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8.ドロシーの変化

「ううん……」



 体全体が重いのは気のせいではないだろう。たくさん寝たというのに疲れが取れ切っていないというのがわかる。すっかり暗くなっているのか、うっすらとランプの灯がともっているくらいでろくに見えやしない。

 そして……俺は自分の横に暖かいぬくもりと甘い匂いを感じる。



 うおおおおお!!? まさか、ナルヴィが看病して添い寝してくれているのか?



 そう思って興奮気味に……だけど、少しびくびくしながら、抱きしめると……あれ、感触がない? ちょうど胸の部分に手が……と思ったがかすかな柔らかさがあるだけである。



「あ……♡」



 背中かな? と思っていると耳元で少し色っぽいうめき声が聞こえてきた。やっぱり俺が抱きしめたのは胸元であっている。

 じゃあ、これは……



「お義兄様!! 目を覚ましたんですね」

「よかったです、ずっと寝てらしたんですよ!!」



 俺が起きたに気づいたからか、明かりがついて当たりの様子がわかった。横に添い寝していたドロシーと、ベッドのよこにある椅子にすわって様子をみていたナルヴィが同時に歓喜の声をあげてくれたようだ。

 ドロシーは一体どうしたことか俺を離すまいとぎゅーっと抱きしめている。嬉しいっちゃ嬉しいが胸の感触は皆無である。



「うふふ、すっかりドロシー様はすっかりグレイブ様に懐かれましたね、おなかすいていると思いますのでお食事をお持ちいたしましょう」

「お義兄様……もう、目を覚まさないかと思いました……本当によかったです」

「え、ちょっと……」



 嬉しそうな笑みを浮かべて、調理場の方へと向かっていくナルヴィに声をかけるが悲しくも届かない。



 あれ? ゲームと展開ちがくない? ナルヴィとのありがとセックスは? てか、なんでドロシーってばこんなにデレてるの?



「よかったです……私の魔法のせいでお義兄様があのまま目を覚まさなかったら……」

「大丈夫だって言ったろ? ドロシーは心配性だなぁ」

「そうですよね……私の力を……お義兄様は祝福だって言ってくださいましたもんね……」



 やたらと「祝福」という言葉を強調して。嬉しそうに俺の胸元で顔を押し付けてくる彼女の頭を撫でてやる。

 まあ、義理とはいえ妹だし、こう懐かれるのは悪い気はしない。貧乳だから緊張もしないしな……しばらく、彼女の好きにさせながら、ステータスを確認する。

 へファイトスの加護を得たのだ。俺もだいぶマシになっているだろうと思いながら……



「なんじゃこりゃ?」



 だけど、情けない声をあげてしまった


-----------------------------------------------------------------


グレイブ=アンダーテイカー


☆職業 


アンダーテイカー家の長男


☆加護


NEW 

へファイトスの加護 強い性への渇望によって目覚める。。


 優れた能力を持ちながらも、その見た目から異性に嫌われていたへファイトスがあなたの童貞力に共感し加護をあたえました。



スキル


鍛冶LV1 →鉱物の支配者に進化

剣術LV2


加護スキル


NEW

鍛冶師の目:鉱物の弱点及び特性を見抜くことができる

耐炎:炎への耐性

鉱物の支配者LV1:触れたことのある魔力を持つ鉱物で、自分の想像できるものを作成することができる。一度触れた鉱物は手元になくとも作成することができる。


現状の作成可能な鉱物


ミスリル


バッドステータス


女難:相手が女性だと緊張しちゃって全力が出せずステータスダウン。

性への渇望:異性への愛を求める力をステータスおよびへファイトスへの加護へと変換。強力なステータスアップを得るが、童貞を失うことによって、全ての加護を失う。


---------------------------------------------------


「お義兄様……?」


 ドロシーが怪訝な声を上げるがそれどころではなかった。なんだよ、この『性への渇望』ってのは!! ようは俺は童貞を失うと同時にクソ雑魚になるってことじゃねえか。へファイトスのやつまさか女性に囲まれている俺に嫉妬してこんな加護を渡してきやがったのか……



「てか、そういうことかよ……」



 グレイブが加護なしだった理由がよくわかった。あいつはハーレムの代償にへファイトスの加護を失い、その代わりに邪神から、洗脳という加護を新たにもらったのだろう。

 そして、これが意味することは俺がセックスをすれば今の加護を失うということでもある。



「お兄様……どうしたんですか? 怖い顔をしてますよ」

「ああ、悪いな……夢をかなえるのは大変だなって実感しただけだよ」

「夢……ですか……」



 俺の言葉にドロシーが大きく目を見開いた。彼女にはとてもじゃないが、爆乳ハーレムのことは言えない。

 だけど、俺の覚悟はとうに決まっていた。


 爆乳ハーレム要員の少女たちの好感度を稼いで完全に惚れてもらってから、童貞を卒業すればいいのだ。幸い俺にはゲーム知識があり、強力な力を持つ爆乳な女の子にも何人も候補は思い浮かぶ。

 俺がにやりと笑っていると、ドロシーが少し興奮した様子で声をかけてくる。

 


「お義兄様……私もお義兄様の夢をかなえるのを手伝わせてください。私の加護はそのためにあると思うのです!!」

「え……? ああ、たのむ……よ?」



 以前までのドロシーが冷徹な感じはどこにいったやら熱い感情のこもった視線をむけてくる。いや、爆乳ハーレムを作るための加護ってなんやねん。お前、絶対俺が爆乳ハーレムを作るって言ったらぶちぎれるだろ?

 なんか勘違いしているなぁと思いつつもうなづくことしかできなかった。俺は彼女の誤解を解かなかったこと後になって後悔することになる。




「お義兄様あーんしましょうか? こちらのスープはとても美味しいですよ」



 ドロシーの変化は朝食からおきていた。珍しく彼女が俺と食事を共にしたいと訴えてきたのである。それだけじゃない……

 彼女はなぜかデレデレな上に俺の膝の上にのって甘やかしてくるのだ。



「どうしましたか?」

「いや、なんでもないぞ……」



 むしろ、お前がどうしたんだよとツッコミたいが何とか抑える。そして、俺は心の中で叫ぶ。


 ゲーム本編のヤンデレ貧乳ヒロインが無茶苦茶デレてきたんだけどいったい何があったんだ?

『大切なお願いがあります』

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[一言] 童貞捨てないでもできることたくさんあるから大丈夫大丈夫
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