルカの家に向かっている。
「ハルカ。」
「はーい。」
「何で歩いて帰ってるの。一駅ぐらいあるのに。タクシー使えば。」
「タクシー代さっき置いてきてもうたもん。」
「飲み代なんて、週明け払えばよかったのに…」「男の見栄はらしてーよ、ユウさん。彼女の飲み代ぐらい、払いたいもんやの。それに。」
ハルカが笑ってるのが、背中を通して伝わる。
「それに?」
「ユウさんおんぶって、気持ちええわ。ユウさんをめちゃめちゃ甘やかしてる感じがして。」
「…ばか。そんな、甘やかすって。」じわじわっと、アルコールのせいでも夏のせいでもない熱が上がってく。
飲み会で感じたとげとげすた気持ちが、あっと言う間に丸くされてしまう。
わたしはこんなに彼氏に気持ちを動かされる女だったろうか。
「ええやん。あとな、もひとつ特典あんねん。」
「なに?」
「俺の頭なで放題やで。ユウさん、頭なでるの好きやろ?」
ほんとに。
年下の可愛い男の子だと思ってると、気付くとこちらの気持ちを見通して。
目の前にあるふわふわの頭に手を伸ばすと、また笑ったのか背中が揺れる。
「ユウさん、ハゲても俺を好きでいてな?」
「…それはどうかしら。」
えー!と悲鳴をあげる首に抱きついて、心地よい揺れに身を任せる。
優しい睡魔に誘われて、今日はハルカに甘えてしまおう。
可愛い可愛い年下の男の子に。
「甘やかして甘やかして、俺からは離れられんようにべたべたに甘やかしたるから、もっともっと、俺に依存したらええ。な、ユウさん。」
わたしはすっかり幸せな夢の中だったから、彼のつぶやきなんて聞くこともなく。
年下の可愛い男の子が、実は執着心が強く計算高い男だと知ったのは、バージンロードを歩いた後だった。
こんな彼氏がいたらいいなぁ、という欲のままに勢いで書いてしまいました。感想いただけたら喜びます。あ、批判は心の内にとどめてくれるとありがたいです〜。