46.エレノアとグレイブ
ドロシーとナルヴィの二人とイチャイチャしようとしたタイミングでやってきた突然の乱入者に俺たちはとっさに離れる。
義理とはいえ兄妹がいちゃついているのに『ついにやったな』とばかりにガッツポーズをして去っていった父上はどうでもいいが、もう一人の相手が問題だ。
彼女の名前は『無垢なる聖女』エレノアといいこのゲームのメインキャラクターの一人である。そう、メインヒロインではなくメインキャラクターなのだ。もちろん、これだけの爆乳を持ちつつもヒロインになれなかったのには大きな理由がある。まあ、それはさておきだ……
どうしようと困惑している二人に変わって口を開く。
「これはこれはエレノア様ではないですか!! お見苦しいところをお見せいたしました。今、俺たちは食後の運動をしていたのです」
「なんと……貴族の方々は変わった風習がありますのね。これにはどういった効果がありますの?」
「はい、舌の運動とお互いの体温を感じあって、体調不良に気づきやすくするんです」
「なるほど、さすがは英雄様ですわ。普段から体調管理にきをつけてらっしゃるのですわね」
たんに抱き合ってキスをしていただけなのだが、俺のでまかせに感心したばかりに頷くエレノア。
ふはははは、やはりこの子は原作通り性への知識が皆無なようだな!!
『無垢なる聖女』はとある理由でエッチなこととは無縁に育てられているのである。
これでこの場面は切り抜けられそうだ。ほっと一息ついた時だった。エレノアが良いことを思いついたとばかりに微笑みながらいった。
「では、私もその運動に混ぜていただきたいですわ。郷に入っては郷に従え言いますからね」
「え……」
予想外の提案に俺はつい間の抜けた声を上げてしまう。豊かすぎるその胸元はナルヴィに勝るとも劣らない。だが、聖女かつ無知だというのはまた別の味わいがある。
そう思ってにやっとした時だった。
「いってぇーー」
首元をドロシーが軽くかみつきやがったのだ。
「エレノア様……申し訳ございませんが、この運動は親しい人間でのみやること行為なのです」
「あらあら、それは残念ですわね……あら、あなた……」
ドロシーの言葉にちょっと寂しそうにしたエレノアだったが、目を大きく見開くと、こちらのほうにかけよってきた。
「我に加護を与えしヘスティアの名において、汝の病を治さん」
「え……」
エレノアが手をかざすとまばゆい光にドロシーが包まれる。いったいどうしたというのか? その疑問はすぐに明かされる。
「なんでしょうか……頭が軽くなったような……これは……?」
「あなたはわずかですが何者かに精神干渉が受けていたようですわ。今完全に浄化したのでご安心くださいな」
どうやらイリスの催眠がわずかに残っていたようだ。ああ、じゃあ、さっきまでのドロシーの言動は催眠の影響があったからだろうかと……ゲームの時のことを思いだしてみる。
いや、多分遅かれ早かれこうなった気はするな……好意を持った相手にドロシーはヤンデレになる。これは人が死ぬのと同じ避けられない運命である。
それよりもだ。エレノアにはエッチなことを覚えさせてはいけない理由があるのだ。今は百合ハーレムとなっているこの屋敷に滞在しては悪影響しかない。
さっさと要件を聞いて帰ってもらうのが一番だろう。
「それでエレノア様がわざわざ辺境の地へいらっしゃったのはどうしたのですか?」
「ええ、このたび、わたくしエレノアはグレイブ様の専属の神官として派遣されることになりましたの。よろしくお願いいたしますわ」
「グレイブ様、すごいです。聖女様がうちにいらっしゃるなんて……これもあなたの活躍が認められたからですよ!!」
「お義兄様の専属……」
綺麗な所作で頭をさげるエレノアに、感動したとばかりに俺に微笑むナルヴィ。目からハイライトがきえていくドロシー。だけど、俺は内心むっちゃ冷や汗をかいていた。
エレノアの聖女としての力は本物だ。彼女がいるからこそゲームでも邪神を封じることができたのである。
「まずい……これはまずいぞ……」
加護にはメリットがあるようにデメリットがある。『処女神へスティア』の加護をうけている彼女はその処女を失うと同時に加護を失うのだ。
神様やべえよな。処女厨か?
「よろしくお願いしますわ。グレイブ様」
微笑みながらお辞儀をすると同時にぶるんとゆれる聖女ッパイを見て思う。俺は無知な爆乳聖女様が繰り出される攻撃に耐えることができるのだろうかと
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