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15.俺は瞬殺の魔術師


「次はスミ入れをやってみようか」

「スミ入れ……?」


ランナー跡消しで「美脚?」が完成した。


福原は「まだだ、まだ終わらんよ」なんて言うので、次のステップへ進むことにした。


福原との関係も次のステップに進みたいものだけれど……。まずは、名前で呼び合いたい。


スミ入れとは、パーツの溝などに黒やグレーの塗料を流し込んで、全体の陰影を際立たせるテクニックだ。スミ入れペンというのも売っていて、割と簡単にディテールアップができる。


「あ、ハミ出ちゃった」

福原が焦るが、スミ入れ作業はハミ出しながらやるものだ。……でも、なんだか、可愛い声で「ハミ出ちゃった」なんて、ちょっといいな。


「大丈夫だよ。綿棒やティッシュで拭けばすぐに取れるから」

「あ、本当だ。綺麗になる。……よし、もう一回やってみるね」

「おぉ、何回でも大丈夫だよ」

「あ、ところで藤井くんも失敗したりするの?」

「いや、そんなには失敗しないかな」


俺を誰だと思ってるんだよ。


「へぇ……。あ、でも昨日よりティッシュがめっちゃ減ってるけど……」


……。

言っている福原が真っ赤になっている。何か気づいたのか?


それは……ちが……わなくもないけれど。誰のせいだと思ってるんだ。「サービス、サービス!」のせいだって。


「塗料をぼかすのに使うんだよ」と言い訳しておいた。


でも、でもなぁ。

今夜もティッシュの使用量は減りそうにない……。


ーーーーーーーーーー


小学校の時、Dモンカードゲーム大会で、たまたま見つけたデッキ構築の抜け穴を使って優勝したことがあった。


三ターンで相手をハメ殺すそのデッキは、対策を組まれるまで、あるいは禁止指定されるまで無敵を誇った。


ついた異名が「瞬殺の魔術師A君」。


分かってる。分かってるよ。ダサいよね。


でも今は、知り合いのホビーショップの店長に「少年たちの夢を叶えてくれよ」と泣きつかれ、ショップ主催のDモンカードバトルの手伝いをしている。


準優勝の副賞は、俺らしい……。


とはいえ、商品と言うわけじゃなくて、俺のデッキ診断とカードプレゼント。


「憧れのA君にデッキ診断してもらえるなんて、少年たちの夢なんだよ」


……。まあ、いいか。世話になっているし。


迷っている俺に店長がとどめを刺した

「わかった。じゃあバイト代とは別に、このキットをあげるよ」

「店長、それは?」

「限定版、HG-MS07グク。どうだ」

「やります」


シア専ザフももうすぐ仕上がる。まだ終わらせないために、新しいキットが必要だ。


それに、あのコなら、絶対に喜んでくれるはず!



Dモンカードバトルは順調に終わり、表彰式の後、デッキ診断とプレゼントを渡す準優勝者を探した。


「洸也くーん。福原洸也君!」

福原……か。苗字としては、そんなに珍しくもないけれど。あのコの顔が頭をよぎる。


「洸也君、準優勝おめでとう」


どことなく似ている、可愛い少年だ。将来はイケメン確定だろう。


「ありがとう、A君!」

尊敬の眼差しは悪くない。悪くないが……。

「……まあ、A君って呼ばれるの、いい加減ちょっと恥ずかしいんだけどね。今日は、お姉ちゃんと来たの? って、えっ! えっ!」


そこには、いつもは会いたいけど、この場では絶対に会いたくない人がいた。


……。洸也君のお姉ちゃん?

福原瑛里……。

あ、そうか。福原洸也君だから、お姉ちゃんは……。


確かに顔が似ている。俺はしばらく固まってしまった。


福原は、気まずそうにしながらも、

「ははは。こんにちは、『A君』?」

絶対に面白がっていた。


「……えっ! ねーちゃん、A君と知り合い? あ、そっか、彼氏か! さすがは俺のねーちゃん!」

「いやいやいや! 違うってば。藤井くんは、ねぇ?」


彼氏? いやいやいや、って。やっぱり俺が彼氏なのは嫌だよな。

俺……A君だし。クソダサいし……。


「そうだよ、洸也君。福原……さんは、クラスが一緒で」


なんかもう、いっぱいいっぱいだよ。


「えー、ただのクラスメイトなのかぁ? ……ねぇ、A・スケ君!」


えっ。それって、ただのクラスメイトじゃないってこと? 彼氏……? ち、違うか。

名前呼びしてくれたが、何か変で⋯


「福原!? ……いや、まあ。あ、そうだ、デッキの話だよ!」


めちゃくちゃ照れてしまったけれど、仕事はしよう。これも限定キットのため。何より彼女のため。


「洸也君、なんで決勝で負けたか分かる?」

「サラマンドラが引けなかったから……」

「そうだね。君のデッキはサラマンドラの火力に頼りすぎているんだ。だから、このカードをあげよう」


そんな感じで説明した。福原の弟だから、レアカードもサービスしておいた。自分でもお気に入りだったけれど。


純粋な少年からの尊敬の眼差しは、悪くない。

俺も小さな頃はきっとそうだった。俺にとってのヒーローはじいちゃんだったけれど。


そんな存在になれたのなら、A君呼ばわりも甘んじて受けよう。


「えっと、じゃあ俺、撤収の手伝いがあるから。洸也君、またな!」


「うん、A君! 本当にありがとう!」

洸也君は、本当にいい子だ。俺をA君と呼ばなければ最高なんだが……。


福原にも声をかけよう。

「……ふく……っ」

洸也君からの期待に満ちた眼差し……。

「瑛里も、また明日な!」


瑛里って呼んでしまったけれど、なんだか嬉しそうな顔をしている。良かった。


「うん。また学校でね、エー君!」

はにかみながら言う瑛里。ご機嫌には違いない。

「……っ! 学校では、A君っての絶対に内緒だからな!」

「えー、どうしようかなぁ~」


笑い合えた。楽しい。


学校での「福原さん」に戻ってくれれば、A君の正体が広まることはないだろう……とは思ったけれど。


名前で呼ぶの、緊張しますよね⋯。


GQuuuuuuX一応組み上がりましたが、シール貼るの失敗⋯。塗るの?⋯今回は、組むだけって言ったじゃん。

こうなるとデカールの方が、貼りやすいかも⋯。


次は作りかけの姫路城を建設しようかな⋯。

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