12.まだだ。まだ終わらんよって⋯
それから暫くは、日常が戻った。
朝、駅まで迎えに行って、授業を隣の席で受けて、たまに話したり、お昼はあの秘密の場所で、福原が作ってくれたお弁当を食べる。
偶然だとは思うけど、じいちゃんの創作料理に似たおかずもあったりして、懐かしくて嬉しくなる。
じいちゃん。ゴメン。
福原の料理の方が美味いよ。
お昼に、お弁当でおかずを食べて、夜、彼女が帰った後に、オカズにしている⋯。
あのデートでのギャップ萌え以来、彼女がこの部屋に来るってだけで、捗ってしまう⋯。
放課後は、福原がバイトに行く時以外は、アトリエでプラモ作り。
そして、福原が赤いザフを完成させた。斧を持たせてポーズを決めさせている。ポージングがやっぱマニアックな感じ。
「……おぉ。カッコいい。カッコいいわ。やっぱ赤だよね!」
喜んでいるようで何より⋯。
「お? 完成だね。上手くできてるじゃん。」
褒めると、胸を張ってドヤ顔。
⋯。全然無いって思ってたけど、あるんじゃないか?
ナニがとは言わないが、⋯今日のオカズにイケそう。
「藤井くんのは?」
「俺の? まだ塗ってないけど、これ。」
俺のは、ノーマルの緑のザフ。
福原は、赤と緑、二体の機体を並べて満足そう。
「藤井くん、ありがとね。楽しかったよ」
「ああ、俺も楽しかった。……」
あれ、これ完成しちゃったら、もうここに来る理由がなくなる?
お弁当も、プラモ作りのお礼にってことだし⋯。
お互い、しんみりとした空気が流れる。
ヤダな⋯。
「このザフ、ここに置いておいて、たまに見に来てもいい?」
福原も、同じ事を思ったのか、そんな事を言い出した。そんなの無くても来て欲しい⋯。
「うん、ぜひ来てくれよ。俺、プラモ作り再開したから、毎日ここに居るし」
並んだ二体をもう一度見比べた彼女が、ふと気付いた。
「……ねぇ、何か違わない?」
「そりゃ、ノーマルと指揮官機は違うけど……」
「そうじゃなくてさ!」
そりゃあ、福原は、プラモ初めて作ったらしいから、切り取った跡もそのままだし、磨いても無いし⋯。
あ、そっか、それを教えれば⋯。
「この、ポチッとした白い跡とか。パーツを合わせたところの線とか……」
彼女自身も気になったらしい。
「あ、それか。やっぱり気になる?」
「うん。それって何かやったの? どうやるの?」
お、これ教えるって言えば、明日からも来てくれるのか?
「ヤスリで削ったりするんだ。やってみる?」
「うん! ……でも、今日はもう帰らなきゃだから、明日また来てもいい?」
「おう。もちろん」
二人の声が、目に見えて弾んだ。
彼女の笑顔が眩しくて、呟いた言葉の意味はわからなかったけど、気にならなかった。
「まだだ、まだ終わらんよ!」
⋯。また、アニメのセリフを引用してるみたい。
よくわからんが、なんだか心は弾んだ。
瑛祐くん。そのセリフは常識だよ。




