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吹鳴せよ
吹け 吹け 吹け
その笛を吹け
金色の管巻く その笛を
東雲の空に 高く 高く 吹き鳴らせ
駭然とせよ 尉鶲
柑子の腹に その音を受け止められぬ
黄や紅に変ぜよ 楓 夏の名残を惜しむ木よ
翠緑の葉に この音は眩しすぎる
まだ誰も足踏み入れていない 雪積もる地にも似た この冷気
人の暮らしの営みの におい漂う前だけの この空気
耳を澄ませば 遠くから
尉鶲の囀りが 楓の枝のざわめきが
観客たちの静かな興奮が
届くのだろう 聞こえただろう
そうだ この朝は
波状の雲散る この朝は
今より きみのものだ
吹鳴せよ
大きく息を吸い きみは
曙の大気に胸膨らませた きみは
ただ ただ 吹鳴せよ