7.お弁当
道中では、普段全然話せていないのに色々と話せた。
学校ではあまり話さないし表情も乏しい感じなのに、いざ話し出すと結構喋るし笑顔も見せてくれる。
意外と表情豊かなんだな。可愛いだけじゃなくて面白いところもあるし、このまま仲良くなれたらいいなあ。
俺は学校までチャリで10分くらいだけど、福原さんは電車で通学してるらしい。
清田だったっけな。福原さんと同じ中学の奴がいて、あの人気投票の時に色々話してくれた。
(清田が言うには、学校一のイケメンを軽く振って女子連中からやっかまれたから、遠くの学校を受けたんだろうって。元々は活発で元気な、男の子のような子だったらしいけど……)
「ここだよ」
アトリエ兼住宅。平屋の建物がある。
今は俺が使っていいと言われて、昨日掃除とかをした。とか……ね。ティッシュの詰まったゴミ箱は、ちゃんと片付けたはず。
道に面した引き戸をガラガラと開けると、そこは広々とした作業場になっている。
荷物を作業机の上において、福原さんに声をかける。
「適当に椅子に座ってて」
「うん」
アトリエには使い込まれた作業机が四台あり、塗料の跡は消えてないけれど、昨日ちゃんと片付けて掃除しておいた。
奥から例のプラモの箱を取ってきて、福原さんに渡した。表情が途端に明るくなるのが分かる。
プラモ、本当に好きなんだな。
「開けてみてもいい?」
「いいよ。って、福原さんのだから……あ、俺、ちょっと奥にいるから」
ホッとしたら腹が減ってきた。昼、同盟の奴らのせいで定食が売り切れていて、パンしか食ってないんだ。
「うん」
「ちょっと腹減ってさ。カップラーメンでも食うわ」
何か言いたそうな感じ? 何か必要かな。ニッパーでも出しておこうか。
「あ、じゃあさ。これ食べてよ」
「えっ? それって……」
「お弁当。私はもう食べたから、余っちゃって」
「いいの?」
「うん。私が作ったおかずもあるから、口に合わなかったらごめんね」
マジか。めちゃくちゃ食いたい。こんなに可愛い子が作った弁当なんてプレミアもんだろっ!
「料理できるんだ。……ありがとな。すごく腹減ってたんだ、いただきます」
平静を装い答えた。奥に持っていくのもアレだし、ここで食べるか……。
……。
こ、この味は?……うますぎる。
あ、でもこの味?いや、とにかく美味い。
……あ、もう無くなっちゃった。
でもこれ、この味、この焼き方……。
「ご馳走様。美味かったよ、弁当箱、洗ってくる」
奥にキッチンと食事のできるちゃぶ台のある部屋があり、そこに持っていってお弁当を洗う。
偶然だと思うけれど、じいちゃんが焼いてくれた卵焼きの味がする。
いつも俺のために一工夫してくれていた、あの卵焼き。
まあ、偶然かな。でも、こんなに美味しい弁当を食べられたら幸せなんだけどな。
「ありがとう。ホント美味かった。特に、卵焼き!」
ちょっと照れるけれど、ちゃんとお礼を言う。
――美味いか不味いかくらいちゃんと言え。それが作ってくれた人に対する礼儀だ。
じいちゃんの教えだ。でも、ちゃんとお礼を言って良かったと、すぐ後に思った。
「ありがとう。褒められると、ちょっと嬉しいな。……良かったら、また作ってこようか?」
明るい声で、俺が飛びつくしかない提案を彼女がしてくれた。
マジでか……いいのか?
心の中で両手を挙げて走り回る俺を止めることはできそうもなく。
福原さんから見たら「変な奴」って思われるくらい、はしゃいでしまった気がする。
ただ、カップラーメンだって悪くないけどね⋯。




