決戦
巨神がランスを振るい、龍が腕でそれを止める。
龍の周りに幾千もの水球が浮遊し、それが一斉に飛来。
それらは巨神の体を傷つけ、一部を破損させるが、すぐさまそれは修復される。
「雷を纏え!」
巨神のランスが金属や土で出来た物から、雷が束になり重なった高電圧の槍として生まれ変わる。
全身もバチバチと黄金の放流が走り、触れればダメージは必至だろう。
これを見て、少し距離を取るためか、海中に潜る海龍。
ならば…。
「違法漁業の時間だ!」
その高電圧の塊を、海中に向かって投げつける。
瞬間。
バリバリバリ! と、見てるこっちが感電しそうなくらい水中に電気が走るのが見えた。
「ギャアアアアア!」
たまらず、といった様子で海龍は海中から飛び出す。
そして、その隙を見逃す俺ではない。
「貫け!」
巨神は俺の意思を正確に汲み取り、再び手に取った高電圧の槍を龍の体に突き刺した。
「か、海龍が沈んだ…!?」
その一部始終を見ていたハヴェルト達。
天にも届く程の巨神が突き刺した槍が消滅すると同時に、海龍が沈んでいく姿を見て、ほとんどの人間があっけにとられていた。
「…そ、そうだ! アルティは!?」
ハヴェルトがそう叫ぶと、数十にも及ぶ船が再び巨神の元へと集いだす。
その過程で、アルティにマリアを乗せた船がこちらに向かって進んでくるのを発見できた。
町中を騒がせた海龍事件だが、父、ハヴェルトに聞かされて全貌がようやく分かった。
と言っても、例のおっちゃんが言っていた俺達を攫って云々以外には、この町を訪問したのはダエル教団を一網打尽にする計画を前から立てていたから、そして、海龍騒ぎを起こしたのがダエル教団であることくらいしか情報がなかった。
何やら、強力な魔物を呼び寄せる笛(笛と言っても音が鳴るのではなく、超音波的なのが出るらしい)と言う物が存在するらしく、それを受け海龍がオケアノスまで近づいてきていたようだ。
それに伴い、魔大魚も必死に海龍から逃げてきた結果、大量発生するという事態になったらしい。
海龍だが、完全に息絶えていたらしく、その後の処理は全部町の人達に一任した。
後から聞いたが凄い額のお金に変わったらしい。ちょっと後悔してる。
何はともあれ、そんな感じで俺達の港町オケアノスの訪問は終わった。
「やだー! もっとアルティと遊ぶの!」
「ふふ…マリア、我儘言わないの」
誤算だったのは、思ったよりマリアに懐かれてしまったことくらいだろうか。
「はは、アルティ、すっかりお気に入りになっちゃったか!」
この父は子供を命の危機に晒して尚へらへらしている。なんたる親だろうか。
「はは…アルティ、俺はお前を信じていたからあの手段に出たんだぞ」
俺の考えていることが読めているのか、はたまた俺が相当変な顔をしていたのか父がそう言いながら目を逸らす。
「むー!」
まだマリアはごねているらしい。あんまりしつこい女性は嫌われる…? か? 俺はまあその、かわいそうな女の子が好きなコト以外には特に大したこだわりもないから何とも思わないが…。
「…分かったわ。じゃあ、お父さんに稽古をつけてもらいましょう。そして、魔術学園に行ってみたら?」
「まじゅつがくえん?」
「ええ、そこなら毎日アルティと会えるかもね?」
「ほんと!?」
モニカさん!?
それ、俺達が十二歳にならないと入学できないから…今から四年後っすよね!?
詐欺じみてるな…。
「分かった! じゃあアルティ、私、稽古して魔術学園に行くから! そしたら一緒に遊ぼうね!」
「う、うん…」
まあ、今から四年もその約束を覚えていられるものならやってみろって話だ。
「約束だよ!」
ニコッ、と笑ってマリアはそう言った。
Chu!今日短くてごめん
ブックマークしてくれると阿波踊りします