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5.学校にて


買ったプラモの箱二個をアトリエの机の上に置く。


プラモの箱を同時に取ろうとした時に触れた、柔らかい手。

Dモンカードを選んでいる時の真剣な横顔と、選べた時の弾けるような笑顔。


む、ぬ……。生理的にもよおしてきた。


……正直、あの手の感触。あれがアレに触れたなら……。


それだけで十分だった。笑顔も思い出すと捗ってしまった。


ゴミ箱に詰めこんだティッシュの残骸。


賢者が目覚めると、とたんに同級生をオカズにしてしまった嫌悪感に襲われる。


でも、あのコ、ここに来るんだよな!


心が弾むのを止めることはできず、もう一回と……。



賢者は死んだ⋯。




次の日、学校へ行くと福原瑛里は隣の席に座っていた。


「おっ、……す」

と短く手を挙げて、挨拶してみた。昨日話したんだ、もう無視されないよな。


昨日、散々オカズにしてしまい罪悪感もあるけれど、やっぱり可愛い顔をしてるよなと思う。


「あ、……うん。お、おぅ」


おおよそ女子高生らしくない返事が返ってくる。

昨日は、もう少し受け答えできていた気がするけれど……。

結局、昼休みまでまともな会話はできなかった。

昼休みに入った時、

「藤井くん。お昼、って……」

「あ、俺、いつも学食なんだ。混むから急ぐわ。じゃあな!」

話しかけてくれたけど⋯。

急がないと、人気メニューは無くなるんだよ。


特に進展もなく、放課後となる。

「あ、福原さん」

思いきって声をかけてみる。

「ごめんなさい、バイトなんだ! 急がないと。……明日でいい?」

「プラモ、あ、そうだった! 明日の放課後でも良いかなぁ?」

「……。あぁ、いつでも大丈夫だから。じゃあね」

「うん。じゃあね!」


約束できた……。



その日のとある授業の事⋯。


体育などで男女が別々になる時間は、少し先生が目を離せばすぐに雑談の場になる。


五月末。新入生となって一か月半。中間テストも終わり、クラスの人間関係が固まり始めたこの時期、男子高校生たちの興味の的は――当然、クラスの女子のことだ。


このクラスは、幸運にも飛び抜けて可愛いコが多い。


「やっぱ一番は西野美佳かな?」

小柄で元気な子。可愛いって感じだ。


「俺は、岸川紗友里がタイプだわ」

ギャルみたいで派手。中学が一緒だったけれど、性格が良いんだ。面倒見が良くて優しい。俺みたいなオタクが勘違いしてしまうほどに。ちなみに胸がデカい。まあ、彼女には決まった人がいるようだけど。


「白川優香だろ、あそこは正統派だし」

正統派……か。確かに、顔から足の先まで見ても、文句のつけようのない美少女だ。岸川とは幼なじみだけれど、中学が別だったみたい。筋肉フェチと聞いた時には、自分の貧弱な体を見て血の涙を流したものだ。



誰が良いなんて勝手に格付けできるのは、いわゆる一軍グループの特権だろうか。隅っこで聞いている俺には関係ない話だ……そう思っていた、その時。


「――福原って線はどうよ?」

ピクッと肩が反応してしまった。幸い、誰も見ていない。黙っていると、他の男子が賛同している。

「あー、アリだな」

「いいよな、あの子。でも話しかけにくいんだよ。いつも一人で『ボッチ』って感じだし」

「でも、そこが逆にミステリアスで良くないか?」


「ちなみに美佳はダメだからな」と、サッカー部の久野が釘を刺す。

「あ、やっぱりお前ら付き合ってんのかよ!」

「隠してたつもりはねーよ」


久野たちの惚気話を合図に、話題は他の女子へと移っていく。中学時代、学校一のモテ男をフッたという福原さんの「ガードの固さ」も噂になっていた。


「よし、多数決だ。このクラスで一番可愛いのは……はい、白川だと思う人!」


結果。

白川優香:10票

岸川紗友里:4票

福原瑛里:3票

平田ゆかり:2票

西野美佳:1票(久野)


……福原さん、やっぱり人気あるんだな。


周りに流されて白川さんに手を挙げたけれど、なんだか胸の奥がもどかしい。

いや、クラスで一番可愛いと言えば、白川さんには違いない。


違いないけれど。


気になるのは、やっぱりあのコだ。


福原さんを推さなかったことを、後悔することになるなんて、この時は思いもよらなかった。


瑛祐の賢者のHPは1。防御力も1。瑛祐の瑛祐は、すぐに復活します。


若いって良いなぁ。


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