20.VS ラスボス?
どうやら俺たち以外はキチーク? が放つ魔力の波動によってみな意識を失ってしまったようだ。死んでないよな……? とはいえ、俺も余裕はない。
「お兄様……大丈夫ですか?」
「ああ、なんとかな……」
「ああ……無理やり押し付けられる感覚……なにかに目覚めてしまいそうだ♡」
力を振り絞って声をあげるドロシーを安心させるように微笑む。なんとか首を動かすくらいはできるが、それ以上はろくに動かせない。横でベロニカが何か言っているがめんどいのでスルーする。
でも、謎の力によってつぶされてる爆乳ってエロいよな。
『我が先兵の妨害をした罪は……痛たたた? なんだこれは、尻の穴が痛いぞ!?』
先ほどまで威厳のあった天の声から威圧感が消え、キチークの体を乗っ取ったティポーンが尻を抑えながら悲鳴を上げると、不思議と体を襲っていた不可視の力も弱くなっていく。
『くっ、この体ではろくに力も使えんか……? まあいい、厄介な力を持つ貴様の顔は覚えたぞ。我を敵に回したことを後悔するがいい』
尻をおさえたテュポーンがこちらを睨みつけてくる。まずいな……これはゲームでもあったシーンだ。邪教の先兵を倒した主人公は、突如現れたティポーンに目を付けられるのである。
この場合目を付けられるのは、圧倒的な魔力を持つドロシーか、強力な戦闘力を持つベロニカのどちらかだろう……彼女たちはゲームでも邪神であるテュポーンと敵対していたのだ。時間の問題だったかもしれないが早すぎる。
ドロシーは俺の義理の妹で、ベロニカは爆乳ハーレムの候補だ。何とか守る方法を考えねば……
『眠れぬ夜を過ごすのだな。グレイブ=アンダーテイカーよ』
「え、俺?」
「邪神に警戒されるとはさすがです。お兄様!!」
「ふふ、グレイブはすごいな。邪神にあんな熱烈なラブコールをもらうなんて!!」
いやいや、おかしいって。俺なんてドロシーやベロニカ、そして、まだ現れぬ主人公たちに比べれば雑魚だぞ。むしろ邪神と戦う側ではなく、力をもらう側の人間のはずである。
こいつの目は節穴か? なんで俺を脅威に感じてるんだよ!!
「ちょっ、待って……」
「邪神だが知りませんがお兄様に勝てると思わないことですね!! ざーこざーこ!!」
「ふふ、グレイブの鬼畜さに比べれば君なんてただの似非鬼畜だね!! もっと鬼畜道を勉強してから来たまえ」
『貴様ら……神に対して不敬な……』
「お前らマジ黙れって!!」
思わず悲鳴を上げるがもう遅かった。ティポーンは圧倒的な殺気に満ちた目で俺を睨むと。キチークがまとっていたオーラが消えていき、そのまま倒れこむ。
待って、邪神に敵認定されちゃったんだけど、それって主人公の役目じゃん。そして、ひとつ確定したことがある。
この状態で童貞を失ったら俺は加護がなくなりクソ雑魚となってしまうので、邪神に狙われて死ぬ確率が一気に上がったということだ。
おかしいだろ……俺は爆乳ハーレムを手に入れたい、それだけだったのに……
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