42. VSイリス
下半身を露出しながら敵に斬りかかるグレイブをナルヴィは熱い視線で見つめていた。恥ずかしいはずなのに自分にそれを一切感じさせずに戦っている姿に思わず胸が熱くなるのをかんじる。
まあ、もっている武器はあれではあるが……
「野蛮な男がそのけがらわしいものをしまいなさいですわ!!」
「ふははは、お前はそのけがらわしいものに負けるんだよぉぉぉ!!」
柱を放り投げて逃げ惑うイリスをグレイブは先ほどまでのお返しとばかりに嬉々として追いかけている。その様子に安堵の吐息を漏らしたナルヴィはドロシーの元へと向かう。
「ドロシー様、これをお飲みください」
「……」
イリスの催眠のせいか動かないナルヴィの口を無理やり開けさせて急いで調合した薬を飲ませる。多少強引になってしまったが緊急事態である。
そして、ドロシーの瞳に徐々に感情がこもっていく。
「ナルヴィ助かりました……この私が催眠ごときにかかるとは……不覚を取りましたね」
「いえ、突然の奇襲だったんです。それにドロシー様は私を守ってくださったじゃないですか」
敵に奇襲された時にとっさに魔法を放って、大きさ音を立てたのはドロシーの魔法だった。余裕たっぷりのイリスに違和感を覚えた彼女は戦うよりも助けを呼ぶことを選んだのだ。あれがあったからこそ、外出中のグレイブたちもすぐにやってくることができたんだと思う。
「ありがとうございます。そう言っていただけると心が軽くなります」
そう言ってナルヴィににこりとほほ笑んだドロシーだったが、逃げ惑っているイリスを見つめると迫力のある笑顔を浮かべる。その瞳はナルヴィに向けたときとは違い一切氷のように冷たかった。
「それよりも乙女の秘密を暴いた失礼な輩にはお礼をしないといけませんね。あの人は男性のち……急所が苦手なようです。だったら……」
男性のとある部分を言いかけて、恥ずかしくなったのか、慌てて、言い直すドロシー。彼女はそのまま魔法の詠唱をはじめる。
当りの気温が低下して空中に氷が生み出されていく。
「これは……」
ナルヴィが驚きの声をあげるのも無理はないだろう。圧倒的な量の氷が作り出されて……しかもそれがすべてチ〇コの形をしていたのだ。
しかも、先ほど目撃したグレイブのものとそっくりである。
「うふふふ、催眠などで私の気持ちをもてあそんだ罪ちゃんとつぐなっていただきましょう!! 敵を貫け、氷の槍!!」
「きゃぁぁぁぁ、けがらわしいものがふってきますわーーー!!」
「うおおお、ゲートオブバビロンみたいな勢いでチンコがふってくるぅぅぅ!? 寒いよう!! てか、このチンコ、むっちゃ見覚えがあるんだが!?」
氷のチンコがグレイブとイリスの距離があいた瞬間を狙って彼女に降り注ぐ。かつて人には魔法がうてないと悩んでいたドロシーも成長したものである。
「ひぃぃぃぃ、ばっちい、ばっちいですわーーー!!」
「うふふ、この世に生まれた事を後悔してください」
周りをチンコに囲まれて発狂するイリスだったが腕を振りまして壊すがこわしてもこわしても据わった目をしているドロシーの生み出すあらたな氷のチンコが降り注ぎ、地獄のような無限ループとかしていた。
「もういやですわーーーーー!!!」
「隙あり!!」
途切れのないチンコの嵐に体力がつきたイリスが発狂しながら最後の力を振り絞ってドロシーたちに攻撃しようとした時だった。ずっと観察していたグレイブが剣を振りかぶり先ほど負傷していたイリスの足をつらぬくと、そのまますっころんだ。
「ドロシー―!! こいつを拘束しろ」
「お任せください!! 水の牢よ、我が敵を包め!!」
水の球がイリスを覆うと体力をつかいきったためかぬけだせず水中でもがく。しばらく抵抗していたが、やがて息が続かなくなったのか微動だにしなくなった。
「よくやったな、ドロシー」
「そんな……お義兄様の指示に従っただけですよ」
敵を倒したグレイブが真っ先にドロシーにかけよって、優しく頭をなでる。その姿は妹のがんばりを褒めている微笑ましいシーンのように見えるが、なぜかグレイブは内心ちょっとビビっているように震えていた。
そしてそのシーンを見たナルヴィの胸に少しもやりとしたものがよぎる。
「私はなんでうらやましいなんて思っているのでしょうか……?」
自分は大切にしてもらっているとはいえただのメイドである。そんな気持ちを抱いてはいけないと自分に言い聞かせている時だった。
グレイブが彼女の方を見てほほえんでくれた。
「ナルヴィの解毒薬のおかげで助かったよ。やっぱり頼りになるな」
「……ありがとうございます」
解毒薬という言葉に口移しで飲ませたことを思いだしてしまいさっと視線をそらして赤面するナルヴィ。そういえばこれはファーストキスに入るのだろうかなどと思ってしまう。
そして……グレイブとならば悪くないなどと思ってしまう自分に驚く。
「あとはベロニカか……」
グレイブはいまだ金属のぶつかり合う方を見て、険しい顔をするのだった。
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