表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

32/35

32.夏だ。プールだ。水着だ。


塗料とか接着剤の消耗品を買いに行った帰りだった。

昼はプラモの直し作業していて、気付いたら夜になっていた。


「あ、藤井君じゃん」


振り返ると、平川ゆかりと佐伯亮介がいた。

クラスメイトで、瑛里と4人で勉強会をした仲である。


クラスでも瑛里と平川は比較的話している方かと思う。瑛里って、学校だと余り話さないからなぁ。


佐伯亮介は、剣道で全国行けるほどの達人で、インターハイ出場していたはずだ。


荷物を見ると試合終わりな感じ。ちょうど遠征から帰ってきた所みたいだ。


「佐伯⋯」

佐伯には、瑛里を取られるかと思って警戒したりしたけど、実は応援してくれていた。いいヤツだった。


小学校の時からの付き合いだけど、中学の時からあまり話さなくなった。

俺は、その頃じいちゃんからプラモ作り教えてもらうのが楽しくて⋯。

佐伯も剣道に本格的に打ち込むようになってたし⋯。


「おう。ベスト8までいけたぜ」

「凄いな⋯」

「今度、打ち上げっていうか、ゆかりとプール行こうって言ってるんだが、福原とお前誘おうかって話してたんだよ」


「プール?⋯行かないよ」

即答したら、肩に手を回して、佐伯が小声で言ってきた。

「プールだぜ。水着だぜ。お前、福原の水着姿、見たくないのかよ」


……見たい。

が、コイツには見せたくない⋯。


「俺にはゆかりがいるからな。ってか、ゆかりの水着姿もみたいだろ」


平川ゆかり⋯。

可愛いし、胸も瑛里よりありそうだし⋯。

……じゃない。俺には瑛里が⋯。


ちょっと前に、サービスサービスとか言って太もも見せてくれた記憶がよみがえる。


「それにな。お前とまたつるみたいんだよ。前みたいに」


佐伯と俺は、Dモンカードバトルで、雑誌とかに載ったこともあるくらい、昔はよく遊んでいた。

AR対決なんて言われたりね。


懐かしいし、俺もコイツの事、嫌いじゃない。

友達に戻れるなら戻りたい。


じゃあ、行くか。


決して瑛里の水着姿が見たいからじゃない⋯。

⋯あの太ももがまた見れる!


⋯違うって。


「藤井君。ちょっと携帯貸して」

平川ゆかりが、俺の携帯をひょいと取って、何やら入力している…。

ID交換かなって思ったら⋯。


『瑛里もプール誘われたよな? 楽しみだね』


って勝手に瑛里にメッセージ送ってやがった。

「瑛里がね。なんだかゴニョゴニョしてたから、トドメ刺しておいた⋯」

「お前なぁ⋯」


テヘペロってされると何も言えなくなる⋯。

まぁ、似たような事送ろうと思っていたし。

佐伯もゴメンって手を合わせて言ってくれてるし。


「しょうがねえ。みんなで行くか」

「お詫びに、瑛里に似合う水着一緒に買いに行ってくるからね」

平川の笑顔。流石に学校No.1(何が?)の佐伯を落とした笑顔だよ。


えっ、瑛里に似合う水着だとう。楽しみすぎるじゃねえか⋯。

数日後。プールの最寄りの駅前で待ち合わせした。

瑛里は平川ゆかりと一緒に来た。


「昨日ねー、瑛里と水着買ってきたんだよー」

「おぉ、良いのあったのか?」

「楽しみにしておくよ〜に!」


前を歩く佐伯と平川が、話しながら歩いている。どこからどう見てもお似合いのカップルだな。

俺と瑛里の口数は少なかったけど、佐伯と平川が話す事に相槌をうったりして、2人について行った。


あの後、俺たちも適当に水着買いに行った。

その後ゲーセンに寄ったりして、昔のように遊べて楽しかった。

佐伯、全然変わってなくて、面白いヤツだった。

コイツと仲直りできたのも、瑛里のおかげかなって思ったり。



更衣室。


「藤井って、運動してないのに引き締まってるよな」

「ガリってるだけだって。そういうお前は、凄い筋肉だな」

「フン」

と力を入れると凄い⋯。剣道だけやらせておくには惜しい気がする。


「あ、そうだ。今日、夕方までで出るけど良いよな」


佐伯がそんな事を言った。今から帰ること考えるなんて⋯。まあ、でも、俺は体力保たないからな。それくらいで十分だろ。


「全然大丈夫だけど、何かあるのか?」

「いや、まぁ、そのだな。⋯ゆかりとホテル行くから」


⋯。いやよく聞こえなかったな。


「えっ?」

「いや。インターハイ頑張ったら、ヤラしてくれるって言うから。凄え頑張ったんだよ」

「⋯で、ベスト8までいったと⋯」

「おう。お互いに初めてじゃ無いんだから、まぁ、キッカケが欲しかっただけなんだけどな」

「は? 初めてじゃないだと⋯。お互いに⋯?」


ダメだコイツら、俺の理解を超えてやがる。


「ほら、中学の時、俺彼女いたじゃん」

……あの、清楚な感じのロングヘアーが似合ってたコ?

えー。という事は、あのコ、経験済だったのかー。


地味にショックだ⋯。


更衣室を出て、佐伯と中学の時の話なんかしていたら、瑛里と平川が出てきた。


「亮くん、すごい筋肉ー!」

平川が黄色い声を上げる。平川は、ビキニタイプの水着で、めっちゃ似合ってて可愛い。佐伯も答える。

「ゆかり、すごく可愛いよ」

「えー、本当に? ありがと〜」

早速手を絡めて歩き出す二人。


俺と瑛里も隣り合って後に続く。

ラッシュガードを着て、余り露出してないけど、身体のラインはわかるし、何より綺麗な御御足が⋯。


「ごめんね。もっと見たかった?」


耳元で囁かれた。何を聞いてくるんだよ。

耳まで赤くなる⋯。

見たいかって? そりゃそうだけど。それ以上は、他の男に見せたくないよ⋯。俺、脚だけで十分⋯。


「あ、いや、大丈夫。十分だから……」

とだけ、答えるのが精一杯⋯。


流れるプールで流れに身を任せたり。

波のプールでバシャバシャと水を掛け合ったり。

時には50メートルプールで、ガチの競泳対決をしてみたり。


「楽しいね」

瑛里が言うので、俺も

「うん。こんなに楽しいなんてな。来てよかったな」

なんて答えると

「うんっ」

と瑛里が笑ってくれた。超可愛い。


「瑛里ー、藤井くん! スライダー行こ!」

平川がまたとんでもない提案をしてきた。

「す、スライダー、か……」

乗り場を見上げる。た、高い⋯。

「ゆかり、私たちはいいよ」

と瑛里が言いかけた。優しいなぁ、大好きなんて思ったんだが⋯。


平川がニヤリと笑った。

「ペアで滑れるみたいだよ?」


なんだと。ペア……だと。

見ると、かなり密着した状態で滑り降りている。……これは、いい。うん、良い。


「行こう、瑛里」

瑛里は心配そうな顔をしているが、それよりも瑛里と密着できる方を俺はとる!


決意はしたものの、階段を一段登る毎に、あ、あ、あって、判断を間違えたかも⋯。


「大丈夫? 顔色悪いよ」

階段は登りきったが、意識が少し遠く感じる。


「男には、やらねばならぬ時があるんだ……」

独り言を言うと

「何それ? ハーロックか⋯懐かしいね」

?またコイツ⋯って思うと少し気が楽になった。

「…ハーロッ?なんだよ、それ。⋯じいちゃんが言ってたんだけど」


男には、やらねばならん時がある。そこで踏ん張るんだ瑛祐! ってじいちゃんの言葉だと思ってたけど⋯。


ハーロックって何…?


「次どうぞ。はい、急いで。彼氏くん、ちゃんと彼女さんを支えておいてね。はい、ゴー!」

彼氏君だって、彼女さんだって。

……なんて考えて照れる間もなく、いきなり係員さんに押され、二人の身体は重力にさらされた。


高さに怯えてドキドキする間が無かったのは助かった。


「おぉぉぉぉぉぉーーっ!!」


ドッぼーん!


密着して、瑛里を直接感じたかったのに⋯。

そんな余裕無かった⋯。


着水し、気が抜けて呆然としてプールに沈んでしまいそうになっていると、瑛里が俺を引き揚げてくれた。


「よく頑張ったね」

頭をなでなでしてくれた。

情けないけど⋯。まぁ、良いか。

「ははっ。やっぱ無理はダメだね」


それからもしばらく遊んだが、夕方が近づくにつれ疲れが出てきた。閉園時間まではまだ時間があったが、

「そろそろ上がろうか」

平川が皆に提案してきた。俺もへとへとだよ。


「うん、楽しかったー。……あ、この後どこか行くんだっけ?」

瑛里がそう言った後、少し気まずそうにしてる。


「うん。ちょっと体力を残しておかないと……ね」

ちょっと照れながら平川が言う。

「俺はまだまだ行けるけど……あ」

佐伯は、プールが楽しくて忘れかけてたが平川の意図に気づき、一瞬で顔を赤くして沈黙した。


上級者でも照れる事があるんだね!



プールを出て、駅に向かう。

「じゃあ、ここで」

そう言って、煌びやかな街の光の中に消えていく二人を、俺たちは呆然と見送った。

行き先は、あのネオン街だろう。

奴らは既に大人なんだが、コレから大人になるんだよな。


「……どこに行くか、聞いた?」

繋いだ手に少し力がこもり、瑛里が聞いてきた。

「うん……。『お前も頑張れよ』って言われた」

「わ、私たちは、まだ……いいよね?」

え? コレ、イケるの? もしかして⋯。でも、俺はヘタレで⋯。

「う、ん。まだ……だね」

「……だよね」

ホッとしたような瑛里は、

「瑛祐くん。……そういうところも好きだからね」

と続けた。どうやら正解だったみたいだ。

「うん。俺も瑛里が好きだ。だから、俺たちは俺たちのペースでやっていこうな」


ま、瑛里のペースで付き合っていこうと言ったのだし、今日は情けない所見せちゃったし⋯。


焦ることないよな。


「帰ろっか」

「うん、帰ろう」


二人で手を繋いで歩き出す。


まだ俺たちは、手を繋いでいるだけで心臓の音がバクバクとうるさい。まだ早いって事だよな⋯。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ