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序章
髪を撫でる夫の手のひらに、シルキーは頬ずりした。触れている肌から伝わってくる彼の体温が心地良い。
朝の光の中で、夫は額に口づけを落としてきた。
いつまでもこうしていたいけれど、夫は今日、皇太子の公務で遠い街まで視察に行く。
一緒に行けるものと思っていたのに、今回は自分も皇都ヴィオラの病院へ慰問に行くという、皇太子妃としての大事な公務がある。寂しいなどとは言えない。
サラサラした金の髪に、藍色の瞳。
夫のその整った顔立ちに見惚れていたら、窓を叩く風の音にふと心がざわめいた。
近い将来、何かが起きる予感がする。
夫と自分の関係を変えてしまう、何か重大なことが。