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2.再出発


藤井瑛祐、15歳。高校1年生。


特技はプラモ作り。これは、プロ級の技術を持っていると自信がある。


あと特技というか…。

小学生の時、カードゲームの大会で優勝して『瞬殺の魔術師 A君』という二つ名を付けられたのは、今では黒歴史だ。

たまたま、デッキの裏技というか、設定ミスを突いて3ターンでハメ殺しできる構成を見つけただけなんだけど……。今ではそのカード自体が使用禁止になって、「A君デッキ禁止ルール」がほとんどの大会で適用されているらしい。


得意科目は理系。特に数学が得意だ。


母親の楓さんは有名なデザイナーで、若い女性の間ではカリスマらしいけれど、家事が壊滅的にできない。母親っぽくない人だ。幼稚園の頃、本気で母親だと思っていなくて、ずっと「楓さん」と名前で呼んでいたくらい。


父親はいない。俺が生まれる前に別れたらしく、詳細は不明だ。

「数学が得意なのは父親の影響かもね」と楓さんがこぼしていたことがあった。どこかで理系の研究者をしているらしい。


父親がいなくて、母親も母親らしいことができない。

そんな環境で俺を育ててくれたのは、じいちゃんだった。


料理が上手くて、家事全般をこなすだけでなく、模型を作らせたら右に出る者がいない伝説のモデラー。


俺はじいちゃんに育てられ、模型作りの技術もすべて教わった。

中学生になって、ホビー雑誌の人たちに、「これならアキラさんが作ったと言われても分からない」と言ってもらえるくらいには上達した。


でも、中学3年の夏休み最後の日。俺の誕生日のケーキの材料を買いに行ったまま、じいちゃんは帰ってこなかった。


交通事故だった。誰かを庇ったとか、暴走トラックが突っ込んできたとか……。

それからしばらくの間、じいちゃんがいないことを認めたくなくて、じいちゃんが亡くなったと聞いた言葉を理解できなくて。当時のことはほとんど覚えていない。


ただ、ご飯を食べ、掃除と洗濯をして、学校へ行き、勉強する。淡々と日々が過ぎていった。


楓さんが家事できなくて、するべき事が目の前にあった事は、良かったかもしれない。何もなければ、ただ無気力な人間になっていたと思う。


ご飯は、コンビニ弁当やスーパーお惣菜。不味いとは言わないが、じいちゃんの料理と違ってどことなく味気なかった。



高校は、家から一番近い北高へ行くことにした。


高校に合格した頃から、少しずつ気持ちの整理がついて、上手く笑えるようになってきた気がする。中学からの知り合いが多いのも、これから来る新しい高校生活に大きな不安なく、行けそうな気がした。


そして高校生活が始まり、特別な事なく過ぎていった

クラスに可愛いコが、多くてラッキーとか、隣がまた可愛いコで良かったとか⋯。


ただ、そこにいるべき人がいなくて。

ただ、そこで笑ってくれる人がいなくて。

でも、それはもう日常になっていて⋯


そんな平穏な日々の中で、俺は彼女――福原瑛里と本当の意味で出会うことになる。


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