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空中都市の真実

作者: 鬼崎
掲載日:2026/07/24

最新鋭の小型ジェット機はようやく捕捉し追いついた空中を自在に移動する都市の大地に着陸、安全を確認すると次々と調査員の学者たちをその中から降ろしていく。

「ここが伝説の空中都市……まさか本当に実在するとはそして訪れられるとは……く~!!感動だぁぁぁ!!!」

熱血な考古学者のシンディは周りの調査員たちが苦笑するのにも気づかず盛大に感動を現わしていた。

これで感激しないならロマンを追い求めて考古学者などやっていない。

伝説の空中都市。それは世界各地の伝承に時折現れる文字通り空に浮かび自由気ままに飛び回るミステリアスなシティである。

小さな島ほどの大きさがあるそれが実在すると分かったのはたった数年前、それから各国の研究機関が共同でデータを持ち寄り解析し、移動経路を割り出しそして遂に今日この日この時人々はそこに実際に降り立ったのである。

「さぁてワクワク、どんな未知の発見があるかしらワクワク」

ワクワクしすぎて語尾にまで出てしまっているシンディは同じ班の数人の仲間たちとともに早速着陸した外縁部から中心部の方へと歩き始める。雲よりも遙かに高い高度なので酸素は薄くそして肌寒い。時折くしゃみしながら十分ほど歩いてたどり着いた中心部、そこには明らかに人の手で作られた建物があった。しかし

「?なんというか、予想していたよりずっと……原始的な感じだな?」

拍子抜け、というとちょっと違うがシンディは困惑せずには居られなかった。そこに立ち並ぶのは竪穴式住居や高床式住居に同じく地面から高さをもたせネズミ返しを供えた食料庫と思しき建物、などなど確かにここで人間が生活していたとはっきり示す遺跡群でありだが一見して「どこかで見たことある」感じの村なのである。少なくともシンディがここに来るまでの空の旅の中思い描いていた『自由自在に空中を飛び回る都市を作り維持する、現代よりも遙かに高度な文明』のイメージとは全然違う。ぶっちゃけ言えば縄文とか弥生とかの住居跡そのままだ。それがほとんど形を崩さず残っていると言うことは近年まで住民がいた可能性も高そうだが……

「班長!こっち来てください地下への入り口がありました!」

「なんだってすぐ行くはいもう来た!!」

百メートルほど先から声をかけられたその一秒後には声の主の目の前まで宿地の如く移動せしめたシンディがのぞき込むのはなるほど地面の一角にいきなりぽっかり口開けた穴で中には石の階段が緩やかな角度で続いている。ライトで中を照らし出せば踊り場のようなスペースも見え、直感だがそこまで深くまで潜るような感じはしなかった。

「誰でもいいから二人付いてきて。一人は本隊に報告。残りは全員ここで待機」

てきぱきと役割分担しシンディはさぁここからがいよいよなにかあるぞとやる気の腕まくり、ずんずん勢いよくしかししっかり警戒しながら階段を先陣切って降りていく。二人の班員たちもしっかり続き慎重に降りていくこと数分、階段が途切れた先にあったのは巨大な部屋、そしてそこで青白く輝きながらゆっくりと横回転する柱状の装置だった。

マッピングなどしていないので断言は出来ないがおそらくこの浮遊都市の中心の中心あたりに位置するだろう事は肌感覚で分かり、そしてこれが都市を丸ごと空へと浮かせている動力機関で心臓部だとシンディも他の二人もすぐに察せられた。

「まったくすごいオーパーツねこれは。ほんと、こんなとんでもないもの造って動かす技術があるのに外の村とあんなにギャップがあるのかしら」

迂闊に触れてなにか起こっても困るので柱から距離を取りつつ観察を続けるシンディは

「あ」

と柱の一部になにか文字が刻まれているのを発見した。古代語だが、どこかで見覚えのある文字で文法もおそらく知っているものとさほど離れていない。ライトで照らして興奮しながら解読していくとさほど時間はかからず読み終わりそして

「まさかそんな……」

と思わず出た声は脱力の色が強かった。

「なにが書いてあったんですか?」

班員の一人が尋ねる。肩をすくめながらシンディは古代文字を指さし

「ここの都市を空に浮かべたその理由が書いてあったわ」

とどこかやけくそっぽく言った。

「全文しっかり解読できたわけじゃないけどざっくり言うとこの都市が空にある理由ってのは」

「理由とは?」

「地上がめちゃくちゃ暑かったから、だそうよ」

実利はあるがロマンにはなんとも欠ける理由に班員はシンディがいきなりローテンションになった理由をそれだけで察した。

「なんでも酷暑がそりゃもうとんでもないことになってもうみんなで涼しい土地に引っ越そうぜ!ってなって海辺とか高山の上とかいろいろあちこち行ったみたい。それでもどうしても暑さがヤバい!!ってなって」

「それで空に都市ひとつ飛ばしたっていうんですか?そのテクノロジーはどうやって……」

「なんかとにかく死に物狂いでみんなで頑張ったらできた、って書いてあるわ」

つまり涼しい場所に行くため“だけ”に熱意やらエネルギーやらを注ぎ込みまくった結果そこだけ突出して超進歩した、ということらしい。一点突破の力というのもとてつもないものである。

「まぁこれはこれで興味深いことではあるわ。本隊に合流して本格的に調べ始めましょ」

自分で気分を仕切り直したらしく切り替え階段を登っていく途中、しかし?とシンディは一瞬だけ考える。

(ここにいた人たちは結局なんでいなくなったのかしらね?暑さに慣れて地上に降りたとか?)


空中都市の更に遙か上空、地球上とは比較にならないほどの凍てつくような涼しさの宇宙空間を飛ぶ都市では今も暑さを逃れるべく全力を尽くした人々の子孫たちがのんびり牧歌的な暮らしを送っていた。

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