11 余波
アイギスは夜を生き延びたものの、その代償は大きかった。爆発と破壊工作は街を揺さぶり、その衝撃は瞬く間に広がり、深刻な事態を招いた。かつて活気に満ち溢れていた大都市は、今や恐怖の影に覆われ、人間とロボットの信頼は風前の灯火だった。攻撃を阻止できたとはいえ、あの夜の出来事の真の影響は、今まさに始まろうとしていた。
オリオンはネクサスの頂上にある塔の一つから街を見下ろしていた。太陽は昇り、スカイラインに淡い光を投げかけていたが、アイギスに漂う暗さはほとんど晴れていなかった。下の通りは不気味な静けさに包まれ、いつもの活気は不安な静寂に置き換えられていた。警備隊は通りをパトロールし、彼らの存在は、依然として迫り来る脅威を常に思い出させるものだった。
彼は街の景色から目を離し、近づいてくるマヤに視線を向けた。彼女の表情は険しく、緊迫感を漂わせていた。彼女は最新のレポートが載ったタブレットを彼に手渡した。「街は封鎖されているわ」彼女は言った。彼女の言葉には、状況の深刻さが表れていた。「エラ評議員が1時間前に命令を出したの。何とかコントロールしようとしているけど…」
オリオンは頷き、タブレットに目を通した。前夜にヘイルが仕掛けた混乱は、市民の中に恐怖と疑いを植え付けた。人々は怯えていた。そして、その恐怖の中で、彼らは互いに攻撃を仕掛け始めたのだ。人間とロボットの衝突事件は増加し、評議会は秩序維持に苦慮していた。
「評議会は、どのように対応するかで意見が割れているわ」マヤは続けた。「攻撃に関与していないロボットに対しても、より厳しい対策を要求する者もいれば、さらに厳しい措置をとれば事態が悪化するだけだと懸念し、抑制を訴える者もいるわ」
オリオンはタブレットを強く握りしめながら尋ねた。「ヘイルは?」
マヤはためらった。「彼は攻撃以降、静かだったわ。あまりにも静かに。でも噂はあるわ。一部の人は、まだ陰謀を企んでいると言う。また、隠れていると言う人もいるわ。誰も確かなことは知らないわ」
オリオンはタブレットを置き、頭の中が駆け巡った。ヘイルの沈黙は不気味だった。彼はその男を過小評価しないようにしていた。ヘイルは混乱を招くために攻撃を仕掛け、彼らが最悪の事態を防いだとしても、街は今、瀬戸際に立たされていた。彼はきっと、再び攻撃する好機を窺っているだろう。
「彼を見つけなければ」オリオンは断固たる声で言った。「彼が次の行動を起こす前に」
マヤは同意して頷いた。「彼を突き止めようと、ずっと調査しているわ。だけど、彼はうまく足跡を消しているわ。時間が必要になるわ」
「時間は味方じゃない」オリオンはつぶやいたが、マヤが精一杯努力していることを知っていた。彼はマヤの肩に手を置いた。「私たちは彼を見つけるでしょう。そうしなければならないのです」
マヤが仕事に戻ると、オリオンの考えは評議会に向かった。評議会のメンバー間の分裂は深まっており、刻々と状況は不安定になっていた。すぐに何かをしなければ、アイギスに残っていたわずかな平和は砕け散り、ヘイルはまさに自分が望んでいたものを得るだろう。
オリオンは、すでに緊急セッションが開かれている評議会室へ向かった。彼が部屋に入ると、部屋には緊張感が漂っていた。評議会員たちは熱心な議論に熱中していた。抑制を求めていたエラ評議員は、疲れてはいるものの、決意に満ちた表情をしていた。一方、ヴォス評議員は、より過激な措置を求めており、その声には苛立ちと恐怖が混じっていた。
「ただ座って何もできないわけにはいかない!」ヴォスはオリオンが席に着く際にそう言い放った。「これらの攻撃はほんの始まりに過ぎない。ヘイルとその仲間たちは、この街をバラバラにするまで止まらないだろう。我々は力を示す必要がある。そうでなければ、完全にコントロールを失ってしまうぞ」
「じゃあ、どうするつもりなの?エラ」エラは鋭い口調で反論した。「もっとロックダウンをかける? 街にセキュリティを強化する? それはまさにヘイルが望んでいることよ。彼は私たちを挑発して、過剰反応させようとしているのよ。彼の思う壺にはまれないわ」
ヴォスは顔をしかめた。「エラ、じゃあどうすればいいんだ? 座って、うまくいくことを祈る? 人々は怖がっている。私たちは彼らを保護できることを知らしめる必要がある」
オリオンは咳払いをして、評議会の注意を引き付けた。「私たちはヘイルの即時計画を阻止した。しかし、街は依然として不安定だ。もし私たちが強引に進めれば、守ろうとしている人たちを疎外しかねない。私たちはバランスを見つける必要がある。力を示すこと、そして、私たちがコントロールしていること、恐怖に支配されないことを示すこと」
エラは同意して頷いた。「オリオンの言う通り。私たちは人々を安心させる必要があるわ。彼らを締め付けるのではなく、解決策に向けて努力していることを示すことで。ヘイルは私たちを分裂させ、互いに敵対させようとしているのよ。彼に成功させてはならない」
ヴォスはためらった。彼の視線はオリオンとエラの間を行き来していた。ついに彼はため息をつき、肩を落として諦めを表した。「まだ、甘すぎるとは思うが、君の言うことには理がある。オリオン、君の計画は何だ?」
オリオンは深呼吸をした。「私たちは人々に直接訴える必要がある。評議会からの公の演説で、昨夜何が起こったのか、さらなる攻撃を防ぐために何をしたのか、そしてこれからどのように進んでいくのかを説明する必要がある。私たちは透明性を持たなければならない。彼らに隠すものはないことを、私たち全員が同じ船に乗っていることを示す必要がある」
エラは考え込んで頷いた。「そして、セキュリティ対策は?」
「今のところ、維持する」オリオンは答えた。「しかし、それは一時的なものであり、すべての人々の安全のためであることを強調する。私たちは信頼を再構築する必要がある。それはコミュニケーションから始まるのだ」
ヴォスは依然として懐疑的だったが、頷いた。「わかった。今のところは君のやり方でやってみよう。しかし、事態が悪化したら、より強い措置をとる必要があるだろう」
オリオンは、今の状況でできる最善の妥協だとわかっていた。評議会は街と同じように火薬庫であり、火をつけるにはそれほど時間はかからないだろう。しかし、今は計画があり、それは何かしらの意味があった。
評議会が解散すると、オリオンはエラを別室に呼び止めた。「私たちは、ヴォスと、より極端な措置を求める他のメンバーを監視し続ける必要がある。もしヘイルが再び動き出したら、彼らはバランスを崩すかもしれない」
エラは頷き、険しい表情をした。「わかっているわ。彼らを抑制するためにできることは何でもするわ。しかし、時間はなくなっているわ。街は不安定で、それを押し倒すにはそれほど時間はかからないわ」
オリオンの視線は窓の外に向けられ、雲に覆われた空の下に街が広がっていた。「私たちはヘイルを見つけるだろう」彼は静かに、エラよりも自分に向けてそう言った。「そして、見つけたら、私たちは彼を終わらせるだろう」
オリオンが議場を離れると、彼の内側に落ち着き払う不安感が消えなかった。街は、希望と決意によって支えられた壊れやすいものであったが、それを引き裂くにはそれほど時間はかからないだろう。ヘイルの沈黙は不気味だったが、さらに不安だったのは、彼がまだ外にいること、そして次の行動を企んでいることだった。
ネクサスに戻ると、マヤが新しい情報を持って彼を待っていた。「手がかりを見つけたわ」彼女はオリオンが近づくとそう言った。「大したものではないけど、何かしら。外れの地区の一つで活動が活発化しているわ。物資の搬入出があり、登録されていないドローンがその地域をパトロールしている。ただの偶然とは思えない」
オリオンは希望の光を感じた。「隠れ家かもしれない。もしヘイルがそこにいると確認できれば、彼が反応する前に突入できる」
マヤは頷き、決意に満ちた表情をした。「掘り下げて調べて、正確な場所を突き止められるか見てみるわ。もしヘイルだったら、迅速に行動する必要があるわ」
オリオンは彼女の肩に手を置いた。「そうする。ここまで来たんだ、彼に勝たせるわけにはいかない」
二人は協力して、ヘイルにたどり着く手がかりを繋ぎ合わせていった。オリオンは、街の未来の重さが自分の肩にのしかかっていると感じずにはいられなかった。アイギスは危機に瀕しており、次の行動が、彼らが戦ってきたすべてのものを成敗するか、決定するのかもしれない。
オリオンとマヤが作戦に出動する準備をしていると、夕日が沈み始めていた。街には長い影が落ちていった。彼らは場所、計画、そして攻撃の準備ができたチームを持っていた。彼らに必要なのは、機会だけだった。
そして、その時が来たら、彼らは準備万端だった。