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40.イリスの力

「ちょっと待った!! ストップ!! ストップですの!!」

「……」



 いきなりドロシーに襲われて、あわてて命令を撤回するイリス。もちろんその隙を逃すほど俺は愚かではない。



「よっしゃ、隙ありぃぃぃ!!」

「ちぃぃぃ。小癪な!! ですわ!!」



 さすがは六奇人といったところだろうか? イリスは俺の一撃を扇でうけながしてきやがった。しかも、これはただの扇ではない。



「はぁ? 鉄扇かよ!?」

「貴婦人のたしなみですわ!! ふん!!」



 イリスが手慣れた手つきで鉄扇をふりまわす。そもそもこいつとはゲームでもまともに戦ったわけではない。こいつの操った敵と戦い一定のターンを凌げばナルヴィが解毒薬を作り終えて無効化するというイベントバトルだったのだ



「けがわらしい男は死になさい……ですわ!!」

「結構やるな。だけど!!」



 イリスの一撃をかわし、腕が伸びきって力が抜けた瞬間に剣を切り上げると彼女の手から鉄扇が離れて宙に舞う。

 意表こそつかれたが接近戦ならば俺の方が上だ。




「お前が踏みにじった先生の力に負けるんだよ」

「くっ、やってしまいましたわ……なーんて、『眠りなさい』」

「は……?」



 いきなりすさまじい眠気におそわれるとがくんと膝から崩れ落ちてしまう。なんで……鐘はすでに壊したはずなのに……



「うふふふ、あなたは勘違いしているようですわね。わたくしの能力は音魔法ですの。あの鐘はあくまで増幅装置にすぎませんわ。あなたはわたくしという人間とたーっぷりおしゃべりをしたでしょう」

「くそが……声もトリガーだったのかよ……」



 俺は最後の力を振り絞って己の膝を剣で貫く。鮮血と共に痛みがおそってくるが、意識がはっきりとしてくる。第一段階である欲望開放の状態ならばまだ何とかこれで対抗できるはず……



「うふふ、男のくせにやりますわね。でも、そうやって眠らないようにするのが限界でしょう?」

「それはどうかな!!」



 魔鉱石で造られたナイフを咄嗟に作り出してイリスに投げつけるが眠気のためか、狙いがぶれて頬をかすめただけだった。

 くっそ……何とかもう一度スキをつかないと……



「あなた……野蛮な男の分際で私の美しい顔に傷を…… 絶対に許しませんわ!!」



 イリスは己のほほを撫でて鮮血を確認すると憤怒の形相でこちらを睨みつけてくる。ちょうどいい、怒りは判断を鈍らせるはずだ。



「お前だって色々な人を傷つけてきただろうが……それに厚化粧だからか傷もあんまリ目立ってないぞ」

「お黙りなさい!! わたくしは野蛮な男しか傷つけてませんもの、あなたとは違いますわ!! ただでは殺しませんわ!! じっくりと苦しめて殺してやりましょう」



 イリスはあたりを見回して、床に倒れているナルヴィをみるとにやりと笑った。その表情に俺は嫌な予感がした。



「一体何を……」

「そうですわね……あなたはこの子を助けに来たのでしょう? ならばこの子にあなたを殺させるなんて最高じゃありませんこと? そこの胸の大きいメイドさん……『あなたのご主人様はわたくしですわよ。こっちにきなさい』」

「はい……わかりました……」



 イリスが命じるとナルヴィは顔をうつ向かせたままおきあがるとそのまま彼女の方へと歩いていく。




「うふふふ、どうですの? あなたが助けようとしたメイドはもうわたくしのものですわよ。こーんな命令だって聞きますわ。『服を脱いでわたくしにみせなさい』」

「な、おまえ……」

「はい、わかりました。グレイブ様……いつものようにご奉仕させていただきますね」




 俺に背を向ける形でイリスの方を向きながらナルヴィがメイド服を脱いでいくのが目に入る。くそがぁぁぁぁ、俺のナルヴィが百合NTRされてしまう……

 


「うふふ、なんて美しく、魅力的な体なのでしょう? 男どもに蹂躙されていたなんて悲しいですわ。わたくしが上書きしてあげますわ」



 下着姿になったナルヴィをイリスがうっとりとした表情で見つめている。力を振り絞って顔をあげると、彼女の大きく魅力的なおしりが目に入る。

 くっそ、ここからじゃ。おっぱいが見えない……



「やめろ……ナルヴィは俺の大事なメイド(ハーレム要員)なんだ。手を出すな……俺のことはどうししてもいい。だけど、彼女には手を出すな!!」

「ふーん、ただのメイドじゃないとは思ったけれど、相当この子が大事なようですわね。ならちょっと趣向をかえてみましょうか」



 俺の振り絞った声にイリスが嗜虐的な笑みをうかべるとさきほど俺が作り出したナイフを持たせてナルヴィの耳元でささやく。



「『この男をそのナイフで刺してくれないかしら?』 おわったらたっぷりご褒美をあげるわ。あなたが感じたこともない快楽をみせてあげるわ」 

「はい……楽しみにしております」



 イリスの言葉にナルヴィが嬉しそうにほほ笑むと彼女は顔を真っ赤にしたままナイフを片手に俺の方を振り向く。メイド服を脱いで下着姿になった彼女の胸がぶるんぶるんと揺れているのが見える。ベロニカとは違って鍛えていないため、全体的に柔らかそうでなんとも魅力的だが、さすがに凝視するわけにもいかないだろう。



「さあさあ、やってしまいなさい!! その後はあなたを桃源郷に招待しますわーー♡」

「はい、お任せください」

「ナルヴィ……」



 ナルヴィは俺の方へとやってくると、そのまま俺の頭をもちあげてこちらの顔をじーっと見つめる。そして、そのままナイフをふりかぶって……



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