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初依頼

「エルティ、さんであってますよね?」

「……ああ、問題ない」


 一瞬自分の事じゃないと思って呆けてしまった。


「私はハルカって言います」

「じゃあよろしく、ハルカ。まだまだ冒険者としては駆け出しだから色々教えてくれ」

「まあ、何故かは知りませんが私を選んでくれたんですし、なるべく期待に応えられるよう善処はします」

「それで早速なんだけど…違うランクの人とパーティを組むとどうなるんだ?」

「そこからですか…まあ、ついさっき冒険者になったばかりなら知らないでしょうね」


 ハルカの説明によると、パーティを違うランクの冒険者で組むと、全員のランクのちょうど平均がそのパーティのランクになるらしい。

 例えばDランクとBランクだったら間のC、俺達の所みたいにAとBが二人だと、AとBの間のランクなんて存在しないから繰り上げでAで良いらしい。

 つまり俺達のパーティはAランクの依頼まで受けられるそう。


「ここにある依頼の中から好きな物を選びます。エルティさんとパーティを組めたおかげでここにある依頼ならどれを取っても大丈夫になりました」


 ハルカに導かれるままに壁を見てみれば、これだよこれ! と言った感じで壁に張り紙がバカみたいに貼られている。

 前世的に言うと、この中から一番難しいのを持って来て、「オイ、あの依頼に挑むなんて命知らずなガキも居たもんだぜ」からの「な、ナニィッ!? あの依頼をたった一人で…!?」的な感じ…か?

 如何せん異世界を題材にした小説はあまり細かい描写が記憶に残らないから間違っているかもしれない。


「そうですね…これとかどうでしょう?」


 彼女が手に取ったのは、帝都郊外での簡単な採集の依頼のようだ。

 の割に難易度はBランク。


「どうやらこの薬草の生えてる場所の近くには強めの魔物が多く生息してるみたいで…多分遭遇してしまった時に応戦できるくらいの人員が募集されているんでしょうね」

「なるほど…じゃあそれで行こう」

「分かりました。ですが、用心しておいてください。こういう時、必ず私は――――」






「――――こんな感じで強敵と出くわすんです」

「…自信満々に言われても」


 森の中で薬草の採集を行っていた最中、いつの間にか木々を掻き分けて近くまで来ていた一つ目の巨人がこちらに向かって腕を振り下ろしてきた。


「サイクロプスです。確か危険度はSだった気がします」

「オイオイ、この依頼、難易度Bだっただろ? てかSランクの魔物が帝都郊外うろついてたら駄目だろ…」

「これが私の不幸に関する体質です。ほぼ日常茶飯事ですね」


 どこか諦めたかのように達観してそう言うハルカ。

 本当に大変な目に合ってきたのだろうことが伺える。


「私が魔法で時間を稼ぐので、その隙に逃げましょう」

「いやいや」

「いやいやって…頭でも打ちましたか?」


 ジト目でこちらを見てくるハルカ。


「俺は言った筈だぜ、確か…たいていの不幸は俺が笑って追い返せる。追い返して見せる、だったか」


 彼女は驚いたような表情を見せ、


「それはその場しのぎの言葉だったんじゃ…」

「俺は口に出したコトはしっかり守るからな」


 そう言いながら、土魔法で鉄を造り、レイピアを創造。


「Sクラスだか巨人だか知らないが、とっとと倒して薬草採集の続きをしないとな」






 神速の踏み込みから、素早く巨人の足元へ。

 雷を纏わせ、切り上げるように振ったレイピアがサイクロプスの体に傷を付ける。


「ヴォオオオオ!!!」


 それに激怒したのか、腕を体を振り回し、俺を攻撃しようとするが、全てそれを見切り、軽快な足取りで躱していく。

 と、いきなりサイクロプスに向かって跳んできたハルカ。


「陽炎!」


 と唱え、目の前で印を切ると、何やら炎の文様が宙に浮き…。


「オオオオオ!?」


 サイクロプスがあらぬ方向に攻撃を始めた。


「私の魔法は炎属性。鬼族がよく使う魔法ばっかりしか使えないから攻撃力はあんまりないけど、攪乱なら任せてください」


 どうやらハルカの魔法は妨害系らしい。

 今のも幻覚を見せるタイプの魔法かな。

 炎属性と言うか、マリアが使ってた魅了的な、無属性に近い気がする。


 なんてどうでもいいことを考えながら、魔力をどんどん右手に籠めていく。

 創造するのは雷の刃。

 刃渡り十メートルにまで及ぶだろうかと言った電気の放流を、思いっきりサイクロプスにぶつける。


「ヴォアアアアアアアアアアアアアア!!!」


 本当にうるさい断末魔を上げ、サイクロプスが地に倒れ伏した。

 海龍を沈めた時より強くなってるから、巨神を使わずとも勝てるかな~と思ったのだが、ホントに勝てちゃった。



「…凄い、こうも容易くサイクロプスを…」

「……どうだ? これで俺が信用に値するって信じてくれるか?」

「…分かりました。認めます」


 よし! どうやらハルカは俺の事を認めてくれるらしい。

 俺はすっかり彼女の不憫さに惚れ込んでしまっているため、彼女から掛けられる信用、信頼の声が何事にも代え難い快感になっている。

 こんな気持ちになったのはエル以来だ。


「サイクロプスって売れる?」

「はい、かなりの値段になると…ですがエルティさんが一人で倒したようなモノですし…」

「何を言っているんだ、ハルカのアシストがなければあのまま無様に踏みつぶされてたさ。だからこれは山分けだな」


 俺は別に金に困ってる訳でもない…と言えば嘘になるが、まだ猶予はある。


「…変な人」


 プイ、とそっぽを向いてしまったハルカ。

 その一挙一動すら愛らしく見える。


「さて、一仕事終えたみたいな感じになっちゃったけど…薬草採集が本来の目的だったな。さっさと定数揃えて帰ろうぜ」

「…はい」

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