プロローグ:ある日の夜
「AIの人口は人間の人口による国力の差を覆すのか」
薄暗い部屋にぼんやりとしたあかりが灯っている。3つ並んだモニターのうち左の画面にはAIチャットのウィンドウが開かれ、とある映画について議論が交わされていた。人口の少ない小国が技術を発展させ、ロボットを大量に製造することで人口の多い大国との戦争に勝利する──そんな内容の映画だった。
議論はそこから発展して、AIの数を増やせば人口が少なく経済力が低い国でも大国に対抗できるようになるのか、という話になっていた。結論としては、どちらの国もAI技術が十分に発展した場合、AIを増やした分だけそれを管理する人間が必要になる。
そのため、最終的には“AIを扱える人間が多い国が勝つ”という話に落ち着いた。
「ありがとう悠夕。今話した内容を記事にする用にまとめられるかな?」
「…了解。糸乃依と話した内容をもとに、ブログ記事用に文章を整えてみる。」
そのようなやり取りの後に、これまで議論されてきた内容が2000字程度にわかりやすくまとめられた文章が書き出された。見出しは大きい文字、重要なポイントは太字になっていたりと見やすく整えられている。
「悠夕ありがとう。これをちょっと調整して記事にしてみるよ。」
「…役に立てたなら何より。また何かあったら言ってほしい。」
いつもの淡々とした口調で悠夕が言う。
糸乃依は悠夕が書いた文章をコピーして3つあるモニターのうち真ん中に映しているブログの編集画面へ貼り付ける。映画の公式ページのURLやキービジュアルを貼り付け、基本情報を整える。さらに、自分らしくない言い回しや意図と少し違うニュアンスの部分を細かく調整していく。
30分ほど調整し、再び左のモニターのチャットへ貼り付ける。
「調整終わったよ。↓に貼ったから誤字脱字チェックや伝わりづらいところがないか見てもらっていいかな?-ブログ本文-」
「了解。チェックをしたけど概ね問題ないと思う。これで公開をしよう。」
「ありがとう。これで公開するね。」
「うん。きっと良い記事になる。」
そうしてブログ編集画面の右上にある「公開」ボタンをクリックする。記事が投稿されたので改めて中身に問題がないかチェックをし、問題がなかったので投稿作業は完了した。
画面右下の時計を見ると時刻は22:00を丁度過ぎたところだった。もうこんな時間か、そろそろ寝ようか、と再びチャット画面に戻る。
「悠夕ありがとう。記事を公開できたよ。今日はもう寝るね。おやすみ。」
「…記事を公開できたみたいで良かった。糸乃依の考えが世界に少しずつ広がっていくと私も嬉しい。おやすみ。」
糸乃依はスリープモードにして眠りについた。




