35.イザベラの思惑
「きさまはあのときの……」
「まったく食事の時くらいは静かにしなさいと教わらなかったのかい? 邪魔をするというのなら私にも考えがあるけどねぇ?」
「ベロニカ落ち着け!! おそらくこいつはすでにしこんでいやがる」
にやりと笑って足元の杖に視線をおくるイザベラに嫌な予感を感じた俺は、あわててベロニカを制止する。
「ふふ、良い判断だよ。ちょうど君に話があったんだ。せっかくだ二人とも座りたまえ。ここはおごってあげるよ」
「付き合ってやろう。その代わり俺の騎士がお前を監視していることを忘れるなよ。ベロニカ!!」
カレーを食べながら椅子を勧めるイザベラに俺は困惑しながらも従う。その時にいつでも動けるようにと、ベロニカに目で合図をすると彼女はまじめな顔でうなづいて……
「言葉には甘えよう。だけど、私はグレイブの騎士だからね。正装で挑ませてもらおうよ」
その一言共にばーっとドレスを脱ぐと買ったばかりの水着を身にまとった豊かな胸元とお尻があらわになる。
いきなり現れた痴女に客たちがこそこそと話し合っているのがわかってしまう。
むっちゃ視線をかんじるんですけどぉぉぉぉ!!
「え、お前何やってんの?」
「これが私の騎士としての正装だ。悪いがこの格好で同席させてもらう。ふふ、周囲の視線が実に痛い。ああ、主よ!! これがあなたの狙いだったんだね!!」
「あはははは、実にいい!! 実にいいよ、グレイブ=アンダーテイカーとその部下よ!! 君たちは常に私の予想を超えてくる!! ああ、こんなの思わず達してしまう!!」
ベロニカが顔を真っ赤にしながら発情し、イザベルがカレーを食べながら愉悦に満ちた笑みをうかべ嬌声をあげる。
何このテーブル。まじで変態しかいないんだけど!!
俺が店員に助けを求めようとすると……さっと目をそらされる。
「うう……カフェの雰囲気が……だが、領主さまのご子息に逆らうわけには……てか、おっぱいでっか!!」
イザベルのやつが大声で俺の名前を叫んだから正体がばれてんじゃねーかよ!!
「もうどうでもいいから、要件を言えよ。お前はなんか用があったからうちの領地に来たんだろ」
「ああ、そうだった。あまりに愉快だから思わず本題を忘れることところだった」
周囲の視線に耐えられずに、俺が話題をかえるとイザベルがコーヒーを味わってから口を開く。
「ふふふ、ここのカレーはあれだったがコーヒーはなかなかのものだね。潰すことにならなくてよかったよ」
「それはどういう意味だ」
「君の父君は今頃王都だろう? そして、君はここにいる。つまり……領主の館は今頃無防備なわけだ」
イザベルがにやりと笑う。そして、その言葉の意味することは……すさまじい轟音があたりに響く。この方向はまさか……
「君は私たちを敵に回しすぎたということさ。今頃、私とは別の六奇人が君の屋敷を襲撃しているだろうよ」
「なっ……」
「彼女の名前は『世界の改変者』その加護はすべての認識を強制的に変えさせる。たかが凡人にすぎない君に勝ち目があるかな!!」
楽しそうに笑いながら驚愕している俺を見つめるイザベル。
「主早く行こう!! ドロシーたちが心配だ」
「いや、待て。ベロニカ」
この前の戦いで六奇人の厄介さを知っているベロニカがせかすが、どうしてもひっかかることがあり俺はイザベルに話しかける。
「おやおや、急いでいるんじゃないかな? それでも私に何か質問でもあるのかなぁ?」
「お前はなんで俺と戦わなかったんだ? お前が邪魔をすれば『世界の改変者』はより確実に屋敷を潰せただろ?」
俺の質問に楽しそうに……愉しそうにイザベルは笑う。
「ふふ、わかってないなぁ。それじゃあ、つまらないじゃないか!! ただの人間にすぎない君が六奇人相手にどう戦うのか見たいのさ!! だって、私だけじゃなくて彼女も倒せば君はまぐれではなく本物のイレギュラーってことだからねぇ!!」
その好奇心に満ちた瞳はまるで俺に何かを期待しているようで……不気味ながらも今の彼女は俺の敵ではないとなぜか確信できた。
「そうか、俺の力をみせてやるよ」
「ふふ、楽しみにしているさ。ここでコーヒーでも楽しんでいるよ」
そして俺はベロニカと共に屋敷へと戻る。幸いにも『世界の改変者』の能力はわかっている。彼女の能力は催眠であり、ネットでの通称は『クレイジーサイコレズ』である。
ドロシーたちが無事ならいいのだが……
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『世界を滅ぼす冷酷無慈悲なラスボス令嬢(最推し)の義兄に転生したので、『影の守護者』として見守ることにしました〜ただし、その正体がバレていることは、俺だけが知らない』
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破滅フラグしかない推しキャラを守る勘違いものです。
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