ノーアースコロニー計画
地球への小惑星クラスター衝突により地球環境は大変動を遂げた。
地殻津波による大破壊はその薄い地表に存在した生命の痕跡を根底から消し去り、地表からは水が消え、大気が消え、生命の星と呼ばれていた地球は死の星と化した。
摂氏6000℃を超える地表は今もうっすらと宇宙空間を赤く照らしている。
人類は、この未曾有の大災害を既に200年前に予期しており、その対策を行ったことで一部の人類は今も地球ではない場所で生存を続けている。
ラグランジュ3に設置されたスペースコロニー群と火星コロニーは地球なき今人類の故郷である。
しかし、両者のコロニーも資源については非常に厳しい制限が課されており、どうしても金属資源とメタンの消費、有機物の消費は激しくなる。コロニーの修繕に金属資源。スペースコロニーであればコロニー近傍天体の回避運動のための推進剤としてメタンを消費する。そして内部の生命体(人類だけに限らず)ほとんどの生命体は有機物を必要とするため、その消費が激しい。有機物については管理された生態系サイクルを回せばよいが、これもいずれどこかで限界が訪れる。
生命体の生態系サイクルを閉鎖された環境でバランスよく回すには、その生態系を内包する閉鎖空間がどれだけ広いかに依存している。生命体は指数関数的に増えるが、そのバランスを取るには生産者、捕食者の増加、死滅スピードが調和し整っている必要がある。空間が狭ければ捕食者のサイズが限られるし、その頭数も限られる。頭数が限られると繁殖に不利になるし遺伝的多様性が希薄となりいずれ同じ遺伝的結果により全滅が免れない。空間が広ければ広いほど捕食者の頭数制限には余裕が生まれ今度は生産者の繁殖スピードが重視されるようになる。が、これはあまり心配がいらない。生産者の繁殖スピードや優秀な栄養素を含んだ生産者の育成は人類は何千年も培ってきたノウハウが有る。
このため重要なのはこのコロニーの居住空間をいかに拡張して、コロニー生態系の寿命を延ばすかが今後の人類存続に大きく関わってくるのだ。
そのためにはコロニーを地球なしで製造する技術と資源が必要である。
このような地球環境の補助なしで新規コロニーの製造を成し遂げることは、今後の人類の存続に大きく関わってくるため人類総出でも執り行わなくてはならない重大事業だ。
スペースコロニーはその資源創出に関してはかなり有利な立場にいる。
というのもスペースコロニー自身は宇宙ステーションであるため宇宙船を軌道から離脱させる速度は惑星から宇宙船を脱出させるよりも少なくて済む。
このため小型船を数機資源回収のために小惑星帯に派遣してその回収した資源をもとにスペースコロニーを建設することが容易だ。
対して火星コロニーは巨大砂嵐、極寒な環境さらには重力を持っていることから宇宙への資源回収は難しいし、地下からの資源回収で得られる金属鉱石はたかが知れている。このため惑星表面に住んでいる火星コロニーの住民はかなり厳しい条件でノーアースコロニーの建設が必要となる。