ニャルラトホテプ
俺たちは会社に戻ってきていた。
「あ、社長、A-1209の修正完了いたしました。異変が始まってすぐだったので、近隣の平行世界への影響はありませんでした。」
「そうか。わかった。じゃあ仕事に戻ってくれ。」
「はい!」
そして彩香は戻っていった。
「京子、もういつも通りになっていいぞ。」
俺がそういうと京子の雰囲気が元に戻った。
「やったー。あれってきついんだよねー」
京子がそんなことを言ったとき会社全体に警報が鳴った。
「緊急事態発生、緊急事態発生、A-2300とB-3248が接近。このままでは平行世界が融合する可能性あり。原因は不明。B地区支部の弥生さんと本部の京子さん、雪さんは即座に本部の会議室へいらしてください。」
「ふむ。急ぐぞ。京子」
「はーい」
そして俺たちは会議室へ向かうのだった。
・・・
俺たちが会議室に着くとすでに2人が待っていた。B地区支部のリーダー弥生、今までいろんな異変を解決しこの会社の支部のリーダの中でも有名な方だ。情報収集科リーダー蓮、情報収集能力は一流で一瞬で全ての平行世界の情報を得ることができるとまで言われている。
「帰ってきて早々申し訳ありません。」
「大丈夫だ。で、状況は?」
「はい。B-3248がA-2300に近づいているような形です。現在原因究明を急いでいるのですが中々手がかりがつかめず。唯一わかっているのはこれがA-2300とB-3248で同時に同じ異変が起きたからだということです。それがどんな異変なのかはまだ…」
「そうか。B-3248は京子と弥生が当たってくれ。」
「えー、私弥生きらーい。」
「私もあんたなんか嫌いよ。」
弥生と京子はA地区とB地区で近く、尚且つ地位も近いということで会う機会は多い。故に喧嘩をすることも多く仲が悪い。だが連携はかなりよく、長年一緒に働いた相棒かのように見えるレベルだ。
「これは仕事だ。仕事の私情を持ち込むな。」
「う…わかりました…」
「わかったよー…足はひっぱらないでよね!」
「それは私のセリフよ。」
「はあ…A-2300は俺が当たる。蓮、接触するまでの時間は?」
「1年です。早くに判明したので」
「わかった。だが早まる可能性もある。期間は半年だ。わかったな。」
「はい!」
「はーい」
「それじゃあ蓮は何かわかったら連絡をくれ。」
「わかりました。」
「それじゃあ仕事を始めるぞ。」
・・・
俺はA-2300に来た瞬間違和感を抱いた。
『どこか違和感があるな…』
俺がそれを探っていくと一つの生命体が近づいてきていることに気が付いた。
「まさかお前がこの異変を起こしているとはな…そりゃ蓮でも調べるのに時間がかかるわけだ…」
目の前には女性の姿をした"何か"がいた。俺はその正体にある程度目星がついていた。
「まさか、こっちにあなたが来るとは思いませんでしたよ。向こうに行ってくださったらよかったのに」
「お前がそういうってことは向こうは…」
・・・
私たちはB-3248に向かっていた。そこに着くと辺りは熱気で覆われていた。
『まさか…』
その熱気を放っていた場所にいたのは…
「まさかあなたがこの異変の首謀者なんですね。」
「それは違う。我は奴を倒すために動いている。これはその過程による二次災害にすぎん。」
「そうですか…京子…全力でこいつを止めるわよ。」
「まさか旧支配者と戦うことになるとはね。」
・・・
「向こうにはクトゥグアがいるということか…」
俺は目の前の外なる神の一柱のニャルラトホテプに向かってそう言い放つ。
「やはりあなたが相手だと説明する時間が省けてありがたいわね。」
「そうかよ。でだ、お前が今回の異変の首謀者ってことでいいのか?」
「最初に襲ってきたのは向こうよ。」
「喧嘩両成敗ってのを知ってるか?A地区に存在する世界の地球という星の日本という国に存在する言葉だ。周りに被害が出るのなら両者とも倒す。」
「ははは、やはりそうなりますか。じゃあかかってきなさい。外なる神の力を教えてあげる。」
瞬間ニャルは弾幕を展開、その量は目の前が光に包まれたかと錯覚するほどだ。
「ッチ!めんどくせぇな。」
俺はその全てを斬り落とす。
「やっぱりあなたは面白い!私の信者になってほしいぐらいにね!」
「お前の信者は狂人しかいねぇだろうが!」
「はは、そうね。あなたは信者より敵として現れる方が面白い!」
「そうかよ!」
俺は斬撃を放つ。ニャルはそれを軽々避け、再び弾幕を展開してくる。次の弾幕は黒く一瞬にして辺りが暗闇となった。
「化け物かよ!」
俺はもう一度斬り落としていく。だが全ては防ぎきれなかった。
「ッ…!クソが…」
「そろそろ本気を出したらどうですか?そうしないと私も面白くありません。」
「この戦いもお前からしたら道楽ってことかよ。ならお前が楽しめる時間を消してやるよ。」
【柳流剣術:一閃】
瞬間俺はニャルの腕を斬り落とす。
「ははは、楽しいねぇ。それでこそ《神から追放された者》だよ。」
「その呼び方はやめろ。そしてお前も本気を出したらどうだ?」
「ふふ、それはいいけど、そんなことをしてもいいのかな?私とあなたが本気でやり合えばこの世界が持たないよ?」
その通りだった。ニャルが本気を出せば俺も本気で相手をせざるを得ない。だがそうなると世界そのものが保有できる力の上限を超えてしまい結果破裂し消滅する。それは俺の意思に反してしまう。
「くそが…」
「ふふ、でも今回は引いてあげる。向こうも決着がついたようだし…」
「そうらしいな。」
俺はB-3248の状況を見た。京子と弥生がギリギリのところでクトゥグアを倒していた。二人とも火傷後が酷く息が上がっていた。
『あの二人でギリギリか…こりゃ少し油断してたか』
「それじゃあね。」
「まて!」
俺は立ち去ろうとするニャルを止める。
「なにかしら?」
「今後こういうことはやめろ。」
「さあね、クトゥグアが来なければそうそうこんなことはしないわ。次会うときはあなたの好きなお酒でも用意してあげるわよ。」
「…そうかよ。俺は次会うことがないのを祈るがな。」
「そう。それじゃあね。」
「ああ」
そしてニャルは消え去った。そして俺は自分から流れた血を拭った。
「久しぶりの強敵がまさか外なる神とはな…」
とそんなことをつぶやくのだった。